人の心が読める石原さんは、僕の心が読めない。

赤坂 蓮

第一章 読心能力と読めない子

第1話 惑わす思考と第一印象

第一印象、それは全ての人と関わる際に必ず決められる人格のようなものであり、その人自体を守っているバリアのような役割をしている。


陽気な印象は元気で面白いタイプの子なんじゃないか、クールな印象は話してみると意外と意気投合するタイプなんじゃないか、そんな考えはいくらでも想像ができ、そこから会話が広がることで友達ゲットにつながるのがテンプレだ。


中学生時代、第一印象うんぬんの前にコミュ障をこじらせたことで何もなく平凡に生きていた俺は、お得意の空気読みを披露してグループの輪に入れなかったり、何事にも謙遜と遠慮の精神を欠かさず生きていたこともあり友達と呼べる人が片手で数えられるほど少なかった。

残念だが中学校生活は失敗……いや、大失敗していたのが現状だ。


別に人と付き合うのが嫌いなわけじゃないし、そもそも話しかけてくれたら話すし、なんなら俺は話し出すと面白いヤツなんじゃないかと思っている。

自分ではそう思っている。そう、多分みんなもそう思ってるはず。



ただ俺、有馬壮太は、高校の登校日初日というこれからの学校生活の全てを決めるような日に……


インフルエンザにかかり、最低五日間の登校禁止を下された。

いわば、最悪シナリオだ。

そう。俺は高校生スタートという新しい時代の幕開けと同時に1週間の遅れをとるという大きなハンデをもらってしまったのだ。



どうして神は恵まれない人に手を差し伸べてくれないのだろうか。

中学生時代散々こけてつまらない人生を歩んでいたというのにもう三年同じことを繰り返せというのか……たまったもんじゃない。


俺だって青春に憧れる一人の少年だ。「誰もいないんじゃなくて一人がいいんだよ……」なんて強がりを言って一匹狼を演じたっていいことなんて何もないことはよくわかっている。

だからこそ高校時代はいろんな人と仲良くなって、あわよくば恋愛もしてみたいなと思ったり思ってなかったり……

ただそんな夢はあっけなく幕を閉じてしまったわけで。



「高校生活はもっといろんな人と喋りたかったのに、五日間も休んじゃうと人間関係にも響くだろうな……」


第一印象から気の合いそうな人たちで話し合い、グループというものを形成するまでは多く見積もって五日間ほど。それに乗り遅れると出来上がったグループに入るのは至難のわざだ。



考えるだけでも頭が重くなる内容に思わず現実逃避をしたくなる。

ただでさえ出会う人ほとんどが初めましての状況に緊張感や不安が募るばかりであるのに、五日間も先延ばしにされたら募りに募って余計に症状が悪化しそうだ。


とはいっても病人真っ只中の俺にはできることが限られている。

スマホは手を伸ばせば届くところに、テレビは部屋の隅にあるが、逆を言えばそれしかない。

自分一人しかいない空間で、俺は学校の様子を都合のいいように想像するしかなかった。



「ここまでして俺にスクールライフを楽しんでもらわないようにしなくても、もともと希望なんてないからせめて普通の生活を送らせてくれよ……」


永久機関のように口から出てくる愚痴や自嘲をポロポロと吐き出していると、一週間という期間はあっという間に過ぎていった。












「結局この日がくるのか……」

気が付いたら教室の扉を目の前にして呟く俺がいた。

インフルエンザの欠席から一週間、いや正確に言えば五日間が過ぎた。

休めるならいっそ気が済むまで休みたかったのだが、そんなかすかな願望とは裏腹に俺の免疫がよい働きをしてくれたので最短時間で学校に行けるようになるなんてね……自分の体にも裏切られるとは。


それでも治った以上来ないわけにはいかないわけで、待ちに待った高校生活の幕を開けようとしていた。


中学校で着ていた質素な制服とは異なり、男性は紺色に白色のラインが入ったブレザーに深藍色のズボン、女性は紅色のリボンに灰色のブレザー、赤と白のチェック柄のスカートと色鮮やかになっている。

