第151話 じゃぱにーずかるちゃーいずくーる14
沖縄は自然豊かな場所が多く、少し前まではダンジョンも結構な数があったのだが冒険者協会で大体のダンジョンは潰しているので然程モンスターも溢れていない。
溢れていたとしても沖縄には一馬さんと千尋による薫陶と教育を受けた冒険者協会ダンジョン攻略組所属、沖縄実力トップの比嘉昇が居るので沖縄は最悪何とでもなる。
「比嘉の奴はちゃんとやってんのかねぇ……」
比嘉は俺の1つ下で、小学生の間まで俺達の地元に住んでいた。
一馬さんがやっていた道場に通っていた事もあって顔見知りというか、同門生だった。
中学になる頃に父親の地元である沖縄に引っ越して行ったが、大学に進学するにあたって大分に再び戻りまた道場に通っていた変な奴で、比嘉にとっては年上のお姉さんである千尋に憧れていたらしい。
最初は大分の企業に勤めるつもりだったらしいが大学卒業後には地元に戻って行った。
何があったのかは察するに余りあるが、地元で頑張って働いているというのは千尋や一馬さん経由で俺も知っていた。
そんな比嘉が数カ月前に大分に再び戻ってきて、冒険者協会ダンジョン攻略班に所属し今度は一馬さんだけでなく、千尋からも湯布院合宿所ダンジョンで鍛えられていたのは俺も知っていた。
比嘉の剣の才能は間違いなく本物で、千尋の才には一歩及ばずだが一般的に見ても天才の類なのは疑いようも無かった。
そんな才気あふれる比嘉がダンジョンを攻略する為の知識、経験、スキル、レベルをこの数カ月の間に習得して地元に帰り、冒険者協会ダンジョン攻略組沖縄支部で実力NO.1として数々のダンジョンを攻略、後進の育成までも卒なく熟してくれていたので沖縄には殆ど未攻略ダンジョンは無い。
だからこその平和。
「会いたく無いけど……会わない訳にはいかないよなぁ……」
比嘉は冒険者協会員でも数少ない俺と千尋の関係と存在を知っている人間であり、千尋教の狂信者とも言える暑苦しい男なのだ。
「上空から見る限り、モンスターがちらほら居るには居るが……ダンジョンは無さそうだな。何処か離れたダンジョンから来たっぽいな……まぁ適当に狩ってから比嘉に挨拶しに行くか」
戦闘飛蝗ライドモードで上空から逸れモンスターを狩りながら比嘉が居るであろう冒険者協会沖縄支部に向かった。
☆ ☆ ☆
那覇にある沖縄支部に来たは良いが、このライダースーツ姿でお邪魔しても良いものか悩んだがまぁ別に良いかと真正面からお邪魔する事にしたが、これは決して比嘉に対する嫌がらせではない。
沖縄支部というには些か規模はこじんまりとした平屋の一軒家の戸を開けて遠慮なく中へ入ると中は普通に役場の事務所みたいな作りになっていて、受付があったので受付のお姉さんに比嘉を呼んでもらう事にした。
「すいません。冒険者協会本部から来ました児玉というものですが、比嘉昇さんは居られますか?」
「ひぇっ!は、はい!少々お待ちください!昇さーん!お客さんでーす!早く来てくださーい!」
やはりライダースーツ姿だと不審者に思われたようで、受付のお姉さんは若干引き気味に比嘉を呼びたてている。
受付の方に若干の申し訳無さを感じながらも比嘉を待つ。
「はーい!今行きまーす!」
受付の奥から比嘉の返事が聞こえてきた。
向こうからじゃまだ俺の姿は見えていないようで、のんびりとした返事でこちらに向かって来ている比嘉の姿が見えた。
相変わらず無駄にデカい。
身長は俺よりも20cmは高く、スマートな筋肉に身を包んだ爽やかな出で立ち。
服装は冒険者協会ダンジョン攻略組に支給されている普通の隊員服なのにこいつが着るとちょっとだけオシャレに見えるのは何故だろう。
「はいはいはいー……って!なんだお前は!」
受付に現れた比嘉が俺を見るなり失礼な事を宣いやがった。
受付の方は比嘉が来てくれた事でここは任せたとばかりに、裏へと逃げて行った。
「なんだとはなんだ、失礼な奴だな!俺だよ俺!」
「いえ、何方か分かりませんのでお名前をお聞かせ頂けますでしょうか?」
流石にこんな格好の奴でも失礼な態度は良くないと思ったのか急に丁寧な対応をしてくる比嘉だが、今更取り繕っても遅い。
「いやいやいや!さっき名乗ったし!失礼な態度を取った事を先に謝罪しろ!バーカ!脳筋狂信者!」
やはりこいつと会ったらまずは罵る所からじゃないとな。
上下関係をきっちり分からせておかないと調子に乗るからな、この脳筋は。
「……すいませんでした。はぁ………それで、こんな所まで何の用ですか、拓美センパ……いや、寄生虫先輩!」
「何の用もクソもあるか、沖縄のモンスターとダンジョンの様子を見に来たんだよアホ!忙しい千尋に変わってな!」
「チッ……お荷物野郎の癖に……はぁ……沖縄は他の県とは違って殆ど未攻略のダンジョンはありませんし、未攻略らしきダンジョンも沖縄支部のダンジョン攻略組が攻略に向かってるんで大丈夫ですよ」
やはりというかなんというか、比嘉という化物染みた天才が居る沖縄は安心安全な場所になっているようだ。
「じゃあお前は支部で何してるんだよ、もしかしてサボりか?」
何かムカつくから悪態を付けて比嘉を悪者に仕立てたい。
「俺は支部から指示と何かあった時の為の保険要員ですよ。そんくらい分かってるでしょうが、性悪クソ虫先輩」
「ほほー!現場には赴かず、危険な仕事は全部部下任せですか!かぁー!これだから体育会系上がりの脳筋野郎は……少しぐらい千尋を見習って貰いたいね!千尋は今も関東で頑張ってダンジョン攻略してるってのに!お前って奴は……恥ずかしく無いのか!」
とりあえず比嘉に比が無いのは分かっているが、意味不明なこじ付けで無理矢理文句を付けてみた。
「はぁ……メンドクサ、なんで千尋さんはこんな奴と……とにかく!こっちも暇じゃないんですよ!用が無いならさっさと帰れ!この穀潰し虫!そんなに暇なら俺の居ない所で遊んでください!」
「へいへい!じゃあ、またな!……なんかあったら念話しろよ。俺ならいつでも動けるからな」
「はいはい……じゃあまた、拓美先輩」
沖縄はどうやら問題無いようなので、次の島に向かおう。
「昇さん、結局あの人誰だったんですか?妙に馴れ馴れしいし、態度もかなり高圧的でしたけど……」
「俺が一生敵わないと思った優しい先輩だよ……ちょっとウザいけどな……」
去り際に聞こえてきた会話に気恥ずかしさを覚えながら、戦闘飛蝗に跨って次なる目的地を目指す。
「次は種子島にでも行こうかな」
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