勇者ギル。なげく。

「……そういえばだな、薬物所持は3年牢屋だぞ。俺もお前も。」


「へぇー。ん?今なんて?俺懲役3年って言ったの??」


おじさんは黙った。


「うそじゃん!!3年もあったらきっと他に勇者が魔王倒しちゃってるよ!!何とかしろ!おじさん!」


「出来たら1人で逃げとるわい!!」


おじさんはプリプリしてた。短気だな全く。


くそお、これで俺の勇者生活終わりかよ。せっかく魔王倒すって張り切ってたのに。


牢屋の窓から月が覗いてた。


 綺麗だけどちっとも感動しやしない。


・・・


頭も痛かったしとりあえず俺は寝た。あの薬さえ飲まなければこんな目には……!


隣の牢屋からおじさんのいびきが聞こえてきた。うるせえな。ぐおおおじゃないよ全く。



過去を悔やんでも仕方ないよな。



でも諦めらんないなぁ、、勇者。




数日前、王の使いが来て言ったんだ。


「お前には勇者になる権利がある!!勇者になるか!!」

って感じで言われた。急に。


それを聞いた母さんは大喜び。僕はニートだったから母さんは喜んで勇者を勧めてきた。食費浮くしな。いいけど別に。


俺もやりたい事が分からなくて、ずっと家事ばっかしてたし、勇者......!これだ!って感じがした。


母さんも案外普通に応援してくれてたし、俺も魔王倒す気満々だった。



それなのに……それなのに……




どうしてスカートめくっちゃうかなあ……




おれ……




 誰か……誰か助けてよ……




涙が溢れてきた。月が歪むのがわかった。



にゃーーん



突然猫の声がした。


俺は起き上がって周りを見渡した。


が、猫なんていなかった。


「空耳か??」


 俺は潤んだ目を擦った。


「にゃーー」


また聞こえた。檻の向こうからだ。僕は松明で揺れる檻の向こうをじっと見つめた。


すると、小柄な黒猫が1匹歩いてきて、僕の牢屋の前で止まった。赤い首輪をつけている。あ、顔を舐めてる!可愛いなあ。


 この辺で猫なんて珍しいな。


「やあ、猫ちゃん。こっちにおいで。」


この状況で癒しが欲しかった僕は、小声で猫を呼んだ。


おお!ゆっくり檻の中に入ってきた。嬉しい!


「どうしたんだい?道に迷ったのかい?」


猫は僕の前で座った。じーっと見つめられている。



「道に迷ったのはお前だろう勇者よ。」


急に声がした。ちょっと可愛らしい声だった


「み、道に迷ってなんかねえよ!だ、誰だ!」


「私だ。目の前にいる。」


黒猫を見ると、じーっと顔をガン見されていた。


「うわ!!!猫が喋ったああああ!!」

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