第454話 さっちも

  

 

 日の出前の東の空には、金盞花色きんせんかいろの雲が打ち重なり、そのわずかな隙き間に、山奥の秘密の湖のような美しい空が、この世とも思われないブルーで浮かんでいる。

 東山は藍色に沈黙し、西山の山巓から山腹は薄縹色うすはなだいろに照り出されている。

 

 足もとではしきりに虫がすだき、高い頭上を数羽の黒い鳥が悠揚と渡って行く。

 黄色く染まった桜の葉が1枚2枚舞い降りる横で、早くも柿の実が色づいている。

 

 音楽堂の入り口に「本日、モンカフェはお休みです」の置き看板が出されている。

 向こうからランナーが走って来るけど、大丈夫かな、マスクつけているかしら?

 

 餃子屋さんの「年中無休」の看板と、カラオケ店の「通常営業再開」の看板。

 こうして半袖Tシャツで早朝散歩できるのも、あとわずかな期間だろうね。🍃

 

      *

 

 生誕120年、ルイ・アームストロングが歌う『What a Wonderful World』な朝。


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