三行短編集
鈴木秋辰
その壱
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ジジイだって女学生と文通がしたい。昨今の若者は懐に薄い長方形の道具を忍ばせそれにて文通を行うという。ジジイもそれに倣って街へ繰り出し早速女学生に声をかける。ジジイは懐からすずりを取り出す。
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二条大橋の弁慶が倒されぬまま冷戦期へ突入した。
通る者から宇宙船の設計図を奪っているらしい。
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ゆみちゃんは動物と仲良し。小学校に行く途中で1匹また1匹と野良猫がついてきて校門まで見送ってくれる。今日は遠足で水族館へ行くのだ。帰りのバス、タッチプールのヒトデが所狭しとバスの床に張り付いている。
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カナリアを飼うには炭鉱が必要だからセレブ趣味。
西暦3000年のルネサンス主義
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歯医者へ行く。
治療台に腰かけると目の前にどかっと雑誌やトゥースカタログが置かれて歯科医が現れる。
「お客さん、今日はどんな感じで?」
治療を受けながら俺と歯科医の軽快な雑談が続く。
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寿司は鮮度が命。時には握る手の体温さえも命取りになる。一流の名店ではイキのいいネタと引き換えに死んだ大将が冷たい手で寿司を握っている。
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髪の毛を染めるやつは皆イカれている。この間なんて満席の美容院で俺以外みんなブリーチをしていた。あまりの痛さにどいつもこいつも腰掛けたまま絶叫している。
「ガス室みたいですね」
「そうですね、どうでしょう前髪はこんなもんですかね」
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スマホの化石が見つかる。
なんだジョブズ、パクリじゃないか
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満員電車にて。
しまったやられた!残高が減っている。
キャッシュレスすり
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地球へ攻撃を仕掛ける前に地球の歴史を調べた用意周到な宇宙人。
資料によるとこの星の連中は死ぬ直前に爆発するようです。お気をつけください。
張作霖。松永久秀。
出典・山川日本史
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