第3話 異世界転移と異次元転移は違う
統合次元体に連れこまれた駿は、その世界に居る奇妙な生命体達と何の違和感も無く一緒にレクチャーを受けていた。何故か、講師はジュガで何時もの様に、一寸クラシカルなセイラー服の女子高校生姿で
「異世界転移と異次元転移は違うのよ。異世界とは、この統合次元体が形成された以降、個々の生命体によって勝手に作りだされた世界で、ゲームのソフトや何とかランドみたいなテーマーパークと同じ感覚で想像された世界なの。つまり、その世界を作った特定の生命体が管理し運営しているので、管理者、また、その世界の神様かな、の許可があれば、誰でも入ることができるし、本当に娯楽目的で作られた世界もあるわ。其れなりの代償を払えば、観光旅行気分で楽しめる世界もあるけど、基本的には、夫々の平行宇宙の延長上の創造物だから、元の宇宙に住む生命体なら、生身の体で転移できるのよ。世界創造も大分下火に成ってきたけど、そんな世界が有限ではあるけど、無数に有るので中には、一寸危ない世界もあるので、利用する時には要注意ね。」と言ってから3D映像で幾つかの異世界の様子を見せてくれた。統合次元体は、無数の平行宇宙が一緒になった世界で、かつ、幾つかの次元がコヒーレントされ、調和された特殊世界であった。
「さて、此処からが、ここに集まってくれた、皆のお仕事のお話よ。」映像が切り替わり、幾つかの数式やら観念世界の様子が映し出されて
「これが、根源世界のイメージ。まだ詳細は分かっていないけどね。この根源世界が、ある時?まあ時間が有ったかどうか分からないけど、突然、分離し始めたの。一枚一枚、皮を剝くようにね。
剝離した、夫々のプレートが夫々の次元へと変化して、今では無数の次元か存在している。次元同士を再び引き付けようとしている力が重力、夫々の次元で宇宙が創成されたのだけど、それらは、違った物理法則が支配している為、次元を超えて他次元へ行くと、その次元の宇宙では、異次元体は認識されないの。つまり、ダークマター化してしまうわけ。ただ、情報と重力だけは、次元間でもやり取りができるから、此方の情報を予め、目的の次元の情報受容体に提供して協力してもらうのよ。大方は、その世界で暮らす知的生命体が多いけど、中には高度なAIや量子コンピューターの様な場合もあるけど、まれに、惑星自体だったり、その銀河が持つ情報共有ネットワーク見たいな事もあるわよ。」と言ってから、とある銀河の例を紹介した。
「この銀河は、銀河全体が量子情報のネットワークで結ばれていて、一つの生命体の様に機能しているの。宇宙の図書館と呼ばれているわ。そこには、数百億年分の、あらゆる英知が貯蔵されていて、その宇宙だけじゃなく、次元を超えた情報も蓄積されているのよ。」再び映像が切り替わり
「それで、あなた達の任務は、この、ほかの次元とコヒーレント関係を結ぶ事なのよ。つまり、目的の次元との量子情報の共有、具体的には、その次元の知的生命体と親密になったり、Hしちゃてもいいわよ。中枢AIとの量子エンタングルメントを形成するとか、やり方は、色々で、その時どきで様々なやり方があるわね。」と言うと映像を切り替えながら
「この例は、テラ種生命体(二足歩行するヒューマノイド型生命体)の場合で、目的次元で、量子情報共有が可能な知的生命体に憑依、つまり乗り移って、その世界の危機を回避させた例よ。」と言いながら、一つの映画かドラマの様な映像を見せた。
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「パパ・・・パパ・・・」(うーんパパて誰の事だ)目を開けると、小さい頃の僕そっくりの男の子と、ミドリそっくりの女の子が目に入ってきた。
