BreaKing the World 2

渋谷かな

第1話 B2

「おはよう。」

 高校にやってきた渉。渉の通う渋谷高校。

「おはよう。渉。他には誰も来ていないよ。」

 田中格。渉のクラスメイト。

「高校まで進学できる奴は少ないんだから仕方がない。」

「怖い。弱肉強食だな。」

 魔物がいる時代の高校進学。小さいころから死なないで高校生になれる子供の数は少なかった。なぜなら通学路や自宅で襲われて死んでしまう子供が多かったからだ。

「でも俺たちは生き残ったんだ。俺たちは強い。」

「そうだね。僕たちは魔物に殺されずに生きてきたんだからね。」

 そして生き残った子供たちは魔物と戦えるぐらい強くなっているという証拠であった。

「渉、今日から魔物の討伐が許されるね。」

「ああ。俺は16才になるのを心待ちにしていた。」

 日本政府は魔物討伐許可を18才から人手不足のために16才に法改正した。

(愛の仇を討ってやる!)

 渉はそのためだけに生きてきたといっても過言ではない。

「それなら私も必要でしょ! このヒーラーの雅様が!」

 少女が現れる。伊藤雅。回復役である。

「格。どこで魔物と戦う?」

「代々木公園か、明治神宮がいいんじゃないかな? 学校からも近いし。」

「こらー! 男共! 私の話を聞け! 無視するな!」

 渉、格、雅は仲良しのクラスメイトだった。


「で、なんでキャットストリートなんだ?」

 放課後。渉たちは魔物征伐に出かけた。

「あれ? 知らないの。ここ、出るんだよ。」

「何が?」

「化け猫。」

 キャットだけに魔物は化け猫である。

「帰る。」

「まあまあ。店も多いし、何か掘り出し物もあるかもしれないよ。」

「私、原宿まで行って、パンケーキを食べて、タピオカを飲んで、カステラをお土産に買って帰りたいのよね。あなたたちは私の護衛よ。」

「おい!? 変なクエストをぶっこんでくるな!?」

 何かの目標は全てクエストに置き換えられる。

「お出ましみたいだ。」

「ニャア。」

 その時、渉たちは野良猫の大群に囲まれていた。 

「なんだ!? この数は!?」

「きっと化け猫の魔力が強くて、たくさん集まってきているんだよ。」

「さあ! あんたたち! 後ろから回復してあげるから、思いっきり戦いなさい!」

「あのな。」

 前衛は渉と格。後衛に雅。

「でやあー!」

「とう!」

「ニャア!」

 渉と格は大量の猫と戦う。少しずつ体力を奪われていく二人。

「傷を癒せ! 回復魔法! ヒール!」

 雅もサポートする。

「ニャア!」

 猫の爪攻撃。しかし渉にはダメージが与えられない。

「あれ? 渉。どうして猫の爪の傷跡が着かないの?」

「生まれつきの体質らしい。」

「卑怯だ!? 僕なんか傷だらけだよ!?」

 渉はダメージを受けない体質らしい。

「ほれほれ! おまえたち戦え! 私のパンケーキのために!」

 他人事な雅。

 ガプッ。その時、雅が後ろから現れた何かに上半身を丸ごと食べられた。

「雅!?」

「ニャア!」

 ここを縄張りとするボス、化け猫が現れる。

「そんあ!? 雅が食べられちゃった!?」

 取り乱す格。

「あいつは俺がやる。おまえは雑魚を足止めしてくれ。」

「渉!?」

 渉は化け猫に突進していく。

「ニャア!」

 化け猫の爪攻撃。しかし渉には爪は刺さらない。

「剣術スキル。10連。」

「ニャア!?」

 渉の剣の10連撃が化け猫に命中する。

「全てを焼き尽くせ! 火の魔法! ファイア!」

「ニャアアアアアアー!?」

 化け猫を燃やして倒す。

「ニャア!? ニャア。」

 野良猫たちはボスがやられると逃げていった。

「大丈夫か?」

「すごいね。渉は。まさに勇者様だ。」

「そんなことはない。ただの高校生さ。」

 確かに渉は強かった。

「どうする? 雅もいなくなったし、俺たちが原宿に行く理由も無くなったんだが。」

「そうだね。そこら辺で何か食べて体力を回復して帰ろうか。ゲームじゃないから僕たちは連戦してると死んじゃうしね。」

「それがいい。」

 俺たちは人が死ぬことに慣れ過ぎたのかもしれない。クラスメイトが食べられても平気で食事ができてしまう。

 つづく。

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