SSまとめ

椎名蓮月

九十九さん家のあやかし事情




 猫を拾ったのだそうだ。

「仔猫ってちっちゃいね~! 可愛い!」

 妹の声が聞こえる。何故か食卓でもぐもぐと唐揚げを食べている男を、勇気はじろりと横目で見た。

「おい」

「なんだ」

「どうして拾った猫を連れてきた?」

 勇気が問うと、やっと甲斐は視線を合わせた。そのしぐさ自体が、叱られた猫に見える。

「この家は広いから飼えるのではないかと思ったんだ」

「これ、生後一日くらいじゃないですか? 目もあいていないのでは」

 座敷も台所も戸が開けっぱなしで、離れてはいるが声が筒抜けだ。そんな見立てをしたのは、賢い末の弟だった。

「でもどうして一匹だけ……」

「親に置いていかれたんだろう」

 弟たちの声が口々に聞こえる。

「あかねちゃんが飼いたいといえば、お兄さんは渋っても最後には折れるだろう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る