第2話 微笑
「出席確認するぞー。」
いつもと変わらない朝ホーム
変わらない無機質な担任の声
でも確実に変わったものが一つ
”私の立場だ。”
江藤、どうした?
朝から顔色悪いぞー、大丈夫か?
あっ…、はい。大丈夫です。
そうか。あんまり無理するなよ?
はい、じゃあ次は…馬場。
はーい。
担任が再度、無機質な声で出席を取ると、
馬場 楓が自身の席の後ろに座る江藤 愛美の方を向いた
その目はまるで小さな子供が大好きなおもちゃを見る目と同じだった
ねぇ、愛美。
今日、ゆりな達来ないのかなぁ?
そ、そうみたいだね…。
愛美の発する声はそよ風が吹いているような感じだった
じゃあ、今日から私たち2人は親友だね!
逃げちゃだめだからね?
向けられた言葉には血が通っているかのような生暖かさと
それでいて冷たいものが感じられた
ほら、江藤と馬場。
前を向きなさい。これから、大事な話をするから。
楓は僅かな微笑を愛美に印象付けると前を向いた
残念なお知らせがあります。
まずは、柳 ゆりなは先週の日曜日から急遽家庭の事情により、
転校しました。皆さんへの伝言を預かっています。
え~っと、「急にごめんなさい。気を付けてね。」だそうだ。
担任が1つ目の報告を終えた途端、ゆりなの脳裏にある1つの感情が回った
逃げなければ、殺される
頭の中で危険信号が鳴り響き心拍が徐々に加速していく
担任は2つ目の報告を続ける
次に、宮仕ちとせのことです。
先週の土曜日の夕方から行方不明だそうです。
皆は宮仕が戻ってくるのを待とう。以上ホームを終わります。
教室は重い空気を纏ったままだった
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