第9話 アマデウスの証明
「はぁっはっはっはー! 妾の力、恐れ入ったかソーマよ――んにゅっ?」
見る見る内に数を減らしていく巨大な蜂型のソーマの群れであるが――その内の一体が弾け飛んだ。鳳仙花の如く、その衝撃で種を撒き散らす。散弾のような種子を、ソルアートは
「くっ……!?」
ソルアート自身の
我が身を駆使して振るう武器である
……反面、
ソルアートは、勤勉な
彼のソーマの鎌のような前肢が、容赦なく小さき蝶の聖女へと振り下ろされた――
「――させるかっ!」
……否、振り下ろされる寸前、蒼白き流星がそのソーマを貫いた。巨大蜂の緑の体躯を貫通して大講堂の屋根に刺さったのは……〈北兎丸〉。マティアスからの救援に他ならない。
ソルアートの抹殺を果たすこと無く、彼女へと紙一重に迫った植物の魔蜂は凍って砕けるが……それは決して、〝
「〝
慌てて崩れた体勢を立て直すソルアートの警告は、僅かに遅いか……?
「んきゃっ……!? し、しもうた……!!」
――ソルアートの手と〈北兎丸〉の間に猛烈なスパークが巻き起こり、双方が撥ね飛んだ。反射的だった自身の対応が誤りだったことに、金色髪の聖女は歯噛みする。
高熱の
故に、ソルアートの寸前の行動は明確な悪手であった。〈北兎丸〉はますますマティアスから離れ、ソルアートも再び体勢を崩してしまい……マティアスをフォローすることが出来ない。
「〝
ソルアートの悲鳴が天を衝く。
〝
「……大丈夫です。もう――切り替わっていますから」
ソルアートへ凛とした声を返したマティアスの外見が――変異する。
白銀に煌めいていた猫っ毛の髪が――ソルアートに負けぬほど眩い黄金色に輝き……。
青空めいていた双眸が――夕焼け空の色に、燃え上がった。
何より――
――〈
……半瞬と間を置かず、マティアスの姿が消え失せた。金髪赤眼に変わった彼が巨大蜂たちの包囲網の外に出現した直後――勝利目前であったはずのソーマたちは金色の猛火に包まれる。
昨日の竜型個体と同様に、巨大蜂型個体たちの絶叫も、他の如何なる生き物のそれとも違っていた。
「……ま、間に合っておったのじゃな……。ふぅぅ……」
安堵の息を吐いたソルアートの視界から、再度マティアスが消失する。
前述した通り、
――そして、
銀髪青眼の時は
――その事実こそが、マティアスが〝
(
それ故に、ソルアートの援護が必要不可欠であったのだが――それさえ完了してしまえば、〈北兎丸〉を使っていた時とは比較にならぬほどに、マティアスは巨大蜂型ソーマを圧倒する。神速で宙を翔け、緑の巨大蜂たちを燃やし、弾き飛ばしていく〝
――いつの間にか、植物の巨大蜂の集団は、大講堂の斜め上の虚空に寄せ集められていた。
駆逐する最大の好機……!
「ソルアートさん! 合わせて下さい!!」
「心得た!!」
マティアスの呼び掛けに応じ、ソルアートの背から夥しい数の
「《
それを上空から見下ろしながら、マティアスは己の胸の前で合掌した。〝
「《
ソルアートの
〝
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