僕の横には、ベットから起き上がって、情報ディスプレーを見入る大人のミドリがいた。状況から、クリスマスイブの日にローマ法王から重大な発表がされているらしい。
「あなた、(えー誰の事)、この彗星てあなたが見つけた彗星じゃないの?」大人のミドリが(ネグリジェ姿の・・・しかも凄く美しい)不安そうに聞いてきた。
「ミドリ(大人)てこんなに綺麗になるんだ。」思わづ口に出した言葉に、
「何よ、今更・・・」そう言いながら、肩を寄せてきた。二人の子供が、じゃれる様に二人の間に割り込もうと動き回っていると、多分、電話の様な物だろうが、鳴った。小さな瓢箪の様なその装置が喋りだし、その声は兄の声だった。話の内容は、ともかく直ぐに来いとの内容なのだが、僕が戸惑っていると、瓢箪のような装置がすべてを指示してくれた。ミドリが着替えを用意してくれている間に、ダイニングでは、朝食ができていた。
「もう少し、ミドリと一緒に居たいなぁ・・・」そう言って、ミドリを抱き寄せると、子供たちが
「パパは、私の物」「じゃーぁ、ママは僕の物」そう言って、子供たちが抱き着いてきた。
僕は身支度をして車に乗り込んだ。例の瓢箪端末(ガルコンと言うらしく、小型AI端末であらかたの身の回りの事を制御している優れものだ)を、ダッシュボードの所定の位置にセットすると、自動的に目的地が設定され自動運転モードとなった。ミドリママに抱っこされた長男を、ママのスカートを掴んだまま羨ましそうに見上げている長女が、それでも満面の笑顔で
「パパ、いってらっしゃい!」と手を振ってくれた。その時、僕は(この世界を絶対に守らなければ)と決意した。
この世界は、さっきまで居た世界に比べ、少し科学技術が進んでいるようで数十年後の未来に来たような感じさえするが、後になってかなり違った世界である事が分かっていく。自動運転で、兄の研究所に着くと、待ち構えていたように仕事が降りかかってきた。
「最終終末警報が出された。」(たぶんそれは、法王の声明の事だろう。)
「量子泡爆弾が不発に終わった。起爆が旨くいかなかったらしい。」兄は淡々と語り始めた。なぜか、ほんの数時間前にやってきたこの世界なのに、周囲の事情は、かなり分かっている。こんな事なら、もう少し前からこの世界に覚醒させてくれていれば、ミドリのあのおっぱいに顔を埋める事も、可愛い子供たちが生まれてく過程も、経験できたのになぁとあらぬ事を考えていると
「何か、代案はあるか?」兄が真剣な表情で言ってきた。僕は一寸考えるフリをしてから
「量子泡爆弾て、まだ予備が有るよね!」
「ああ、有るが今更、シップで送り込んでも遅いぞ!破片が惑星を直撃するから。」
「いや、隕石の進行上に落とし穴をつくるんだ。」
「落とし穴!」
「量子泡爆弾を使って、空間に穴をあける。その穴に隕石ごと落っことす。」兄は納得したように
「うん・・・良いかもしれない!色々課題はありそうだが。」
確かに、色々と課題はあった。地球のまじかまでやって来ている隕石が急に居なくなった場合の重力の影響、潮汐力のバランスだけど。
「ラグランジェ点の前までに実行すれば、大きな影響はなさそうだ。」
多分、この世界の英知が集まっているこの組織の能力をフル活動させ結論を見出していく。
「どうやって起爆させる。ハル8000でもトラブッタのに!」
「まあ、それは僕が行くしかないだろうね。失敗したらこの惑星も終わっちゃうけど!」(どうやら、この爆弾は僕が作ったものらしく、ちなみにハル8000はこの世界での最新鋭のAIである)
「分かった。成功すれば、お前は英雄だな。まあ、失敗しても誰も覚えちゃいないだろうけど、皆死んじゃうからな!」兄の不自然に明るい声に、その場の全員が引き気味のなか(今晩は、絶体にミドリのおっぱいに・・・・)そんな事を考えながら、着々と作業を進めていた。
