真っ赤な顔した彼女は「すき焼きが食べたい」と言った
佐倉 ルイ
すき
好きな女の子に呼び出された。
「放課後体育館裏に来てほしい」
隣の席から授業中に届いた手紙だ。
今は放課後、俺はさっそく体育館裏に向かう。
体育館裏に呼び出されるなんてきっと告白だろう。
彼女とはそれなりに仲がいいし期待が膨らむ。
体育館裏に着くと彼女が真っ赤な顔をして立っていた。
俺はその顔で自分の憶測に確信がついた。
「よっ」
俺は彼女に軽く声をかける。
本当は自分から告白するつもりだったのだけれど彼女から告白されるのはすごく嬉しい。
ずっと隣で見てきたから。
「あ、あの来てくれてありがとう」
「それは全然!それでどうしたの?」
俺は平然を装ってそう聞いた。
内心ドキドキしている。
「えっとね、私...す、す」
うん、うん、あと1文字だ!
「すき焼きが食べたいの!」
「へ?」
彼女は真っ赤な顔をしてそう言った。
これはあれだよな、漫画とかでよくある好きが言えなくてってやつだよな。
本気ですき焼きが食べたいわけじゃないんだよな?
というかもうほぼ好きだって言ってるようなもんじゃないか!
好きは2文字ですき焼きは4文字だぞ?
焼き抜いてくれ!
「そう!私君とすき焼きが食べたいって思ってたんだよね〜」
彼女は誤魔化すようにそう手を頭に乗せながら少し裏返った声で言った。
彼女の嘘は分かりやすい。
というか今夏だぞ!?こんな暑い時にすき焼きなんて食べたくなるか?
もう俺から言ってしまおうか。
君のことが好きだと。
「そっか。じゃあ食べに行く?」
でも俺は彼女がどんな顔をするのか気になって少しからかってそう言ってしまった。
「え!行く!」
しかし彼女は満面の笑みで頷いた。
一緒にご飯に行ける約束ができてすごく嬉しそうに笑った。
う、かわいい。
かわいいんだけどそうじゃないだろう!?
告白しに来たんじゃないのか?
こうなったら
「ねぇすき焼きの焼き抜いて言ってみて」
俺はそう言った。
どうしても彼女の口からあの2文字を聞きたかったからだ。
「え?すき?」
彼女はなんで?って顔をしながら言った。
でも言った直後にその言葉の意味に理解してどんどん顔が真っ赤になっていく。
あぁ、やっぱり好きだなぁ。
さっきのすきに彼女の気持ちが入っていなかったとしても俺はもう満足だ。
君の口からその2文字を聞けたから。
「俺は君のことが好きだ。よかったら付き合ってくれないか?」
告白ってやっぱり勇気がいるんだな。
すごくドキドキする。
俺の顔はきっと君みたいに真っ赤だろう。
すると彼女は
「大好き!」
そう泣きながら俺に抱きついてきた。
あー今俺は世界一幸せだ。
真っ赤な顔した彼女は「すき焼きが食べたい」と言った 佐倉 ルイ @sashiku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます