第23話 改めてダンジョン

 イステッド町の冒険者ギルドに着いた。

 流石に中は広いな~受付も2か所あるし、でも広い割にはそこまで人はいないな~空いている。

 ケンの姿は見当たらない。

 暫く待ったが居ないので、受付の女性に聞いたが、見ていないし知らないとの事だった。

 仕方ないのでもう暫く待ったが来なかった。

 宿屋に戻ろうと思って何気なく、壁に貼ってある張り紙を見た。

 

 クッソ~やられた。

 張り紙には、ケンと特徴が一致する犯罪者の似顔絵と詳細が書いてあった。

 似顔絵には顎鬚はなかったが、垂れ目で片耳の欠けが一致する。

 

 張り紙の名はケンジ。詐欺師だった。

 詳細のところには、ダンジョン初心者に近づき、アイテムボックスを使って金目の物を奪うので注意と書いてある。

 と言っても、倒した魔物は俺が持っている。

 解体室に行って、倒した魔物の買取依頼をした。

 状態は全部良い。コボルト10体 トロール2体。結果、金貨19枚。

 

 コボルト 銀貨5枚×10体 

 トロール 金貨7枚× 2体


 Bランクのトロールが、たった金貨7枚だと!コボルトも銀貨5枚・・聞いたら、状態が良いからこの値段らしい。

 この手の魔物は沢山取れるので安いと言われた。

 だから以前寄った町の冒険者ギルドで、ダンジョンの魔物を高く買い取るって言ってたのは、イステッドが安すぎるからか。

 

 詐欺と分かった決定的な事は、ダンジョン町でも冒険者ギルドがあるという事だった。

 そこでも当然、買取は出来る。

 宝箱から出た魔道具は調べないと分からないが、宝石は、種類、サイズ、品質もあるがトロールから出たのなら恐らく、最低でも大金貨30枚と言われた。

 

 ちなみに詐欺師ケンジは元冒険者のCランクだった。

 痛い授業料だ・・・トホホ

 後から分かったのだが、詐欺師ケンジに色々教えてもらった事は嘘ではなかったので、そこだけは感謝している。


 何か疲れた・・宿屋に戻って瞑想する。


 魔力も随分上がったな。今では通常の上位魔法なら、無詠唱で発動できる。

 氷と水魔法以外の上位魔法も早く覚えたいな~


  

 翌日、この町には図書館があったので図書館に寄ってから、もう一度ダンジョンに行く事にした。

 

 それによって、鑑定魔法の精度の上げ方が分かった。

 魔力操作ではなく、ただの経験だったのだ。

 なので今は分からなくても、沢山試せば精度は上がる。

 変わった魔法だな・・

 他の魔法の書物も沢山読んだが、役に立つ情報は僅かだった。

 

 冒険者Aランクになりたかった理由の1つに、国の首都にある図書館で、冒険者Aランク以上、もしくは貴族の伯爵以上でしか閲覧できない書物がある事だ。首都でAランクを受ける予定だったが、あまり目立ちたく無いので、試験は受けない事にした。



 それから図書館を出て、ダンジョン町に行った。

 今回、ダンジョンには町で情報収集してから入った。

 図書館で覚えた魔法があるので使ってみた。

 マッピングの魔法だ。一度通った道と現在地を示す。

 下位魔法で、生活魔法になる。

 これも今までは必要なかったが、ダンジョンでは必須だと思ったから覚えた。

 地図はあるが、イステッドダンジョンは同じ風景が続いていて、分かれ道も多く方向感覚が惑わされやすい。


 探知魔法とマッピング魔法で奥に進んでいく。

 探知魔法で反応があれば、そっちに向かって魔物を討伐する。

 たまに冒険者に出会うが、素早く立ち去る。


 相変わらずコボルトが多いが、数を倒せば宝箱が出るので、ひたすら倒していく。

 それとは別に、一応Aランク発生地帯を目指しているのだが、探知魔法で反応する方向に進んでいるので多種多様な魔物に出会った。

 ジャイアントバット、大ムカデ、サーペント、ジャイアントスパイダー。

 どれも特殊個体だが、今の俺は簡単に倒せる。


 倒した魔物は全部アイテムボックス行き。

 アイテムボックスも、今では変わった使い方になった。

 通常アイテムボックスは1つなのだが、俺はアイテムボックス自体を分けた。

 Aのアイテムボックス、Bのアイテムボックス、C、Dと増やした。

 1つのアイテムボックスに多種な物を沢山入れると、探すのが大変になったからだ。


 宝箱も幾つか出た。

 まだ鑑定魔法の精度は上がっていないので、当然、罠に掛った。

 麻痺や毒といった罠だが、不思議な事に俺には全く効かなかった。

 以前腕を切断されてから、状態異常も無効に出来るのではと思ってはいたが、改めて魔人の体ってすげ~

 

