マジでまじん
米央
第1話 冒険者
7歳で冒険者になり、16歳で魔導士(自称)になった。
21歳から研究や実験ばかりしている。
周りからは少し変人扱いされている。
現在一人暮らしの44歳。
興味があれば何でも研究対象になる。
今日は実験に必要な素材があるので、冒険者ギルドに立ち寄った。
冒険者ギルドとは、冒険者の支援や町の安全を守る所で人気職業の1つだ。
人気の理由は、やり方によっては大金が稼げること。
ただ命の保証もない危険な職業でもある。
早朝との事もあり、冒険者ギルドは賑わっている。
早朝と夕方に依頼書の張り紙が更新される事が多いからだ。
「よう~ネクトじゃないか!エプレの森に行くのだったら気を付ける事だな。何なら俺達が手伝ってやってもいいぜ!!ガハハハハ」
「大丈夫だよモラド。採集の依頼があればと思って来たんだ」
話しかけてきた幼馴染みのモラドは、俺の顔を見るとよく絡んでくる。
俺は掲示板の張り紙を2枚手に取り、冒険者カードと張り紙を受付にいる女性に手渡した。
「ネクトさん久しぶりです。依頼を確認しますね。毒消し草20本、それにトレントの葉3枚で間違いないですね」
俺は頷いて冒険者カードを受け取り冒険者ギルドを後にする。
個人的に探してる素材はトレントの葉2枚。
他の依頼も受けたのは、ついでに生活費を稼ぐ為でもある。
町の北門の門番に
「エプレの森に行くのかネクト。Bランクだからといって油断するなよ」
「分かってるよ。ソロだしな。採集するだけさ」
ここエプレの町は、人口3000人程の比較的小さな町で顔馴染みの奴も沢山いる。
俺は冒険者としてベテランといってもいい年齢で、冒険者ランクもBランク。
冒険者と魔物の強さのランクは共にSABCDEF Sが強い>Fが弱い。
Bランクの冒険者は町で何かあれば頼られる存在だ。
魔物については、一般の冒険者がSランクの魔物に生涯出会うことはない。
Aランクの魔物は生涯1度出会うかどうか、Bランクは稀。
C~Fランクは日常にいるそんなところだ。
基本、冒険者はパーティーを組んで魔物の討伐をするが、俺の場合ソロが多いので魔物討伐は余りしない。
どうしても必要な時は、1度に相手にするのはCランクの魔物なら1体。
Dランクの魔物なら2~3体が限度になる。
それ以上に魔物の相手をすれば、いくらBランクの俺でも簡単にやられるだろう。
エプレの森は、エプレ町から北に馬で半日くらい行った所にある。
道は草木は少ないが整備されておらず、少し荒れている。
俺は徒歩でエプレの森を目指す。
エプレの森までまだ少しあるが日が落ちた。
今日はここまでの移動にした。
俺は空間に黒い楕円形の物体を出した。
その中から野宿用の道具や食料などを出す。
この黒い楕円形の物体は生活魔法で、アイテムボックスと呼ばれている。
魔力があれば比較的簡単に覚えられるとっても便利な魔法だ。
といっても個人差がある。
小道具が2~3個しか入らない人もいる。
他人と余り比べたことはないが、俺はBランク魔導士なので、アイテムボックスの容量はそこそこ広いはず。
魔物除けの液体を周囲の地面に垂らし、軽めの食事をとる。
食後に大好きな酒を飲んで寝袋で寝た。
何時間か仮眠して目が覚めた。
周囲はまだ暗いが、道具などを片付けて歩き出した。
エプレの森は広大で草木が生い茂っており、B~Fランクの魔物が出る。
俺にとっては昔から通い慣れている場所だ。
ただ、Bランクの魔物が発見されたのは俺が幼い頃1回のみで、町の冒険者総出で討伐されているので今は居ないはず。
日の出と共にエプレの森に入って行く。
冒険者の職業によって使える人が限られてくるが、視界が悪くても障害物があっても周囲の生物を探れる、探知魔法という便利な魔法がある。
ちなみに俺は使えるが、探知魔法の範囲はそれ程広くない。
あくまで森や視界が悪いところでの使用目的だ。
探知魔法で魔物の警戒をしながら森の奥に進む。
