第3話「噂越しの窮地」
アルドが旅に出るまで過ごしていたAD300年は、ちょうどミグランス王朝成立300年にあたる。アルドの育ったバルオキー村がある大陸には、巨大なミグランス城を構える王都ユニガンがある。王都ユニガンの城下には、レンガ調の立派な住居や、客で賑わう露店が立ち並んでおり、王都繁栄の様相を呈している。
だが、王都から一歩外に出れば、それは城壁に覆われた要塞となる。魔獣、といった侵略者を拒む意思がレンガに宿っているかのように、厚く城壁を成す。
アルド達一行は、様々な露店が立ち並ぶ通りを歩いていた。アルドは道すがら、仲間にこれまでの成り行きを話している。
「そうでござったか。そのご婦人の経緯も気になるが、よく存じ上げたもの。
この時代で、上手くその技術者とやらに出会えるのでござろうか?」
「アルド、どうするかは考えているの? ミグランシウムという言葉を聞いたことは?」
「いや、それが……。
よし、リィカ! ミグランシウムについて、調べることはできるか??」
「名称ミグランシウムでデータベースを検索開始。
…………完全一致0。少ナクともAD1100年には存在シない物質名と推測」
「変ね、どうして存在しないのかしら? 非公式な名称だとか?」
「うーん……。ひとまず地道に情報を集めるか。
火薬は火薬だ。武器を扱う商人なら知っているかもしれない。鍛冶屋に聞いてみよう」
*
一行は、露店の立ち並びの一角にて店を開く鍛冶屋に尋ねることにした。どんな素材の持ち込みもいとわず、また異国の武器や防具も商品のラインナップに揃える凄腕の鍛冶屋である。
「ちょっと聞かせてくれ。火薬の技術者やミグランシウムについて聞いたことはあるか?」
「さぁ……、そういう名前は聞いたことないなぁ。自分は武器を扱って長いんだが……。
火薬は扱いに相当技術がいるもんだから、鍛冶屋だからと言って簡単には扱えないんだ。
王都の安全にも関わるからだろうが、火薬を扱う者についてはウワサ程度しか回ってこない」
「……ウワサって、なんなんだ??」
「火薬とは関係なさそうなんだが……まず、足がないそうだ。怪しいだろう?」
真っ先に顔をしかめたのはエイミである。小さい頃に読んだユウレイの絵本には、どれも足がなかった。ユウレイと言えば足がない、足がないと言えばユウレイ……。エイミは考えと共に頭を振り払った。
「足がない!? まさか人じゃないなんてことは!!? い、イヤなウワサね……」
「しかも、魔獣の群れを従えているそうだ」
「なんと! 火薬を扱うだけでなく、魔獣をも従えるのでござるか!
こうなると、寝返った時にはいよいよ人々の安全が危ぶまれるでござるぞ?」
「あと、甘い見た目でハジケてるってウワサだ。どうだ?」
「スウィートでパンク……どのようなファッションでショウカ? 興味がアリマス!」
エイミ、サイラス、リィカの3名が、ウワサの実際をそれぞれ思い描き、ああでもないこうでもないと言って、想像合戦が繰り広げられる。アルドは、ここで考えていても仕方がないと、鍛冶屋にお礼を言うのであった。
「うーん、わからないな。鍛冶屋のおじさん、貴重な情報をありがとう」
「構わないさ。今後ともひいきにしてくれよ」
*
露店の立ち並びや人の賑わいから少し離れ、アルド達はこれからの方針について相談をし始める。
「一体どういうことだろう? 実際にそんな人が火薬を扱っているんだろうか?」
「まるで狐につままれたサムライの気分でござる。身暮らしーむ? も知らぬようでござった」
「あくまでウワサよ? 足がないなんて……きっとウワサに尾ひれがついたに違いないわ!