 驚いたのはそれだけではない。

 宝箱の魔物もいた。ミミックだ。

 出てきた宝箱の罠がミミックだったのだ。

 そのミミックは倒すと不思議な事に消えてしまった。

 罠や当たりの宝箱も、開けて暫く経てばスーッと消える。

 

 当たりの宝箱も見つけた。

 これにはやはり嬉しさが込み上げてくる。

 一般人が求めるのも納得だ

 魔道具と宝石が出たのだが、魔道具の方は、なんとミミックを倒したらまた宝箱が出た。

 そして開けたら魔道具だったという訳だ。


 

 それに珍しい魔物を発見した。

 コボルトキング1体。

 Bランクで素早く、爪や牙には気を付けなければならない。

 コボルトの3倍くらい大きく、コボルトと違って立派な1本角が生えている。

 武器は持っていないが、爪が長く鋭い。

 取り巻きにコボルトが3体いる。


 俺にとっての問題は、逃げられない様にする事。

 魔物の中には勝てないと分かると逃げる奴もいる。

 素早い魔物に逃げられると厄介なので、そこだけ注意しなければならない。


「ダイヤモンドダスト!!」

 

 初っ端から大技を出した。

 しかも強化版の白い結晶のダイヤモンドダストで、凍らせて呆気なく倒した。

 そして宝箱が出たのだが、今までと違う。

 今まではブロンズ色だったが、シルバー色の宝箱だ。

 開けたら緑色の短剣が入っていた。


 休まず奥に進んで行く。

 Aランクの魔物発見場所はとっくに通り過ぎていた。

 出てきた魔物を次々倒して、やっと出会った。

 

 大物の魔物、トロールキング1体。Aランク。

 5mくらいある。片手には馬鹿でかいこん棒を持っている。

 体の色が赤い。勿論これも特殊個体になる。

 取り巻きはトロール1体。


 戦闘開始から、お馴染みダイヤモンドダストをぶっ放す。

 取り巻きのトロールは倒したが、トロールキングは皮膚1枚程度しか凍らなかった。

 トロールキングは動作は遅い。

 ただ5mと巨体な上、手足も長いので距離感がつかみにくい。

 ここなら大丈夫だろうと思っていても、トロールキングのこん棒がすぐ近くの地面をかすめる。

 しかも破壊力が凄まじい。

 空振りだがこん棒で地面を叩いた時、大きな音と共に鉱石でできている地面が砕けるのだ。

 当たったら俺が魔人でもヤバいだろうな・・

 ただ当たったらの話だ。

 魔人になったお陰で見た目は貧弱だが、魔力だけじゃなく、力も素早さも格段に上がっている。

 俺は片手をトロールキングに向けて 


「ダイヤモンドダスト!」


 強化版ダイヤモンドを放った。トロールキングは凍った。

 と思ったら、氷に亀裂が入り砕けた。

 なるべくなら状態を保って倒したかったが、俺は青い炎のファイアアローを無数出して、トロールキングに放っていく。

 トロールキングは苦しそうに雄叫びを上げているが、矢が刺さった場所が暫くすると勝手に抜けて皮膚が再生されている。

 トロールキングの再生能力は早いな~


「ダイヤモンドダスト!」


 凍ったトロールキングはさっきと同じ様に氷は砕けるが、素早くトロールキングの首にドーナツ型のウインドカッターを数発放つ。

 深く傷つけたが切断までは出来なかった。

 トロールキングは激怒している。

 雄叫びを上げながら、こん棒を振り回している。

 俺は片手を上げて力を込める。


「サンダーボルト!!」


 強化したサンダーボルトだ。

 通常は黄色のサンダー系だが、強化されたのはオレンジ色。

 太い雷がトロールキングを直撃する。


 トロールキングは丸焦げになって倒れたが、ゆっくり立ち上がろうとしている。

 焦げた部分も徐々にだが再生されている。

 俺は素早くトロールキングに近づき、今度は至近距離でトロールキングの首にドーナツ型のウインドカッターを数発ぶっ放す。

 見事、首を切断した。

 

 Aランクの魔物でも余裕のある戦いだった。

 トロールキングはタフさはあるが、攻撃が物理攻撃で単調なので避けやすい。

 

 それにどの魔物もそうだが、相手の攻撃の軌道が分かるようになった。

 これによって少し変則した攻撃や、フェイントを入れた攻撃でも避けやすい。

  

 宝箱が出てきた。しかも鑑定魔法の精度が少し上がったみたいだ。

 罠がないとはっきり分かる。宝箱はシルバー、開けてみた。

 指輪と宝石が入っていた。

 Aランク魔物だったのに指輪か、何かガッカリだ・・

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