第151話 5月22日【午後は食玩チックに☆】

 平年より早い梅雨入りが発表された翌日。


「めっちゃ晴れてるじゃん」


 青空が見えたので、茉莉は機嫌よく親友へとメッセージを打ち込んでいく。


『今日、遊びに行ってもいい?』

『テストのお疲れ会しよっ!』

 グラスで乾杯する女の子のイラストを添えて送信すると、すぐに既読がついた。


『いいよ』

『お菓子揃えて待ってる』


 親友の返信を見た途端、茉莉はつい口元が緩んでしまう。

 もはや週明けに一度別れを告げたテストが帰ってくることなど、彼女の頭にはなかった。


 しかし――、



「……なんでまた彩弓さんがいるんですか」


 ――久しぶりに親友と二人で遊べる……そう思っていた茉莉の前には先客がいた。


「何? ショバ代ならちゃんと持って来たわよ」


 彩弓は智奈美のベッドに寝転がり、ちょいちょいとテーブルへ向けて指差しをする。

 指先を目で追った茉莉は、お菓子のたくさん入った袋が視界に入るなり、


「…………ちぃなぁー?」


 声帯を地の底へ引きずりながら親友に呻いた。


「お菓子揃えて待ってるってこういうこと? それとも何? 彩弓さんって食玩しょくがんかなにかなの? どっかでお菓子を買ったきたら勝手についてくる訳?」


「そういう訳じゃないけど……なんていうか、今日も勝手に来ただけだから」


「……勝手に?」


 直後、茉莉の刺すような視線が再び彩弓へと移る。


「……本っ当に、そういう感じですね」


 茉莉は智奈美の前で『依存』という言葉を避けた。

 すると、それを気遣いと受け取ったのか彩弓は微笑む。


「ま、そこはお互い様でしょ」


 その後、彩弓はベッドから起き上がるなり鞄の中へと手を突っ込み――、


「さて、九条ちゃんも来たことだしさっそく映画見ようぜ、映画! 朝まででも付き合うよ」


 ――DVDを扇のように広げて見せた。

 こどもみたいに笑う彩弓へ茉莉は呆れてしまうのだが、


「あ、朝まではだめです。私、夜に走りに行くんで」


 と、智奈美がランニングのことを口走った瞬間、目の色が変わる。


(ちょっ――いつかバレるにしても、まさか自分からバラすなんて!)


 そして、


「走りに?」

「はい。ランニング始めたので」

「へー? 一人で?」

「いえ、彼と二人で」


 茉莉が口を挿む余地もなく、夜間ランニングは完全に彩弓の知る所となった。

 次の瞬間――という予感が茉莉の脳裏を過る。

 けれど、


「まあ、ちーちゃん運動不足だったもんね? いいんじゃない?」


 予想に反してあっさりと話を終えた彩弓へ、茉莉は違和感を抱くのだった。

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