方言の違いも、髪型の違いも、全てが新しく、全てが新鮮に感じられる。


教室の周りではあちこちで話し合う声が聞こえ、既にいくつかのグループが結成されていた。

病気さえなければ俺もそのグループとやらにお世話になっていたのかもしれない。……まあ、あくまで可能性の話なんだけど。


(……まずは話しかけることだ。ちょっと話しやすそうな人は絶対クラスに一人いるだろう。)


淡い期待なのかちょっとした願望なのかはわからない。ただ自分が恐れている『ぼっち』と呼ばれる存在にはなりたくないだけ、ただそれだけは回避したいんだ。



みんなと同じスタートを切ることができなかった俺には顔合わせの機会がほとんどない。ほぼすべての人が初めましての状態だ。

だからこそ失敗は許されない、いや、俺自身が許さない。



扉に手を掛けるだけで無性に緊張が走り、心拍数が自然と上がる。そんな弱い自分を押し殺して扉を開け、ゆっくりと教室内へと足を運んだ。

そこは俺が想像していたよりも遥かに輝かしい世界が広がっていた。


(うわ……本当に見たことない人ばかりだ。なんかもう個性が強すぎる人もいるし、、、可愛い人も多いなぁ……)



周りの雰囲気を目で、耳で、肌で感じながら自分の席を探す。

どうやら俺が休んでいた間に早くも席替えが行われたらしく、出席番号順になっていないことは机の左上に書いてある名前と番号から読み取れた。


(知らない間に席替えされてる……出席番号順の配列が幻の形態になってるんだけど。)


特に出席番号順じゃないといけない理由もないけど、できれば俺も席替えのワクワク感を味わいたかった。



そうこうしている間に自分の席を見つけ、カバンを下ろして席につき、一息つく。

前から三番目、窓側からニ列目の微妙な席だ。

クラスは38人とまあまあの規模で、全5クラスある。教室内の生徒の人数を見るが、まだ全員が揃っている感じでも無さそうだったのでとりあえず周りの人をバレないようにキョロキョロと見渡す。


(廊下でもちらほら見かけたけど、もうグループ出来てるのか……まぁ5日あればって感じなのかな。あそこのグループはもともと中学校で仲良かった人たちかな……で、こっちにいるグループは少人数、お互いに初めましての人たちのグループだろうな。どことなくぎこちない感じだ。俺も入れそうかも……)


