【銃】をテーマにした小説
パァン!
鳴り響く銃声。放たれた凶弾。
それは一直線に雨粒の中をかいくぐり、弾いて、目標を貫通せんと突き進む。
銃、というものはこと日本においては異質な存在だ。
平和な日常の裏に張り付いた不穏さ、非日常の影、事件の匂い。そういったものの象徴であり、フィクションに置いてはその入り口に配置されることも少なくない。
これがアメリカではそうはならないのであろう……むしろ、銃が使えない、効かないような相手というその怪物性を表現するのにはより適しているのかもしれないが。
「――――つまりは、そういうことだ」
「せん、ぱい……?」
銃口は私の額を捉えて離さない。モデルガンだと言っていたそれは本当は実銃で、先ほどの正確無比に髪の毛だけを撃った威嚇射撃といい、素人目に見ても只者ではないことがわかる。
「うそ、ですよね……だって、いつだって私を助けてくれたじゃないですか。魔導書探しの時だって、エミリーちゃんを匿った時だって、事情も聞かずに……」
「愚かだな、どうして疑問に思わなかった? 起きた事件の数々に、関与してないにも関わらず常に最適解を提供する身近な存在がいることに。私のことは都合のいい四次元ポケットだとでも思っていたのか? そんなはずがなかろう、だなんて、同じようなことは何度も指摘していたはずだぜ?」
――――そんな都合のいいことはあり得ない、必ず裏があるはずだ。
彼女が何度だって私に言って来た助言だ。そしてその時、その全ては本当に裏があった。
「もしかして、全部知ってたんですか。全部知ってた上で、私を誘導していたんですぁ。わかってて、内心嗤って見ていたんですか!?」
「おいおい、酷い言い草だなぁ、そんな大声で人聞きの悪いこと言わないでくれよ。それじゃあまるで私の性格がねじ曲がっているようじゃないか。否定はしないが」
「否定してくださいよ……っ!」
ああ、いつもの先輩だ。何も変わらない。ただ、ありのままでこうなのだ。
「わかりました。貴女は私の敵、なんですね」
「そうだとも。先に進みたいのならば私を殺してでも押し通せばいい。踵を返すのならば……この銃は元のモデルガンに戻る」
それは即ち、日常への回帰。なんてことのない平和の再来。先輩と部室で駄弁っているばかりのあの頃への帰り道。
――――ああ、もうそんなもの、とっくのとうに断たれていること、先輩がわかっていないはずもないのに。
ポタリ、と床に落ちたのは真っ赤な雫。
かたや、拳銃を握りしめ。
かたや、刀一本引き摺って。
壊れたチャイムが開戦の号令となった。
■
「――――――よし、原稿できたな」
「先輩、無許可で他人をバトらせないでください。それともなんですか、ナマモノ趣味でもあるんですか」
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