あるいは意図して流された情報か……。どちらにせよ、探すのに思ったより手間がかかりそうね」
アルドはウワサに何か探すヒントが隠れていないか振り返る。足がない、魔獣の群れ、甘い見た目でハジケた技術者……? 新種の魔獣や魔物の可能性や、既存の敵の変異、個性を求め過ぎたなれの果てなど、正体を考える。サイラスのように、呪いをかけられた人間かもしれない。
次の手を発案したのは、冷静さを取り戻していたエイミであった。
「リィカ、今度は魔獣を従えているような様子がないか、この辺りを捜索できるかしら?」
「了解シマシタ。中距離範囲で魔獣の集団、及ビ関連ワード火薬、でリサーチ開始。
リサーチ終了。セレナ海岸に火薬を話ス、魔獣の群レを確認! 位置情報、入手完了デス」
化けたサイラスが頭をピンクのアフロパーマにして魔獣を手懐ける妄想にまで至っていたアルドは、リィカの音声で現実に引き戻される。
「よくやった! その位置まで案内を頼む! 似合わないもんな!」
「はぁ? 一体何を想像したんだか……」
エイミの中にあった怯える感情は完全に吹っ切れた。
* * *
アルド達一行は、王都ユニガンを出て、セレナ海岸に移動した。ひとたび強い風が吹くと、髪同士が少し貼りつきつつ乱れ揺れる。そして、磯の香りが温もりをもってしばらく漂う。角の取れた石ころや石粒が混じった自然の歩道では、こすれ合う足音が心地よい。
セレナ海岸にを訪れるものは、旅人や行商人、釣り人などの人間だけではない。魔物は元より、魔獣が働いた悪事もたびたび王都で報告されている。そこには、ユニガンよりも、魔獣城のある暗黒大陸に近いこと以外の理由もあった。プリズマの力によって繁栄した人間に見くだされ、魔獣が虐げられてきた歴史――王都の人間が魔獣に負わせた心身の傷は深く、彼らの憎悪の血が今も
セレナ海岸を案内するリィカが移動を止める。ここは、セレナ海岸の中でも風化の少ない大岩が多く、自分達を取り囲むように大地から突き出している。黒い壁のようであり、通行人の行く手を阻む……要するに行き止まりである。
「ここがその位置なのか? 岩しか見えないようだけど……?」
「そのハズデス。しかし、内部のブラックボックスの干渉がナイとは断定できマセン、ノデ!」
「今それが起きるのは困ったわね。
……待って、そうでもなさそうよ、静かに!」
ハンターをしているエイミの聴覚が、石粒のこすれ合う足音を捉えた。突然屈んで耳をそばだてる様子に、とっさに他の3名も習う。
石を踏みしめ、この岩向こうに何かがやってくるのがわかる。アルドは、何かの声に共鳴する岩そばで、静かに耳を押し当てた。
冒険途中で聞いた覚えのある声が聞こえる。岩の隙間からは薄藍の鱗が見える……魔獣女戦士の存在がアルド達の中で判明する。足音からして魔獣女戦士や魔獣兵士かを複数人連れていることも明らかであった。
魔獣達の声は密やかだが、にじり寄るような執念がこもっていた。絶対に音を立ててはいけないというアルド達一行の緊張感、そして魔獣達の殺気が、生き物を寄せ付けない波動となったのか、あたりはシンとした。
「あんなに足が付かないヤツは初めてだ。おまえ達、今回は絶対に失敗するんじゃないわよ!」
魔獣兵士達は腹に、手足に力を今一度込めなおした。籠手や戦斧が軋む。
「成功報酬で釣られてやるのは今日までの布石と思って、作戦を決行する。
甘さに付け込んで護衛のフリをして襲う、いいなッ!!?
仲間の命を奪ってきた火の技術なぞ、容易く許してはならんわッ!!」
晴らさんとする憎しみのこもった魔獣兵士達の一息を返事に、魔獣達はその場を立ち去っていった。
エイミが魔獣達との距離を確認し、3名に頷きを見せる。
「あいつらが追っているのは火薬の技術者、大いに考えられるわ。危険よ!」
「もしその人に万一のことがあったら、火薬の技術が未来には存在しなくなるんじゃ……?
