第27話 労災耳なし芳一

耳をもがれた直後は、(あー耳だけで済んだあああー)と芳一は思っていた。

しかししばらく経ち、ふと疑問が湧いてくる。


—これ、労災だし、坊主の過失じゃね?


大体勤務中の事故なんだから労災は当然だろう。さらに坊主のやつ、耳だけ書き忘れた、めんこめんごだと?てめえ股間のシークレットゾーンは念入りに経を書いてたくせに、耳に書き忘れるってどういう了見だよ?これから先ピアス開けらんないじゃねえか。 


ふつふつと怒りが湧き上がるも、そこは身分の重い時代の泣きどころ、僧侶に向かって一介の琵琶法師がごたごた抜かせる状況ではないのだ。芳一は怒りをこめて琵琶をかき鳴らした。以前よりもソウルとパンチの効いた芳一の琵琶が人々の心を感動させる。これが現代の和製ロックの発祥である(適当)。

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