第14話 イドの報告
◇◇ ◇◇ ◇◇
時刻は昼過ぎ。今日は遅い時間から出勤。
ギルドマスターの部屋に入るなり、
「遅いぞイド。早速聞こうか」
アドムドは1人用の椅子から移動して、ソファーの方に座った。
イドもソファーに座って
「ブラック企業ですか?3日程休みくれてもいいと思いますが」
「十分配慮したつもりだがね。本部に一刻も早く報告しないと、俺も困るが、イドも困ることになると思うが」
「分かったわよ。古戦場跡に入ってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー--------------------------------------------------------------ー以上がこれまでの経緯よ」
アドムドは黙って聞いていた。
私はネクトのことを少し過小評価で報告した。
そう、嘘をついて報告したのだ。
と言っても、青い炎の事を隠し、中位ヴァンパイアは私と協力して倒した事にした、それだけだ。
それでも、ネクトの魔法は聞いてる側からすると凄いだろう。
「そうか。ヴァンパイアから何も発見出来なかったが、ひとまず脅威は去ったな。しかし、そこまでネクト君の魔法は凄まじいのか。色々気になる事がありすぎて、何と言えばいいか。複雑な心境だな。今回、討伐を成功した事で、ネクト君はAランクを目指して町を離れてしまうな・・こちらとしては魔術師は何人でも欲しいから、如何にか引き留めたいが・・」
アドムドは腕を組み考え込んでいる。
この世界の職業だが、最重要視される職は、神聖魔法が使える者。
要は光属性で、回復魔法が使える者。
これは、教会組合が独占して生業としている。
変わりに、教会には他の職はいない。
極稀に、冒険者でも回復魔法を使える者がいるが、バレると教会入りとなり、教会に行きたくない者は隠している。
教会は半強制的に回復魔法を使える者を連れて行くが、待遇はハンパなく良いと言われているので、嫌がる人は極少数だ。
次に、ランクもあるが、同ランクだった場合で話をすると召喚士だが、極秘扱いで何人いるかも分からない。
その次が魔法使いとアサシン。これは国、領主、ギルドにもよるが、大体この2職が最優先で欲しがられる職業になる。
「ご苦労だったな。これが報酬になる」
アドムドは懐から革袋を出した。
報酬はパーティーリーダーに渡される。今回の場合は私になる。
私は直ぐに確認をするが、びっくりした。
「マスター、内訳を聞いてもいいかしら」
「むむ。そう怖い顔しなくても・・ヴァンパイア下位が大金貨10 中位クラスが20 全部で大金貨30枚。あってるだろ?」
クソ爺ーー!!幾らピンハネしてるのよ!!
「どう考えても納得できないです!!!ヴァンパイアの下位は状態がいいのに、大金貨10枚?しかも、中位クラスが大金貨20枚ですって?下位のヴァンパイアでも最低で50枚貰って良いくらいなのに、いくら何でもこれは酷いですよ!!!」
「言い分は分かるが、損傷が激しいからな~それに50枚というのは、うちのギルドが専用業者に売る値段だ。しかもよくて50枚だ。ヴァンパイアは本部から許可で下りるまで売れないからな~値段が付けにくい。下手をすれば無償で本部に渡さないといけない場合もある。無茶言わず、それで我慢してくれ」
「分かりました。それじゃ、私はギルドの役職を辞めるので、Aランクの冒険者に戻して!」
「ハァ!?何を言い出すんだイド。俺を困らせないでくれ。中位ヴァンパイアを倒したんだぞ!本部に報告すれば、副マスターの座は確実じゃないか。24歳でそこまでの出世はそうそう居ないぞ。そんな美味しい話を手放すというのか?」
私は激怒している訳ではない。
寧ろ冷静で、淡々と話す。
ギルド職員を辞める為の口実に、金額が少ないって言ってるだけ。
予想外の展開に、アドムドは困惑している様だ。
「マスター、年齢は言わないでくれる?副マスはキースさんが既にいるでしょ~。それに、ここのギルドには私と同じ役職は5人もいるじゃない。困るのはマスターだけでしょ?私はそこまでこの仕事が美味しいとは考えてないわよ」
「副マスターは支部で最大2人だ。ここにはキースしかいない。それに2人以下の支部なら、本人が好きな場所の支部を選ぶ事が出来るんだぞ。それでも辞めるというのかね?報酬のことは改めよう。大金貨10枚付け足す」
そりゃあそうよね。マスターや副マスになれば、お金を本部にバレずに横領できる。
まぁ証拠はないけど、どこの支部でもやっていることだからね。
だから冒険者に支払う金額が変動するのよね。
私はそれについては、何とも思ってない。
入りたての頃は驚いたが、ギルドの職員なら当たり前の感覚だからね。
でも、今回の報酬は役職の私にまでピンハネしてるし、マスターはあたかも理に適っている言い方をしているのが納得できないわ。
しかも、かなりの額を。すこし欲張りすぎよね。
「流石マスターね。有難く頂くわ。今貰えるかしら。それと、辞めるのは決定事項よ」
アドムドは立ち上がり、ギルドマスターの席の引き出しから何やら手に取り、ソファーに戻り腰掛けた。
「決心は固そうだな、残念だ。何を喋っても誰も動かないが、不要な噂は避けたい。ギルド内部の事は秘密厳守で頼むぞ。これには退職金と、口止め料も入っている。それと狙いはネクト君か?」
出されたのは革袋。私は革袋の中を確認した。全部で白金貨7枚(大金貨70枚分)あった。
「相変わらず鋭いのね。フフフ。口外したとして、誰が得するの?マスターがネクトに余計な事言わなければいいけどね。それじゃ~私は行くわ。シェリーにAランクの冒険者カード発行するよう言っておいて。直ぐに貰うわ。それから、ネクトはどうするの?私が呼んで来てもいいけど」
「ああ、呼んで来てくれ。色々聞きたい事もある。近い内にな」
アドムドは頭をボリボリ掻きながら、めんどくさそうに言った。
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