クリスマスに花束を
やまみねさとり
第1話「クリスマスプレゼントはお姉ちゃん」
今日はホワイトクリスマス。
クリスマスと言えばサンタクロース。俺は六歳でサンタさんの存在が誰かわかってしまった。家の台所にお菓子のプレゼントが置いてたからだ。次の翌朝、それを俺の靴下に無理矢理詰め込んでいた。おかげで靴下は伸びていた。俺のところに来たサンタさんは少しお粗末だった。
俺、秋田大地はもう高校二年で、もうすぐ受験が控えている。サンタさんにプレゼントをお願いしても、きっと参考書になるのではないか。
クリスマスと言えばカップルや友達で町の賑わいがある。
でも、俺は今リビングでテレビを見てる。そんな賑わいは想像でしかなく、羨ましいのかわからない。毎年クリスマスには母さんの手作りケーキやビーフシチューやツリー形のポテトサラダといった食べ物は豪勢で、色気より食い気で毎年過ごしてる。
今年も変わらない、そう思っていた。
「大地、話があるの」
母さんは台所で料理を作っていた。トントンと包丁で野菜を切る音がした。
「以前、クリスマスプレゼントにお姉ちゃんが欲しいと言ってたわよね」
お姉ちゃんが欲しい。
俺が六歳の時にサンタさんにお願いしたことだ。
俺は一人っ子だったから姉のいる家庭が羨ましかった。
そうお願いしたのに、別のプレゼントだった。
サンタさんにも無理なことがあるのだろう。
「あまり記憶にないけど、書いたかもしれない」
テレビに夢中だったので、おざなりに答えた。
「ということでね、今日からお姉ちゃんを紹介するわ」
「えっ?」
リビングのドアが開き、入ってきたのは俺の知らない女性がいた。
ロングヘアで目がパッチリしている。二十歳くらいだろうか。俺より背が高い。
「冬子と言います。大地君だよね?よろしくね」
そう言った彼女は爽やかでフランクに話してきた。
「……俺の知らない親戚の人かな?」
「あなたのお姉ちゃんです!」
「あぁ、家庭教師の人かな?」
「冬子お姉ちゃんと呼んで欲しいな!」
「長いよ、冬姉で良いんじゃないか?」
「良いわね」
母さんが相槌を打った。
「よくねーよ!誰なんですかあなたは?母さん説明してくれよ!」
「住み込みで働くことになった青空冬子さんよ」
父さんはうどん屋を経営している。名前は「いおり」
住み込みで働く人はこれが初めてのことになる。
「それからあんたの家庭教師でもあるから」
参考書を貰うよりも遥かに嬉しく思えた。
「よろしく冬姉」
そう挨拶したら冬姉に抱きしめられた。良い香りがする。胸が当たって心臓が飛び跳ねそうだった。
『お姉ちゃんが欲しい』
そんな願いは決して叶うわけもなく、今年も食い気な一日を過ごして終わると思っていた。
だが、今年は色気もあるのかもしれない。俺の願いが叶ったクリスマスとなった。
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