(三)-8
すぐに警視庁麻布警察署のパトカーが一台と、鑑識係が到着し、現場検証が行われた。その日の案内係の担当であった浜島さんと、連絡を受けて駆けつけた羽田さんが参考に指紋採取された。
警察は地元商工会の防犯カメラもチェックした。黒のライダースーツを着て黒のヘルメットを被った人物が絵一枚を抱えて通りを歩いて行ったところが確認された。しかし、この人物は表通りで車に乗ったらしく、忽然と姿を消し、それ以上の足取りを追うことができなくなった。また、事情聴取もその日のうちに済んだ。
絵は実は一般的に無名な画家の作のため、価値は高く見積もってもせいぜい三〇万円程度だと羽田さんが話すと、億単位の窃盗事件を期待していた捜査二課の刑事は「そうですか」と小さく呟き、ため息を漏らしていた。どうやらこの程度だと、捜査も真剣に行われなさそうだ。
こうした事の顛末を、私は浜島さんと興奮気味に話す弟から聞いた。とりあえず、上手くいったようであった。
(続く)
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