(二)-16

 挨拶もそこそこに、私はすぐに絵の入手先について聞いてみた。

「いえ、これは石見屋からの依頼でして。できる限り高く売って欲しいとのことでした。依頼人がお金に困っているから、なるべく高くさばけないか、というのですよ。それなら、東京都心のど真ん中にあるギャラリー広尾が良い、ってことで。私が預かる形にして、画廊の方にお願いしました」

「石見屋って『骨董商店石見屋』のことでしょう。疑わなかったんですか?」

「ああ、あまり言い噂、聞かないですよね、あそこ。でも今回は資産家の遺産相続での依頼と聞いて、盗品ではないと思いまして。現金化を急ぐ理由もそこなのかなと」


(続く)

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