第271話 もくじき

 

 

 

 枝垂れ桜の古木が今年もまた、無数の花簪はなかんざしを青空から降らせています。


 その真下、畳3枚ほどしかない草庵には、木喰もくじき山居の阿弥陀如来像が安置され、近くの墓地には有名な一揆で処刑された3人の農民指導者の記念碑があります。


 この時期、カヨさんは決まってこの草庵の前に立ち止まり、すでに何十度となく読んだ案内札を丁寧に読み直して、地域の歩んで来た歴史に思いを馳せるのです。

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