第46話 いわでもがな



 


 

 迷った末にカヨさん、オンライン句会の全員にメッセージを送信しました。

 またしても余計なお節介ですが、これで駄目になる会なら、それまでだと。

 

 ――うっかりしておりましたが、句会のご経験がない方々に、いきなりのオンライン句会はご不明な点が多いかと存じますので、2年半に約100回のリアル句会(約20人の出席者のうちで初心者はわたしひとり)の経験から、句会のあり方についてお話させていただき、会員のみなさまの共通認識としたいと思いますので、暑中に申し訳ありませんが、ご高覧のほどをよろしくお願い申し上げます。

 

 投句も、選句も、選評も、初心者とベテランでは力量の差があって当然ですよね(でなければ何十年もの努力が浮かばれません)。

 ですが、句会ではそういうことはいっさい関係なしに、全員が同等の立場で投句し、選句し、選評をし、選評を受けます。当然ながら、初心者は諸先輩方からきびしいご指導を受け、帰路、フロントガラスが曇ったことも何度かありました。(^_^;)

 

 ですが。

 これが句会の面白いところなのですが、あっちからもこっちからも、ぐうの音も出ないような駄目だしばかりではなく、手探りのおぼつかない作句をかえって新鮮と受け取っていただき、みなさまから高得点やお褒めの言葉をいただくこともごくたまにはあり、そのライブ感とスリル(笑)に惹かれて毎回出席しているうちに、少しずつ俳句がわかってきて、まだまだ発展途上ながら、現在に至っております。

 

 ですから、初心者だからといって遠慮されることはまったくありません。現在の自分の目で見ていいと思った選句、選評を堂々となさってくださいませ。


 ただし、それは相対的な評価ではないことを「初心者は初心者の句を選ぶ」(『NHK俳句』2020.9月号 西村和子さん)の言葉が如実に示しています。


 わたし自身、初心者のころにとてもいいと思って選んだ句なのに、いつの間にか見方が変わり、現在はすっかり色褪せて見えるという経験が少なくありません。

 鑑賞眼は一朝一夕には養えませんが、日々コツコツと作句し、紙誌や本、句会で多くの佳句・秀句に接するうちに、自ずから身につくものと思います。


 したがって、運よく本会の特選・並選に入れば大いに喜んでいただいて結構ですが、それ以上でも以下でもないと考えていただくのが妥当かと思います。


 またしても自分の例で恐縮ですが、ベテラン揃いの句会で高得点をいただいた句を結社誌に投句しても、主宰にはご評価いただけなかったり、逆に、句会で無得点だった句が予想外に高い評価を得たりということが日常的に起こるので、いまでは句会の点数に一喜一憂しなくなりました。


 理屈っぽい、気取っている、奇を衒う、思わせぶり、使い古された言葉づかい、類想句がありそう……といった点に気をつけて自由に作句され、玉石混交でもいいのでなるべく多くの句を投句して、作者自身でもある俳句を多くのみなさんに見ていただくことが上達の基本と思います。そのために本会が少しでもお役に立てればと存じます。

 

 以上、ベテランのみなさまには言わでもがなを長々と書かせていただきました。

 人生の友としての俳句づくりのご参考にしていただければうれしゅう存じます。

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