第152話 じゃぱにーずかるちゃーいずくーる15


 日本の小さな島を中心にあちこち行ってはモンスターを倒し、ダンジョンを攻略していった。


 モンスターが溢れ出してから約半日、日本は他の国よりも比較的早期に事態の収束が成された。


 未だ未攻略のダンジョンはあるのだろうが、地上にモンスターが溢れて来ないのであれば特に気にする程のものでも無い。


「とりあえずお家に帰ろう!皆もそろそろ帰って来るだろうし!」


  役目も終わったのでサブキャラを解除して意識を本体へと戻す。


「ふぅ……戦闘飛蝗は中々便利だな……スーツには標準装備でも良いかもしれないな、スーツ毎に見た目を少しづつ変えれば恰好良いだろうし!問題は予算だよなぁ……俺のお小遣いじゃ到底揃えられないからなぁ……上手い事言ってベルか純を味方に付ければ運営予算から出してくれるか?……まぁとりあえず言うだけ言ってみよう!」


 やはり乗り物系は便利だ、移動が楽になれば出来る事もかなり増える。


 しかも戦闘飛蝗はライドモードじゃない時には使用者の戦闘をアシストしてくれる優秀な存在でもある。


 制作に掛かる費用は凄いが、費用以上の効果は望める。


 戦闘飛蝗を今後もブラッシュアップしていければレベルが低い者でもある程度はモンスターに抵抗し得る力が得られるかもしれない。


 これはかなり革命的な発明になったかもしれない。


「……一般向けには飛蝗じゃない方が良いかもだな。あとライドモードも無くて良いかな……」


 自分の考えを纏めながら一応メモを取っておく。


 もしかしたら今後、冒険者協会から売り出してヒット商品になるかもしれないからアイデアはなるべく忘れないようにしておきたい。



 ☆ ☆ ☆



 日本は再び平和を取り戻した。


 世界中が阿鼻叫喚している中、半日という短い時間で。


「日本はもう大丈夫だろう……問題は他の国々だな」


 我が家の居間では絶賛会議中だ。


 モンスターの世界的な氾濫を日本は無事に乗り切った、だが他の国々では今も尚モンスターによる被害が出続けている。


 あのアメリカでさえも事態を収束させるに至っていない。


 アメリカという広大な土地に比べてモンスターと対等以上に戦える人材が不足しておりダンジョンを攻略出来ていないので仕方が無いのかもしれないが、正直な話をすれば俺達が介入しなくてもアメリカはいつかは事態を収束する事は可能だろう。


 多大な犠牲者を生む事にはなるだろうが。


 近代兵器はモンスターには効き辛い。


 魔力によってある程度肉体を保護されているモンスターにはシンプルに火力不足なのだ。


 銃弾ではゴブリンには多少の効果は期待できるが、オークには全く歯が立たない。


 爆発物であればオークにも効果はあるのだろうが、それではレベルは上がらない。


 基本的に化学兵器でモンスターを討伐しても経験値は貰えない、これはベルが言っていた。世界に定められたルールのようなものらしくベルでさえもどうしようもない事だ。


 なので結局は地上に溢れ出したモンスターをある程度は片付けられるが、ダンジョンを潰さない限りは事態は収まらずダンジョンは更に力を増していくが人間側は弾薬にも兵器にも限りがある。


 レベルを上げておかなければ最初から勝負にならない。


 ダンジョン相手に消耗戦はしてはならない。


 だからこそ各国はレベルを上げた者の力を借りてレベルが上がっていない者のレベルを上げてダンジョンを少しづつ攻略していたのだ。


 全てはこの日の為に。


 けれど国土が広い国では少し対応が遅すぎたのかもしれない。


 世界中であらゆる人がモンスターとダンジョンに抗っている。


 そして現在、平和になった日本には戦える者が多く居る。


 各国に俺達が赴くのは簡単だが、正式な依頼で無ければ動けないのも事実。


 前回の中国での事は中国だけが危機的状況だったから世界的にも黙認された事であって、今回の様に世界中が危機的状況になっている場合俺達が無断で動く事は出来ない。


「どうするの?日本政府に依頼があったのは100以上、正直これじゃあ何処の国から手を付けるべきかは私達では判断できないよ?」


「純の言う事は最もだな、安相さんは何て言ってるんだ?」


「安相さんもどの国から手を付けるか悩んでるみたい!まずは日本の同盟国とか外交的に親しい国を優先したいとは言ってるけど、国によって被害状況も違うし自国で何とか出来るかどうかも違うからねぇ……アジア圏を優先すれば他の地域の国が煩いし、かと言って国土が広い国から手を付ければそれはそれで時間も人員も掛かるからこっちの人員が足りない……困ったね!」


 これだけの戦力があっても柵からは逃れられない。


 あちらを立てればこちらが立たず、本当に面倒だ。


「もういっその事、派遣要請をしてる国同士で決めて貰えば良いんじゃないか?」


 面倒になり過ぎて一番やってはならない方法を提案してみた。


「それは駄目だ。絶対に良い結果は生まれない……やはりこちらで判断基準を設けて優先度を決めるしか無いだろう。待たせてしまう国には申し訳無いが、私達も万能ではないからな……問題は何を基準にして優先度を決めるか、どの程度まで力を貸すのかだ」


 基準を定めるにも項目は多岐に渡るし精査するにも時間が掛かるのは間違いないが、やらなければ何時までたってもどの国に行くのか決まらない。


 国力、国土、人口、被害状況、被害規模、戦える人員数、モンスターの数、ダンジョン数、外交的問題、親密度、俺が思いつく限りでもこれだけの判断材料がある。


 これらを全て精査するのは時間的に無駄だ。






















「視点を変えないか?俺達が全ての国に出向くのは不可能だろ?」


「だね……」


「あぁ……」


 俺自身には解決策も無いし、考える力も無い、俺は何時だって他人に任せてきた。


 俺が出来なくても他の人なら出来る。


「美奈はどう思う?」


「私は……とにかく戦える人を一人でも増やして、その輪を広げるだけで私達は撤退、それを繰り返す。私達が戦うのは最初だけで良い。そうすれば同時に色んな国に別れられる。自国を守るのは自国民に任せた方が良いと思う」


 魚を俺達が取るんじゃなくて、魚の取り方を教えるだけ、美奈の言いたいのはそういう事だろう。





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