4 何度目かの手紙
また、引っ越したんだ。封筒の裏の見慣れぬ地名に肩を竦める。君の保護者は、本当に、転勤が多い。封を破り、中の手紙を広げると、ここでは咲かない花の匂いが鼻腔に広がった。住む場所は変わっても、草花を集める趣味は変わっていないようだ。
早速、返事を書かなくては。花の多い庭を抜け、台所の隅に置いてある自分用の文房具箱を手に取る。
君と仲良くなるきっかけになったあの花は、今年も咲いているよ。台所のテーブルの上に広げた便箋に小さな文字を刻む。次に手紙を書く時は、栞にした押し花も一緒に送るね。手紙を楽しみにしているであろう友人の、少し淋しげな笑顔が脳裏を過ると同時に、テーブルの上の便箋は不意の風に舞い上がった。
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