獲物を狙う猛禽類のように一つ一つのグループを推察しながら、頭の中で自分がどうすれば友達という存在を作れるのかプランを考える。

正直すぐに話しかけても良かったが、一週間も遅れをとった俺にそんな度胸はない。

様子も見たかったし、とりあえずは自分の席でおとなしく相手から話しかけてくれるのを待つだけだった。


「よっ!インフル少年!」




そんなことを考えたら、さっそく話しかけられた。

後ろから軽々しい声が聞こえ、肩をポンと叩かれる。インフルという言葉からして俺だろう。


ゆっくりと後ろを振り返ると、少しやんちゃそうな、いかにも『誰とでも喋れる』そんな感じのオーラをまとった子が席から身を乗り出して俺の方に伸びている。


「いきなり話しかけてごめん!俺は山神竜やまがみたつ。『りゅう』って漢字を書いて『たつ』って読むんだ。よろしくな!」


圧倒的コミュニケーションスキルと万人受けしそうなノリの良さ、嫌いな人はとことん嫌うであろう正真正銘の『陽キャ』だ。

あまりの勢いに俺は「あ、はぁ、ど、どうも。」としどろもどろに応答する。



こういう陽キャは中学校でもなかなか関わってなかったこともあって若干引いてしまったが、話してくれるだけありがたい。

別に陽キャが嫌いなわけではなく、陽キャ特有のテンションというのか、悪ふざけというのか、そういうものを経験してこなかっただけだ。


ただ、話してもらったのに何も話さないのは失礼にも程がある。俺はとりあえず自己紹介でも、と竜の方を向いて喋る。


「ぼ、僕は有馬壮太。よろしく。」

「よろしくなぁ〜。んでよ、インフル少年…じゃなくて壮太だ。壮太はどこの中学校だったんだ?」


俺の名前を聞くなり竜は俺に噛みつくように話しかけてくる。

これが高校生なのか……!コミュ力高くて俺と同じ人間とは思えない。


「えーと、谷張中学校だよ。山神くんは?」


「山神ってなんか壁あるなぁ……竜でいいよ!苗字で呼ばれるよりも名前の方が親しみ感じるし。」


「じゃあ……竜。竜はどこ中なの?」


「俺か?俺は天陵中学校出身だ。」


「天陵!?結構遠いんだね。電車通学?」


「そりゃもちろん。電車で40分かかるから遠い部類に入るだろうけど、そこまで不便じゃないな。電車も20分に一度くらいくるし、登校時間はもう少し頻繁に電車来てくれるからな。」


「僕も電車だけど逆の方向だね。こっちも時間はかかるけど、天陵ほどではないかな。」


思っていた以上にポンポンと会話が進んでいく。始めましての人とここまでたくさん話せたのは、俺としては快挙だと言ってもいいほどの成長だ。賞状を授けよう。

もともとたくさん話すタイプでもなかったから、こうやって話せるようになったのも何かのお告げかもしれない。


「あ、そうだ、俺お前に聞かないといけないことがあったわ」


そう言って竜は俺の耳元でほかの人に聞かれないよう囁いた。


「なぁ、今日が初登校日なんだろ?実際どうなんだよ」


「どうなんだって……何が?」


「何がって、聞かれるのは一つしかないだろ?『女子』だよ。どうだ?ここの学校って結構美女が集まってるイメージあるけれど、このクラスは特別にたくさんいる気がしないか?」


