大親友の初恋を応援していただけなのに、どうしてこうなったぁ!!?

風間 シンヤ

俺は今日も親友といつも通りの登校をする

「それじゃあ!母さん!父さん!行ってきます!」


俺、秋本あきもと 岩太がんたはいつものように母さんと父さんに行ってきますの挨拶をする。


「あぁ〜……ふぁいふぁい……そんな馬鹿でかい声出さなくても聞こえるっての……いってらぁ〜……」


俺の母親、秋本 環奈かんなは眠そうに欠伸をしながら頭やお腹をポリポリかきながらそう答える。

  これでも母さんは、数々の芸能人の衣装や髪型をコーディネートしてきた有名スタイリストだ。母さんを知ってる人が、ジャージのような姿で眠たそうな顔をしている今の姿を見たら驚く事だろう。


「岩太君はいつも元気ですね。でも、忘れ物しがちなのは減点ですよ。はい。これ。お弁当」


「うおぉ!?そうだったぁ!?肝心の物を忘れるところだった!?ありがとう!父さん!」


「だから、いちいちお前は声がデカいっての……」


俺は、ヒヨコの柄のエプロンを付け、眼鏡をかけたいかにも好青年のような我が父、秋本 雅彦まさひこから今日の俺の昼のエネルギー源であるお弁当を受け取った。

  父さんはある意味一家の大黒柱。仕事は出来るが家事が出来ない母さんに代わって、家事の全てを引き受けている専業主夫である。家がいつも綺麗で美味しいご飯が食べられるのは父さんのおかげだ。


「岩ちゃん。環奈さん。雅彦さん。おはようございます」


俺達家族がそんな会話している時だった。俺の家玄関先に女子なら誰もが一回は振り向くような超絶イケメンが立っていた。

  彼の名前は夏川なつかわ しゅん。俺の家のすぐ近くの所に住んでいて、同じ高校に通い、同じ学年の高校2年生で、お互い認め合う大親友だ。


「おっ!悪い!俊!待たせたな!行こう!」


「大丈夫だよ。岩ちゃん。僕は今来たばかりだし。それじゃあ、環奈さん。雅彦さん。行ってきます」


「おう。俊君。その声デカバカを今日もよろしくな」


「2人共車には気をつけてくださいね」


俺と俊はいつも通り2人に見送られながら、2人で学校へ向かった。



  俺と俊はいつもの通学路を他愛もない会話をしながら進んで行くと、やはりというかなんというか、生徒が増えるにつれて女子生徒達がチラチラと俊の事を見ていた。


「はぁ〜……!今日も夏川君素敵ぃ〜♡」


「本当!本当!もう!私達の癒しだわぁ〜!」


「ってか、夏川先輩の側にいるモブ誰?」


「あぁ、あれ。あの人は夏川先輩の金魚の糞先輩よ」


女子生徒達がうっとりと感嘆の溜息を吐きながら俊を見つめ、そんな言葉を交わしていた。若干俺は酷い言われようだが……まぁ、いつもの事である。


  成績優秀・スポーツ万能・おまけに超イケメンという三拍子揃った我が親友夏川 俊は、学校でも超有名人だ。

  が、それに対して俺は、勉強は苦手・運動はそれなり出来るが、どこにでもいそうなモブ顔の男子である。特徴らしい特徴と言えば、母さんにも今朝言われた声が人よりもデカいぐらいだろうか。が、残念ながらそのデカい声は女子に嫌われる対象で、男友達は多いのだが、俺に喋りかけてくれる女子は片手で数える程しかいない。昔はよく一緒に遊んだ俊の一つ下の妹の夏川 如月きさらにも


「岩兄。声うるさすぎ」


と、ウザがられるのが常である。昔は俺の背中に隠れてよく泣いていた娘だったのに、今は今時風の美少女になった為か、避けられるのが常である。まぁ、でも俺が話しかけたら会話はしてくれる分だけ、他の女子よりはマシな方かもしれない……


  まぁ、普通だったらこの超ハイスペックイケメンが隣にいたら劣等感にさいなまれ、嫉妬心を剥き出しにするものだろうが、俺は俊にそういう気持ちを抱いた事は一切ない。

  そもそも、何を隠そう俊をここまでハイスペックイケメンに育て上げたのは俺なのである。それにはある深い理由がある。


  その理由は…………



「秋本君。夏川君。おはようございます」


もう少しで学校に着くというところで、俺達にまるで女神を思わすような微笑みを浮かべた美少女が、俺達に挨拶を交わしてきた。

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