5 届いた手紙

 あいつからの手紙を、汚してしまった。赤黒い線が走る封筒に、首を強く横に振る。机の上に置かれた封筒に伸ばした腕に走る傷は、路傍の草花を観察していた自分を馬鹿にした級友との殴り合いで付いたもの。

 これまでに何度も、保護者の都合で転校を繰り返しているが、草花に興味を持つ自分を笑わなかったのはあいつだけだ。色鮮やかな庭に隠れた古い家に住む友人の笑顔と、器用に色々なものを手作りしていた小さな指を思い出す。学校の荒れた花壇に咲いていた、この場所でしか育たない花を押し花にして手紙に同封するのはどうだろうか? 喜んでくれるだろうか。傷の痛みを忘れた手は、いつの間にか、手作りの小さな封筒の封を破っていた。

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