第7話 アカルナイの人々

 聖ヨハネ北伊勢教会に、メシヤたちが集まっている。

マリアはここに寄宿するシスターである。


「あんたってホントにいつも冗談ばっかり言ってるわねー」

 マリアが呆れ気味にコメントする。


「そう? どうせなら楽しくなる話題のほうが良くない?」

メシヤは、お笑いマスターのような返答をする。


「それはそうだけどさー」

そうは言いつつも、ほんのり微笑を浮かべるマリア。


二人のやり取りを遠巻きに眺めるイエスとメシヤの妹・マナ。

「お兄ちゃん、すっかり元気になって良かった」

「ああ、あれでこそ本来のメシヤだよ」


メシヤは、とある施設にいた期間が長かった。

イエスとマナはたびたび慰問に訪れていたが、あの時のメシヤは見れたものでは無かった。



「へえ、あんたの家って料理屋さんやってるのね!」

 食べることに目がないマリアは興味津々だ。

「うん、中学にあがるちょっと前から手伝いはじめてさ。いま修行中だよ」


「荒削りだが、こいつのメシは美味いぜ」

 イエスが話に加わる。

「イエスくんが言うなら間違いないわね! こいつが自分で『僕の料理は美味しいから』って言ってたら信用できないけど」


「なんだよそれ~。まっ、でもさ、マリアもぜひ食べにおいでよ。クラスメート割引でお値打ちにしとくよ」

「分かったわ。食べさせてもらおうじゃない」

「マリアさん、わたしもご奉仕させていただきます!」

 マナが明るくもてなす。


「マナちゃん、えらいわ~。実の兄とは全然違うわね」

「いえいえ、自慢のお兄ちゃんです」

 マナは照れること無く答える。


「なにやら賑やかですね」

 背の高い、実直そうな青年が輪に入ってきた。


「あっ、神父さま! おかえりなさい」

「マリアの御学友ですね。ようこそ北伊勢教会へ」



「お邪魔してます。マリアさんのクラスメイトの藤原メシヤです」

メシヤが会釈する。


「ああ、君がメシヤくんですか。マリアからよく話は聞いていますよ。マリアが最近楽し・・・」


「あーっ! し、神父さま、そろそろミサの準備をしないと間に合いませんよ!」


「いえ、まだ充分間に合・・・」

 次の言葉を継げさせずに、マリアは神父の背中を押して、そそくさとその場を立ち去った。

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