教室を入った時にも少しだけ見たが、竜に言われて改めて気になったので周囲を見回す。


黒髪で綺麗なロングの子、カールがかかっていてふんわりとした子、ショートでバリバリ運動してそうな子、、、たしかに可愛い人が多いような気がした。


俺は同じように竜の耳元で囁き返す。


「僕は今日来たばかりだからみんなの性格とか、そういうのはわからないけど、見た目だけで判断するなら比較的多いんじゃないかな。」


見た目だけで判断するのは個人的に好きではないが、確かに可愛い子はたくさんいる。

あくまで俺自身の判断だから総合的にはわからないが、高校生ということもあって中学生にあまり見られなかった『大人っぽさ』というのが際立っていた。

それに加えて同じ中学校の生徒はほぼいないため、見慣れない人たち全員がかっこよく、また可愛らしく見えた。



しばらくいろんな人を見ている中で、急に俺の目が一点に集中した。

ほら、ゲームの時にどれだけ視点を動かそうとしてもゲームの性質上動かせなくなる時ってあるでしょ?まさにその通りの状態になってるんだよ。

目に留まったなんて言葉では表せない……まるで物理的に引き止められたような感じだった。


遠目からでも綺麗だとわかる艶のある長い黒髪に、顎のラインが整っている小さい顔、くっきりとした目元など、その完璧すぎる容姿は俺の目を一瞬にして釘付けにする。


「……お前、もしかして石原黄泉菜いしはらよみな狙いか?」

思いっきり釘付けにされている俺の姿を竜は見逃さなかった。

俺は瞬時に目線を逸らして竜の言葉を否定する。


「ね、狙ってない!……わけでもないけど、ただ一際目立って―――」

そこまで喋って俺は口を塞ぐ。


「一際目立って……?」


「いや……なんでもない。」


「おいおい!そこまで言っておいてそれはないだろ!」


『一際目立って可愛かった。』

普段はこんな口に出したら恥ずかしすぎて蒸発しそうな言葉が出るはずないのに、思わず口に出してしまいそうになった。

こういう言葉は心の奥底でそっとしておくものだ。喋るとろくなことにならない。



「しかし壮太も石原さん狙いか……たしかに壮太の目に狂いはないが、石原さんを落とすとなると相当厳しいぞ?」


どうやら石原さんと呼ばれている女の子はクラスの中でも人気らしい。


「別に狙ってないって。…………一応聞くけど、何が厳しいの?」



「あの子、初日から連絡先を聞いてきた男を迷うことなくきっぱり断ってたんだよ。なんか、気軽に話しかけてきた相手をガッツリ蹴落としてるみたいな……そんな感じだったぜ。極めつけには『あなた、顔がいいからといって性格がそれじゃあモテないわよ?』なんてよ、まるで性格を知ってるみたいな言い方だったなぁ。そう考えると石原さんは結構難易度高いぞ?」


「そんなことがあったのか!?」


信じられない。

俺が休んでいる間にそんな急展開イベントが発生していたとは……いや、そうじゃなくて、初日から異性の連絡先を交換する人もいるもんなんだな。

俺の知ってる世界ではありえない出来事なのでおもわず驚いてしまったが、俺の中ではそんな出来事より石原黄泉菜という女の子の方がますます気になっていた。


容姿端麗、八方美人、そんな言葉を並べても誰もが納得しそうな可愛い子って男に好かれやすく、いろんな男と絶えず連絡しているものだと思っていたんだけど、もしかして俺の考えってモテない男特有の考えなのかな。

だとしてもいきなり初対面の人を蹴落とすような断り方をするってさすがに何か裏がありそうなわけであって。

考えられることは男という存在が嫌いすぎて関わらないようにしてる……とか、他の男がすでにいる……とか―――いや、この考えはやめよう。まだ話してすらいない子の印象を自分のイメージだけで考えるのはよくない。




そうこう話している間にクラス中をチャイムの音色が包み込む。気が付いたらホームルームの時間になっていた。

担任の笹原先生が教壇に立ち、俺の顔を見るなり嬉しそうに微笑む。

どうやら俺がいなかった五日間は誰も休んでいないらしく、初登校から5日経った今日がクラスのみんなが揃った日だったらしい。

要するに学校が始まってからの五日間、クラス全員が揃わなかったのは俺のせいだということになる。


いやぁ……荷が重いな。別に休みたくて休んだわけじゃないのに。


「今日初めて来た有馬君にはいきなりで悪いんだけど、自己紹介とかって……できたりする?」


可愛らしい担任の声から俺にとって一番望んでいなかったイベントを告知される。刹那、みんなの視線が俺の方に集中する。


いきなり向けられた視線は攻撃的ではないものの、それなりの圧があるわけで、俺は小さく縮こまりながら「あっ……はい……」と自分でも気持ち悪いと思うような返事をする。


(こういうことがあるから嫌なんだよ……みんなと同じスタートラインだったら多少スベッたとしても挽回の余地があると思うけど、一人の時なんて第一印象がバッチリ決まっちゃうじゃん……)


せめて自己紹介をすることを事前に聞いていればどうにかなったかもしれない。

まぁ自己紹介があるということを聞いたとしても話すことは特にないから対策のしようがないんだけど。それでも言ってくれればもう少し緊張せずに自己紹介ができたのかもしれない。


「それじゃあ有馬くん。自己紹介をしてくれるかしら。」


自己紹介という公開処刑から逃げられないように言葉の檻で囲まれ、半強制的に主導権を握られる。俺の為すべきパフォーマンスは、これから一年を共に過ごすメンバーに『自分』という人間の表面的な人格を見せるという失敗は許されない大技だ。

例えるならサーカスの初公演に野生のゾウを連れてきてパフォーマンスを行えと言っているようなものだ。

…………なんかいい例えじゃないけど大体そんな感じ。要するに『無茶ぶり』だ。


ただそんなことをグダグダと考えていても何も変わることはなく時間が過ぎていくわけで……

俺は重い腰をゆっくりと持ち上げて、席を立ち上がる。

それに合わせて視線もしっかりついてくる。


(うっ……この視線、やっぱり慣れないなぁ)


