勇者召喚の前座で召喚されました

福田点字

伝道の始まり

第1話 『始まり』

 人生を全うする人間に置いて時間とは一定のリズムで進行するのが普通である。

 時間は誰から見ても1秒は1秒で1分は1分、と均一に進行する。

 それが誰から見ても普通だし通常、だった……

 そんな最中で俺は少しだけ普通から反れていた。

 俺から見た世界は遅い、それは交通事故の後遺症で発症した病気のような物だ。

 今まで1秒に感じていた時間が今では5秒に感じられる。

 その分だけ生活を送る上での経過時間も体感が変動する。

 更に言うと1/5まで常に時間が遅らされている。

 最初は言葉の認識も大変だったけど人ってのが馴れるものらしくて俺は自分の感覚を集中力の強弱で変えれるようになった。

 その過程で好きな部分のリミッターを一時的に解除したりも出来る。

 つまりは『自分の能力を完全に操作できる』力を得たわけだ。

 そんな少しだけ普通の境界線から反れた俺は今……


「ひ、光ってない! またハズレですか!? もう一から作り直しですよ面倒くさい!」


 異様な眠気に襲われたと思った次の瞬間には魔方陣的な幾何学模様の上にいた。

 そして目の前には落胆していると雰囲気で分かるような崩れ落ちた幼女が居た。

 これは、明らかに夢だよな?

 あんまり夢とか見ないタイプだから物珍しさがある。


「それで? 俺はどんな状況なんだ? 説明は有るよな?」


 俺が聞くと幼女は何故か夢も希望もないアンパンマン見た子供のような顔で俺を見ると……


「はぁ……」


 と、溜め息をついた。

 うん、いや失礼だなコイツ?

 礼節の「れ」の字も無いぞ?

 まあ、見た目的に5歳行ってるか行ってないか位だし仕方も無いのかな~って感じだけど。


「時間も無限じゃないのに……」

「……早く説明してくれない?」


 俺は流石に長引きそうだから軽く微笑んで聞く、と……


「えっと、あんたは勇者召喚のハズレな訳ですよ。勇者の召喚には先に勇者召喚予定の地点から数十体の人間を召喚するんです。そして貴方は15体目、そろそろ出てもいいんですがね~ハズレの始末は追放と決まってますので、ね?」


 幼女は俺を見ながら笑顔で言うと、俺は次の瞬間に何処とも分からない草原の真ん中に立ち尽くしていた。


「………なんと言うか、壮大な夢だな~」


 俺は呟くと特別に目標もないし夢なら頃合いで覚めるしって事で真っ直ぐに歩いてみることを決めた。

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