そうなると、オレ達が花火玉で打ち上がった未来は改変されてしまうのか!? それはマズい!!」
「拙者も危険なにおいを感じるでござる。先回りをするでござるッ!」
アルドとサイラスが同時に立ち上がる。魔獣挟み撃ち作戦の打ち合せが、目と目で瞬時に交わされるのを、エイミが素早く制止する。
「待って! 出会ったとしても、わたし達が見て技術者か見分けがつかないかもしれないわ。
危険だけど、魔獣を追って行きましょう!」
「それもそうだな。
だが、危険な状況だと感じたら、すぐにオレ達で守るぞ、いいな?
技術者も、オレ達の未来も守るため助けに行くぞ!!」
*
セレナ海岸の岩間を魔獣の群れが行く。距離をとって一行が続く。足元の砂利で音を立てないよう、抜き足差し足忍び足……道を挟む岩陰を利用して、縫うように進む。先頭のアルドは、少し進んでは屈んで見回し、少し進むを繰り返す。ややせっつくようにサイラスが追う。エイミは不測の事態に備えて、警戒態勢を優先して彼らを追う。リィカは後方を注意して進む。
群れの後ろ部隊が、前部隊と不自然に距離をとっていき、左右二手に分かれた。前部隊のみとなり、アルドとサイラスにも群れの先頭を確認することができた。
(先頭の魔獣が見ているのは……おじさん? あの人が技術者、か?)
(前方からは高貴な見た目のご婦人が来るでござる。どうしてこのような地に一人で?
しかし、お二方ともウワサのような特徴はござらぬが……)
おじさんは、いくらか荷物が入ったような袋を担いでいる他には、これといった特徴はない。婦人にも言えることだが、足もあるし、見た目に印象的な様相もない。しかし、先ほどの魔獣が部隊を分けた行動のタイミングを考えると、魔獣が意識しているのはどちらか一方である可能性が高いと、アルドには思われた。
おじさんと婦人がすれ違う。おじさんの行く方向は王都だが、婦人の行く先には魔獣の群れが潜む岩道――その先でアルドとサイラスは目を光らせている。婦人は軽装であり、護衛もつけずに優雅に歩く様子は、アルド達に不信感を抱かせた。魔獣達にとって婦人には隙が多過ぎる。なににせよ、守るべき対象が増えたと、アルドとサイラスは再び身構えなおした。
婦人はすれ違って一歩のところで振り返り、おじさんに声をかけた。
「あら、いいにおいの物をお持ちね? わたくし、とおってもほしいわ?」
アルドは「いいにおい、感じたか?」とサイラスに目線を配る。サイラスは思わずケロロと鳴きそうになったところをグッとこらえ、「におわぬ」と首を振る。
「よくわかったな。これは最後のひとつだったんだが……あんたにやるよ。ちょっと待ちな」
おじさんは担いでいた袋を前方に降ろし、中身を確認し始める。おじさんは婦人に背中を向けており、婦人はその背部から手を伸ばす。
「わたくしも手伝いますわ。あなたが渡してくれるまでね!」
手を伸ばしたと思いきや、素早い動きで頸部と肩関節を締め固め、おじさんの上肢の自由を奪っていた。おじさんの下半身が後方から払われ、180度向きが変えられる、両下肢が前に投げ出され、地面を叩きつけた。
おじさんを助けるために、立ち上がるアルド達。しかし、拘束されたおじさんを捉えていた視界をふいに遮られる。魔獣の前方部隊が横並びに、壁を成して立ち塞がったからである。それはアルド達を標的にしているのではない。前方部隊はおじさんと対面し、半円弧状に取り囲んでいた。
アルドとサイラスは剣及び刀を抜いた。おじさんの窮地をまずは助けるため、前方部隊を
おじさんが襲われた事態に叫ぶ、があろうことかその声はアルド達を抑止した。
「!? 動けん! 魔獣達よ、今こそ助けてくれ!」
おじさんが助けを求めた先は、魔獣達であった。エックス斬りの構えは解けないが、攻撃にも出られない。
姿勢を解いたのは婦人であった。高らかに笑い、婦人が魔獣女戦士に姿を変える。締める力が一層強くなり、援護の手は借りられないという絶望がおじさんを襲う。
「残念だったね、あいつらはわたしの部下さ。誰も寄せつけンじゃないよ!
