病み闇ヤミ

@PIRORONIA

野球

プロ入り確定とメディアで騒がれた中学野球少年は高校生となり、甲子園は大きな盛り上がりを見せた。

晴天の中、その力強い正確なピッチングと圧倒的な打率は快進撃を続けていたのだが、決勝戦を目前に敗退してしまった。

高校上がって1年で甲子園の準決勝はあまりにも荷が重く、中学での功績も相まってプレッシャーも相当なものだったのだろう。

涙を流す彼の姿は新聞の一面を飾り、悔しみの甲子園、来年に期待なんて文字が踊る、だけじゃ終わらなかった。

彼の家には毎日無言電話が、嫌がらせが、彼を、家族、部員を襲った。

それでも耐え続けた彼は最後、燃やされた部室を見て自室で自殺した。

酷く親は悲しみ、怒りを叫んだ。

怒りの矛先を探し始めた両親は、メディアに向けた。しかしメディアは私たちは悪くないと答えた。彼を罵るような見出しはおろか、むしろ擁護する書き方しかしていないと反論した。なら無言電話をかけてきた者たちか。

しかし一日に何百と入った着信の、誰かも分からない者に怒りを撒き散らすのも時間の無駄だった。

何を憎めばいいのか分からなくなった両親は精神を病み、野球をさせた自分たちが悪いと思うようになり心中を図った。

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