この世界では、恒星間航行まではまだ無理だが(要はワープ技術)恒星系の外延部まで有人宇宙船を飛ばす技術力はあったので、月ぐらいまではそんなに苦労なく行って帰って来られていた。それなりの月面基地も作られていて、僕の任務は、その基地から出発する予定であった。
月への出発を明日に控えた夜に、僕はミドリのおっぱいに顔を埋め居ていた。外見は30代のおっさんだが、中身はまだ高校生のぼくは、有り余る情熱をミドリに注入していた。
「激、今夜はなんだか激しい・・・」
「英雄になって帰ってきたら、3人目生んでくれよな!」
「うん・・・」と言ったミドリだが、寂しそうだった。
「そう言えば、僕とミドリがこんな関係になったのて,何時からだっけ?」僕は、カマをかけながら情報取集をしていた。
「うーん・・・多分、高校の屋上でキスした時ぐらいからかなぁ・・・」
(フム・・・あっちの世界でそのイベントはまだ来てない。)僕はミドリの胸のなかで、にやりとした。
昨晩の激しい行為のためか、考えてみれば、ミドリも30代のおばさんだったのだけれど、深い眠りについていた横顔に軽くキスしてから、子供の愛らしくすこやかな寝顔をみた後で(ああ、家族を持つと言う事はこう言う事なんだなぁー)と思いながら僕は月へと旅立った。(次に会ったら、何故起こさなかったて絶対に攻められる事は必定だろうけど。)
月面基地には高速シップが準備されていて、ハル8000の後継機であるサル9000が搭載されていた。
「こんな高級なAIを搭載して大丈夫なの?戻って来れないかもしれないのに!」
「まあ、戻って来れなければ、全部終わりだから。」月基地の責任者が事もなさげに言ってから
「本当は、戻ってきてほしいんだけどね。これ無いと、僕らの娯楽が無くなっちゃうからね。」
「あのAIはフォログラム再生用に使っていたんだけどねぇ・・・」(何のフォログラムを再生してたんだと、突っ込みを入れたい所だったけど、地球にいる家族や恋人達とも今生の別れも出来ぬまま消滅してしまうかもしれない。)
「なるべく戻って来る様にするけど・・・・」僕は、そう言葉を残して出発した。
巨大隕石は、刻々と地球に近づいて来ているため、ラグランジェ点も刻々とかわり、サルが正確なポイントを計算しつつ、量子泡爆弾の投下点を割り出している。この爆弾の原理は、どうも僕が生み出したものらしいのだが、要はブラックホールとは真逆のホワイトホールを作る爆弾である。量子ゆらぎの際、ミクロ空間ではゆらぎの空白が生じる。言わばミクロの穴が発生するのである。この状態の量子をボゾン同志で共鳴させてやると、このミクロの穴は無限に重なり合い、一挙にインフレーションを起こすのである。
最初は、隕石の内部にこの爆弾を仕掛け、隕石を内部から爆発させる計画であったが、起爆が旨く行かず、一瞬にして、隕石を消滅させない限り、破片がこの惑星を直撃する状況となってしまった。隕石がかなりの大きさに見え始めた時に、サルが投下ポイントを割り出した。サルの起爆用タイマーがセットされ起動した。ハルの事もあったので、僕は別系統で、直接起爆のシステムを作り、そのスイッチをしっかり握っていた。投下点のすぐ近くに来て、突然、サルのシステムがダウンした。再起動を掛けると、ハルのコマンドが邪魔をしていた。
(そう言う事か・・・)AIが優秀すぎて死ぬのを怖がっているのだ。僕は、サルと外部からのインプットを遮断してから、スタンドアローン型のコンピュータを立ち上げ、ほぼ手動で投下ポイントへ突入した。ここまでの経緯を圧縮データで電送してから覚悟を決めた。
「やっぱり帰れないや・・・ミドリのおっぱい・・・」その瞬間に僕はスイッチを押した。
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