第12話 『成長促進』
噛みついた果実から口の中を溢れ出すような大量の果汁が途切れる間もなく出続ける。
口から垂れ流しても良いんだが意地汚いと思うし出る端から飲み込み続けた。そもそも女王とか呼称されてる存在を前に意地汚い人間とか思われる事は自殺行為な気がするし。
そんな風に飲み込み続けて果実自体が無くなると、俺の体には大きな異変が起きていた。
「体が復元されてる? いや、これは自然治癒力を大きく補正しているのか?」
変化と言うのは今まであった重度の火傷に焦げ付いた体、どろどろに変容した皮膚が元通りの肌色で無傷の状態に戻っていた事。明らかに8%の回復量を大きく凌駕していた・・・
「その果実、驚いたかしら?」
「アンタがくれたんだよな? 何で俺を生かそうとする?」
「生かそうとするか、って聞いてるのかな? う~ん、簡単に言うと君に興味があるんだ」
「興味だと? 三番とやらに担がれて既に知ってるがソイツは俺なんか足元にも及ばないほど強いだろ? なのに俺へ興味を注ぐ理由があるのか?」
「ああ、それに関しては私が説明してあげるよ」
言ったのは三番と呼ばれていた俺を担ぎ雑に下ろしてくれた蟻。筋肉質な肉体を見せるように眼鏡を上げる人のようなモーションで頭ごと少し後ろに傾け俺を見下ろすような体制で言ってくれた。
って、コイツが態々代理を組むような話題だったか?
まあ良いけど。それで三番が口を開いたから一言一句聞き逃さないように耳を済ませた。
と言っても回復したばかりで脳を無理に酷使するのも避けられたから流石に強化は無しだけど。それでも近距離だし三番の声を聞く限りでは滑舌も問題ないから十分に対処できると思うけど。
「まずは女王の職業とスキルですね。 女王が持つ職業は教育者、スキルは成長促進となっています。 成長促進は触れた物、そこに生物や個体などといった縛りは無く物質であれば対象となります。
成長促進により得られる力は触れた物を好きなように成長させられます。 まあ好きなようにと言っても物質の性質を変えるような意味ではなく形状や効能などといった物が持つ昨日の強化とゆう形ですがね。
そして生物に成長促進を使う場合は幾つかの条件が課せられます。 例えば人其々に強化倍率へ耐えられる最高値が有り、最高値を越えてしまった場合は脳が押さえられなくなり暴走を始めてしまいます。
其を判別する為に女王の目は生物を見ると同時に強化できる残りの値が分かってしまいます。 つまり限界以上に成長させてい状況があれば其れは故意なものなんです。
そして成長促進が使われていない人間は何れだけ強かろうと値は0のままです。 此処までは理解できましたか?」
「ああ、つまり脳の性能は強化できても意識上の能力は変えられないんだな。 だから脳が戸惑って後作動を起こし、結果的に暴走へ繋がるわけだ。 よって成長促進の限界と言い表されているのは個人個人の脳が許容できる能力の事だな? そうなれば脳が戸惑って後作動を起こすのも納得できる」
「ええ、その通りです。 流石は優れていますね?」
いや、今回に関しては別に凄いことなんか何もしてないぞ?
俺が個人的に知ってるだけだ。
人間の脳に限らず生物の脳は無限に能力の向上を受け入れられる訳ではない。
其々の脳が受け入れれる限界はあるのだ。
ただし普通に成長してて少し修羅場を潜った程度では脳の許容に1%すら及んでいない。
脳が認識できるレベルってのはそもそもが脳の出力で変わる。つまり脳が成長するんだから限界の値も増える、いや否だ。
脳が許容できる範囲は生まれてから一ミリも変動しない。
俺みたいなイレギュラーを除けばな。
その1%に到達できないのは細胞のレベルで決まってるのだ。
脳が許容できないって事は脳の限界を超えるって事と同義。つまりオーバーした瞬間に脳はショートして残るのは引き出された力だけ。そのせいで無理矢理に起動された脳が暴走を始めるのだ。
俺も前に一度だけ体験したことがある。
その時は数百発の実弾で全身を撃たれなんとか停止したらしい。
「そして、ここからが本題ですが女王はアナタの底を見ることが出来ませんでした。 どういう意味かと言うと地上で戦うアナタを盗み見た女王の目はアナタの底を視認出来なかった、いや本当は見えたのだが余りにも深すぎたのです。
本来なら限界まで成長促進された生物は大きく寿命を失い数刻の内に死に至る。 しかしアナタ程の才能があれば死なないのかも知れない、と女王はアナタに興味を持たれらのです」
「うん、分かりやすいような分かりにくいような説明だったけどありがとう。 そうゆう訳で我は君と友好に過ごしたい。 より正確に言うなら君が持つ才能の全てを何時かは我に見せてほしい。 だから生かしたし殺さない、我は君の生涯に深く興味があるんだ。 こんな理由じゃ不服かな?」
「いや、取り合えず死ぬ可能性が絶たれたのなら俺は何でも良いさ。 それより俺の生涯を見るとは言うが一緒に来るとゆう事なのか?」
「うむ、出きれば一緒に行動したい。 だが今の姿では不可能だとゆうのも理解している。」
確かに女王の姿は蟻とビジュアル系モデルを足しでニで割ったような姿だ。スラリとした美しいボディーラインに各部の膨らみは微妙だが美しいラインを描いている。
しかし体は黒く光沢しているし顔は蟻のままだ、頭の部分だけは何の手も加わっていない。
「そこで使えるのが三番だ。 この為に三番を君に向かわせたのだから。」
「はい、私の職業は怪盗ですからね。 スキルに変質が含まれています」
「含まれています? って、まあ良いか。 そのスキルを使えば女王も人間の姿に見えるんだな?」
「ええ、とは言ってもこのスキルは触れた生物と指定した生物で合致する容姿へ変身するものなので私がコントロールする事などは出来ません」
ふ~ん、便利かと思ったが微妙な臭いを感じたな。
好きな姿へ変装できないのなら怪盗の仕事をしてても上手くは行かなかっただろう。
まあだからと言って不出来なスキルとは言わないんだが・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます