FF外

@Vane11ope

第1話 通知欄

僕は今日も息を吸うようにTwitterをしている。


本当はやるべき課題がある。

試験も迫っている。

勉強をしなければならない。


予断を許さない状況だ。

だがそんなときこそTwitterが捗るのだからしかたない。


ツイートは今日も絶好調。


僕はいわゆる「アルファツイッタラー」ではない。ゆえにひとつのツイートにアベレージで10も反応がつけば満足だ。今日はそんなツイートを連発していた。


22いいね 3リツイート

15いいね 1リツイート

31いいね 4リツイート


ツイートを遡りながらしばし余韻に浸りつつ、通知欄に目を移した。


「またこのアカウントか」


ツイートが少しばかり伸びるとまれに目にする「このアカウント」は、FF外の人。フォローもしていなければ、されてもいない。

伸びすぎたツイートが「このアカウント」のタイムラインまで羽を伸ばしたのだろうか。

ある程度ツイートが伸びると「このアカウント」が通知欄に現れる。そしてそっといいねを置いていく。


僕は「このアカウント」の存在が気になりはじめていた。いったい何者なのだろうか。


それから僕は少しずつ「このアカウント」のタイムラインを覗いてはツイートにいいねをするようになった。「このアカウント」もまた僕のツイートが伸びたとき限定でいいねを返してくる。


僕は通知欄で「このアカウント」との無言の会話を楽しんでいた。


そんなある日のことだった。「このアカウント」がこんなツイートをしていた。


#いいねをした人にひとこと言う


僕はためらった。試されているような気がした。


確かに通知欄では以前よりお互いを頻繁に目にするようになってはいた。それでも直接言葉をやり取りしたことは一度もなかった。


そんな僕がこのツイートにいいねをしていいのか。ましてや僕はFF外だ。「このアカウント」をフォローもしていない。ただ困らせるだけなのではないか。僕は「このアカウント」を確実に意識しているが、向こうはまったく気付いてすらいないかもしれない。ときおり漂流する流木のごとくタイムラインに流れ着いた僕のツイートに、ただなんとなくいいねを繰り返していただけなのかもしれない。


しかし「このアカウント」に対する興味に抗えなかった。僕は正直「このアカウント」と話してみたかった。


最後の勇気を振り絞り、断腸の思いで僕はこのツイートにいいねをした。


(つづく)

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