神様と俺、それからトウモロコシ。

gas

プロローグ - 神様と俺とトウモロコシ

第1話 回想は夏の味

キミ、聞こえるか、そうキミだ。

率直に聞こう、君は、神様を信じるかい?


と、それが。

俺の走馬灯の最後の1ページに割り込んできた自称神様と俺との、ファーストコンタクトである。




登校拒否の男子が家出をして、ヒッチハイクで旅行するなんていう青春映画を中学生のときに観た。

それにものすごく憧れて憧れて、高校生になった俺は、明日こそ絶対、行こう、明日は!と思いながら毎日過ごしていた。


誰かと一緒にかき氷もスイカも食べちゃいないし、良い感じの入道雲が鎮座する青空の下でひまわり畑をバックにツーショットもしていない俺は、どうしようもなく青春に憧れていたのだ。


結局思いとどまってしまって行けなかったのだが、そういう寸前のところで思い切れないまじめさみたいなものは俺の性質のひとつだと思う。


でも、高校三年の秋、進路も決まってあとは安穏とすごすだけ、となってしまった。


俺はその時初めて、やっとけば良かったなんて大人になって思うのは嫌だな、と強く、強く感じて、家の外へと踏み出した。



それが俺の最後の記憶。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る