火薬の技術を渡してもらうまで、この者を外へ出すなよ! 者共、囲め!」
「わたしが前に出るわ!」
巻き起こる風とともに、おじさんの傍に吹き飛んでくるのは伸された魔獣兵士である。飛んできたところには、まだ風まとう拳があり……。
「制圧サセテいただきマス!」
鋼鉄のピンクが舞い、重い衝突音と魔獣女戦士が吹き飛んでくる。現れたのはリィカと、サマーソルトキックを加えたエイミである。
「邪魔かッ!?」
エイミとリィカが魔獣達の視線と動揺が集まる。すかさず、おじさんを逃さんと囲んでいた魔獣兵士の列に、炎としぶきの閃光が交差、魔獣は薙ぎ倒され、現れたのはアルドとサイラスである。
「オレ達が相手だ!」
アルドとサイラス、エイミとリィカが、残った魔獣女戦士とおじさんを挟んで対峙する。にじり寄るアルド達、いつの間にかやや緩んだ拘束に力を入れなおす魔獣女戦士、身動きが取れなくもアルド達の様子を見つめていたおじさん。
口火を切ったのはおじさんである。
「誰だか知らないが、時間を稼いでくれるか!?」
「何を言ってるんだい!! こんなンでやられる仲間じゃないよ。殺っちまいな!」
一度はやられた魔獣達が、魔獣女戦士の鋭い声によって奮い立つ。砂ぼこりか、足元を白煙が舞い始める。
「必ず助ける! 交戦開始だ!!」
「ターミネート・モード起動」
「片づけるでござる!」
魔獣女戦士とおじさんを横目に交戦が始まる。白煙は、暖かい海から吹き込む風を知らないまま、重みをもって拡がり続ける……。
*
アルド達の戦闘により、魔獣達の体力と戦意が尽きつつある時、それぞれの視界もまた失われつつあった。いつの間にか白煙は霧のように辺りを覆い、おじさんの位置把握は、声と気配だけが頼りであった。
「十分だ! ありがとう! 惜しいが君達と二度と会うことはないだろう。さらばだ!」
さらばだ、というおじさんの声は既に遠のき、次いで気配も霧散した。今は呻く魔獣達も、いずれ視界が晴れ、動けるようになれば、再戦は免れない。
「オレ達もここは逃げよう!」
「ワタシにツいて来てクダサイ」
リィカの赤外線センサーが地形を捉え、追跡センサーがおじさんを捉え、一行を王都に導いていった。
* * *
王都のとある街角にて、リィカは足を止めた。
「リィカ、エルジオンに戻ってきてよかったのか? ここ、普通の家みたいだけど……?」
「ハイ。今回は微小なエラーも認めマセン。ココにイルと思われマス!」
「これもカモフラージュの一環なのかしらね。さっきの格好もウワサとは違ったわ。
迷惑がかからないよう、人気がない隙に伺いましょう」
リィカの案内にて訪ねた家には、セレナ海岸で逃げ延びたおじさんがいた。先ほどまで魔獣に捕まり、体は地面に激しく叩きつけられていたとは思えない身軽さを見せて、おじさんは立ち上がってくれる。
「何の用かね……って、あぁ君達は! 先ほどは時間稼ぎをどうもありがとう! 強いんだな」
服の浜砂を軽く払い、迎えてくれるおじさんは、やはり無傷な様子である。
「あぁ、旅をしているからな。おじさんも、魔獣から逃げて無事だったり、強いのか?