毒消し草は比較的すぐ見つかった。
22本あったのでアイテムボックスに入れる。
残りはトレントの葉だが、これはCランクの魔物。
簡単に言うと木のおばけで、そのトレントに付いている葉っぱの事だ。
トレントを倒さなくてもトレントが居た周囲を探せば葉は数枚は落ちているので、見つからず慎重に拾えばいい。
万一、見つかっても1体なら倒せる自信がある。
まずは探知魔法でトレントを探す。
探知魔法の範囲は半径20m程で、生物の種類を判別することはできない。魔物か人間かも分からない。
ただトレントは動きが遅いので、目視しなくても大体分かる。
何度か魔物を見つけては回避し、ようやくトレントらしき魔物を探知魔法が捕らえた。
見つかると厄介な相手だ。
慎重にトレントが通った痕跡を探す。
無事痕跡を探し出し、トレントの葉も目標の5枚ゲットした。
随分奥地まで来てしまったな~
せっかく来たついでにもう少し欲しい素材とかもあったのだが、日が暮れるまでに戻らないと危険なので、急いで帰る事にした。
戻る途中、前方に探知魔法の反応が1つ・・3つ移動も早い。
回避しようと迂回するが、相手に見つかっている様だ。追ってくる。
目視するとゴブリンだった。
ゴブリンはDランクの魔物で弱いのだが群れる習性がある。
ゴブリン3体なら何とかなるか~これ以上森にいるのは不味い。
俺は覚悟を決めゴブリンの方に突っ込んでいく。
「ウインドカッター」
俺は風魔法の斬撃を放ち、ゴブリン1体に当てる。
倒した事も確認せず、迷わず駆け抜ける。
更に前方には、2体のゴブリンと1体オークがいた。
オークはゴブリンと同じDランクだがゴブリンより強い。
Dランクで弱いとはいえ、計6体の魔物を1人で相手にするのは非常に不味い。
予定変更で森を抜ける事より逃げ切る事だけ考えて、魔物の居ない方向に逃げる。
逃げている最中、追ってくる魔物に風の斬撃魔法を何発か放ったが、俺もゴブリンの放つ矢を肩に喰らってしまった。
一瞬だけ立ち止まり、素早く矢を抜き矢じり確認した。
ゴブリンの癖に毒矢かよ~アイテムボックスから解毒剤を出した。
毒消し草では効き目が薄い。調合してようやく効果を発揮する。
走りながら解毒剤を飲んで追跡を振り切ろうとするが、しつこく追って来る。
更に2発毒矢を喰らった。
1発はかすっただけだが、もう1発は右足にもろに喰らった。
何発か放ったウインドカッターで魔物を倒せているが、オーク1体とゴブリン2体はまだ追ってくる。
「ウインドカッター」
クソ~威力が弱くなってる。
毒が少し効いているのか・・魔力体力共にもうヤバい。
最後の力を振り絞り、追ってきている方向に向け、ありったけの魔力で魔法を放った。
「ファイアトルネード!」
規模は小さいが炎の竜巻だ。これで魔物から逃げられるかもしれない。
魔物に直撃しなかった場合、俺が助かる為には周囲を燃やして追跡を遅らせる必要がある。
本当は使いたくなかった。
森で炎系魔法を使う事は火事になりかねない。
もし火事になれば森の生態系を壊すだけではなく、バレれば最悪ギルドからも追放される。
森の恩恵は人間にとってそれほど大きいのだ。
どれだけ走っただろう。
ゴブリン達が追ってきてるのかも分からない。
俺は大きな木の陰に隠れ毒矢を抜き、解毒剤は無いので毒消し草を1本丸めて口にした。
体力は限界で動けない。俺は地面に腰を下ろした。
魔力は空っぽで、探知魔法も使えない。
毒が思ったより回ってる。死ぬかもしれない。
死ぬなら出来ればこのまま魔物に見つからずに安らかに死にたいと思う。
そう思い意識は遠のいていく。
「魔族に魂を売ってでも生きたいか」
耳元で確かにそう聞こえた。
俺はもう目を開ける事すらしたくない。返答もしたくないが、
「当たり前だろう」
と何故か呟き意識が無くなった。
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