教壇前に移動する間にもみんなの視線は切れることなく、俺が歩いて前に出てくる時も、その視線は俺を追いかけた。



無駄に期待されている分注目度も高い。それならせめてごく普通の、平凡な、面白みのない、淡白な自己紹介で期待を削いだほうが失敗することはない。

逃げ道をたくさん確保して失敗に怯えながらも、自己紹介を手短に始めた。


「僕は出席番号2番、有馬壮太です。出身中学校は谷張中学校です。」


よし、出だしは好調だ。緊張はしたものの、キョドることもなく平常心を保てていた気がする。

正直この自己紹介をしている間視線をどうすればいいか分からなくてずっと目が泳いでたのは内緒だけど。


(最低限のことだけは喋った。あとは無駄に脚色せず終わろう!)


小学生でもできるような端的すぎる自己紹介になったが、今の俺はそんなことを考える余裕などなく、ただこのステージから降りたい一心で動いていた。


締めの言葉を考えながら、やり場のない視線を教室の奥に向けて一心不乱に言葉を綴る。


「あまり人と話すことが得意ではないので、仲良くしてくれると嬉しいです!よろしくお願いしまづっ……ぁっ、あっ……」




(あっ…………)




順調だった自己紹介は噛んだことで終わりを告げる——



みんなの頭上にはクエスチョンマークが浮かび上がって見えると同時に、俺の頭の中では用意していた全てのプランが消え去り、体のあちこちから冷や汗が噴き出る。


真空にしたかのような音もない空間に一人ぽつりと置き去りにされる俺。

ほんわかした空間は俺の一言で一瞬にして地獄のような世界に置き換わった。




(『噛んだ!!』)




俺の脳内シミュレーションにはエラーの対処法なんてもちろんあるはずがない。しかし、噛んでしまった以上どうにかしてこの死んだ空気を脱却しなければ取り返しがつかない。


でもね……非常に残念なお知らせなんだけど、こういう人前で立って話すことに慣れてない俺の頭はそんなに知的じゃないんだよね。



(噛んだ……噛んだ噛んだ噛んだ!!?今、俺、噛んだ……!?)


この時すでに俺の頭はオーバーヒート、何も考えられなくなっていた。

……誰でもいいので今から入れる保険探してくださいお願いします。


取り返しのつかない空気にいたたまれなくなった俺は消え入りそうな声で「お、お願いします……」と言葉を残しながらゴキブリのごとくそそくさと退散する。


恥ずかしすぎて死にそうなうえに変な空気まで作ってしまった自分に才能を感じてしまうよ……もちろんいい意味で使うわけないよね。自虐だよ自虐。



ある意味予想以上のオチを作ってしまったことに後悔しながら自分の席に戻って行く途中、ふと違和感のある視線に気づいた。

まぁどうせ俺の失敗を最後まで見届けようとする輩の目線だろう……そう思っていたのも束の間で、目線の先には朝から俺の会話の中でたびたび出てきていた容姿端麗な黒髪の少女、石原黄泉菜の視線だった。


小さく委縮しながら自分の席に戻る俺を見て、石原黄泉菜はクスッと笑う。

その笑顔一つで戦争がなくなりそうなぐらいの最終兵器は、まさしく彼女を引き立てる最大の武器になっていた。


ただ、脳内のメモリーが完全に処理落ちして使えなくなっている俺にはそんな攻撃も効くはずがなく―――とにかく自分の失態を擁護しようとした俺は平謝りをしながら席に着いた。



後から思えばあんな美少女と目が合うことすらおかしすぎて意味がわからん状況なのだが、それは脳内のメモリーを交換して物事がきちんと整理できるようになってからの話である。

席に座った後、竜から散々からかわれたのは言うまでもない。







こうして、人生で一度しかない高校生活は、良いようで悪いような、そんなスタートを切ったのだった。

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