【そして東の空へとんでいった】で”終わる”小説

時はヒガナの王が戴冠せし頃。

つわもの、竜を征しに旅立つ。

その竜、火を吐き北の山を滅しては、南の街を壊して廻る。


時はヒガナの王が病に伏せし頃。

つわもの、大火の竜を征し帰還す。

かの竜、子を為してつわものに預け、つわものは王へ此れを献上す。

この卵、灯火の竜の名を戴く。

何れこれが破られし時、ヒガナの王、露堂樹万命の源の下へゆく。


灯火の竜、すくすくと育つ。

人、これを征竜が証と掲げ、竜、人々を護る。


九つ、コガリの人の生の節目に生る実を取った頃。

遥か遠き東方より降雨の竜が訪れる。


降雨の竜、灯火の竜へ問う。

何故なにゆえ、ヒガナの者を護るのか。


灯火の竜、答える。

我が母であり我が父である故に、と。


降雨の竜、灯火の竜を滑稽と嗤う。

親を殺し、親へと成り代わったのかと。


灯火の竜、此れを知らず。怒りヒガナの地を去る。


それより、ヒガナに災いの絶えること非ず。

故を知らぬ者、唄に記す。

よこしまなる降雨の竜、ヒガナを守護せし灯火の竜を誑かす。


七つ、コガリの人の生の節目に生る実を取った頃。

灯火の竜、多くを知りヒガナに帰還す。

己が父の罪を詫び、己を育てし恩を返すと。


ヒガナの民、邪心の晴れしところを知らぬが故、灯火の竜、迎えられず。


故を知るツツワリの者旅の吟遊詩人、遠き日のヒガナを唄う。

ヒガナの民、アズマの地に灯火の竜が為の塔を築く。

灯火の竜、此れを証と認めヒガナの地より災いを祓う。


時はヒガナにコドワゴ暖かい頃に訪れる鳥の巡りし頃。

灯火の竜、悪しき降雨の竜を滅すことを誓う。

そして、東の空へと飛んで行った。

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