追うようなことをしてすまなかった、オレ達聞きたいことがあるんだ」
「戦うことはからっきしだけど、防御魔法だけはちょっぴり得意でな。
さて、一体何を聞きたいんだ?」
「オレ達、色を発して燃える鉱物を探して旅をしてきたんだ。
ここ王都で、火薬の技術者がいると聞いたんだが……おじさんがそうじゃないかと思って」
「ほう、鉱物でいいのか? 火薬を扱う技術がほしいのではないと。
確かに自分なら教えられる……が、何に使うかも教えてくれないか?」
「ここから遠く離れた地、恐怖の世界がいつ再び訪れるのではないかと人々は怯えている。
そこには花火師がいて、花火でそんな人達の心を少しでも救おうと、立ち上がったんだ。
オレ達、その花火を打ち上げる手伝いがしたくて、どうしても炎色剤を手に入れたいんだ!」
「道中、あなたの変なウワサを聞いたわよ? 足がないとか……」
「ウワサ通り、魔獣を従えていたのでござろうか?」
「甘い見た目でハジケてる、コレはスウィートでパンクという意味ではナイのでショウカ?」
アルド達は一貫性のなかったウワサの内容を思い出し、改めておじさんに注目する。足元、服装、顔元、どれをとってもおじさんである!
「ハッハッハ! どれも自分が流したウワサで合ってるよ! 鍛冶屋の商人に頼んでおいたんだ。
想像はしているだろうが、目くらましみたいなもんさ。まずは、種明かしをしてやろうか。
足がない、というのは文字通り、煙を撒いて逃げる、つまり足が付かないからきている。
それでも、技術欲しさに襲うヤツがいる。だから、魔獣に報酬をチラつかせて護衛させていた。
甘いだのハジけるだのは、オマケだな。変人に思わせたかったんだが、元ネタはこれだ!」
そう言い放ち、部屋奥にある地下へ続く階段から降りていく技術者。
トンカントンカン ドガガガ ギコギコギコ……
チーン!
「てっぺんにキラリ~ン! のスペシャルデザート、火薬技術の集大成だ!」
技術者が持って上がってきたのは、アルド達がどの時代でも見たことのない高層パンケーキであった。パンケーキに刺さった棒の先からは、細やかな光の糸が八方に流れては消えを繰り返し、
「なんと!? これぞハジケる甘味でござる! 拙者このような食べ物、見たことがないでござる!」
「これ、火花を散らせているの? 絶妙な火加減に、この甘いにおい、きっと誰もがドキドキするわ!」
「本物の火薬が使用サレており、技術と芸術が融合シタ一級品でアルと認めザルを得マセン!」
「名付けてドカ盛りシロップパンケーキ・花火スペシャルだ! 名前はちょっとふざけているが……。
自分なりに火薬の未来を考える旅に出ていたんだ。この技術に求められていることを。
兵器としての火薬改良に嫌気が差してよ。その花火師のように、誰かのために使いたいと思った。
誰だか知らねえが、応援するぜ。この地下に隠してあるから要るだけ持っていきな!」
*
「これだけの身暮らしーむや炎色剤があればきっと足りるでござるな」
「そうだな。これを持って行こう! おじさんありがとう。それじゃあ元気で!」
アルド達は、十分な量の炎色剤を手に入れると、駆け足で花火師の待つラウラ・ドームに向かった。
「あっ、おい!!
あいつら、食いもしねえで……よっぽど早く鉱石が必要だったんだな。
そう言えば、カエルの被り物した部族? が、みぐらしーむとか言っていたな……」
技術者は、パンケーキに名付けたが、渡した鉱石には名前がないと気が付いた。
「ミグラシーム、ミグランス……よし、この鉱石をミグランシウムと名付けるか!
いつか、火薬の技術を誰かのために使いたいやつが現れた時のために、記し隠しておこう」
技術者は後に書き記す。誰かを傷つける手段としての火薬ではなく、誰かのための火薬として未来に残すために。ミグランシウムを始めとした後世に残したい火薬、火薬を扱う技術、身を守るために必要な防御魔法、そして――
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