私だけが見る世界

@arinko0115

第1話 出会い

人生ってなんですか?


生きていく楽しみって何がありますか?


そんな事を考えながら過ごしていた夏だった。

介護士として働いている翔一は今年31歳を迎える。


仕事から帰宅すると何通もの請求書がポストに入っている。


「あぁ、今月も携帯代に家賃に…遊ぶ金もないゎ」


介護士と言えば給料が少なく重労働というイメージだが、翔一もまさしくその条件下の元での勤務だった。


介護と言う仕事に就き早13年目…収入にも限界を感じていた。


手に取った請求書の中に1枚の求人チラシが目に入る。


「老人ホームで日勤帯のみのバイト、ダブルワーク歓迎…マジか!毎月毎月金ないし…バイトでもやってみよかな」


すぐさまスマートフォンを手に取り電話をかける。

3コール程で事務員らしき女性が愛想良く電話に出て対応してくれ、面接の日程も決まった。


「ょし!これで面接キメて稼ぎまくりや!」


元々翔一は働くのが嫌いなタイプではなく仕事に関しては真面目な方だった。


面接の日、バイトとは言え一応スーツに身を包み老人ホームへ面接へ向かう。


「面接とか初就職以来やな、意外に緊張するわ」


面接の緊張からか、道中、知人にLINEを何通も送り付け気持ちを落ち着かせ、ホームの限界をくぐると、施設長らしき中年の男性が出迎えてくれた。

長身でかなりガタイがよく、世間一般で言うガテン系の体格だ。


その外見に似合わぬ気さくな態度だったので話が弾み面接もトントン拍子に上手くいった。


「じゃぁ、来週からお願いね!本当にたすかるよ、どこも人手不足だからねぇ」


人員不足は介護職の悩みの種の一つだ。


「はい!よろしくお願いします!」


こうしてダブルワーク生活が始まった。

働くのが嫌いなタイプではない翔一は上手くダブルワークをこなした。

そしてバイトにも慣れてきた頃の事だった。


ある日出勤すると、3ヶ月程出勤していたにも関わらず初見の女性が目に入った。


パッと見、歳は翔一と同い年か下、身長は150cmぐらい、二重の髪はロングで星のオブジェが付いた髪ゴムで髪を括っている。


名前は有紗


可愛らしい顔をした女性。


しかしどこか物悲しげな、そして他を寄せつけないオーラが出ている不思議な感じがする子だった。


その日は外出レクと言う入居者と外出するレクリエーションの日だった。

道中の休憩中、困った顔をした彼女を見つけた。


「どしたの?大丈夫?」


翔一がたずねると少し緊張した感じで答えた


「タバコ忘れちゃって。」


「良かったらォレの吸う?」


これが初めての会話だった。


そして次の出勤日


彼女は前回の困ったとは違う少し病んだ顔をしている。


「なにかあった?」


「いや、別に…」


そっけなくあしらわれたが、それと同時に何か言いたげでもあった。


「まぁ、良かったらLINE教えるから相談に乗るよ!」


「あ、はい。。」


LINE交換し、LINEのやりとりが始まった…


そう。今日この日までずっと。

1日もかかさず。

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