VR美少女育成ゲーム「アルマジ・ロンリネス」プレイ日記

乃木重獏久

VR美少女育成ゲーム「アルマジ・ロンリネス」プレイ日記

【VR機器、買いました】  8月19日   


 先日購入宣言したVR《ヴァーチャルリアリティ》機器を、本日ついに買ってしまいました。まあ、正確には先週の金曜日にネットで注文したものが、今日届いたっていう訳なんですけどね。


 早速、梱包を解いてみると、ネットのレビューや解説にあるように、きれいにまとまって化粧箱に各機器が収まっています。耐衝撃性も考慮された梱包材と箱は、設置後の簡易収納箱としても使えるよう設計されており、モデルチェンジを重ねたメーカーの習熟度の高まりを感じます。


 ☒ 画像68-01.jpg (想像したよりもコンパクトな箱)


 さて、センサーユニットを和室の四隅の長押に取り付けました。僕が今住んでいる、安い家賃だけが取り柄の、1970年代に建てられたという1K風呂付き木造アパートは、入居したときから柱や長押に釘やネジが打ち込まれていたので、何も気兼ねすることなくセンサーユニットをがっちりネジ止め固定します。


 先月の記事にも書いたとおり、このアパートは来年には取り壊されるため、年末の退去時に文句を言われることもないでしょう。それに2年前に入居したときも、畳こそはきれいでしたが、押し入れの奥に剥がしかけの破れたお札が残っていたり、壁に染みがあったりと傷み放題だったので、仮に取り壊されないとしても、文句を言われる筋合いはありませんよね、大家さん。


 ☒ 画像68-02.jpg (長押に取り付けたセンサーユニット)


 4個のセンサーユニットを取り付けたら、無線ユニットとPCを接続します。と、ここで問題発生。ていうか、想定していたことなんですけどね。僕の使っているノートパソコンは2年前に買ったエントリーモデル。


 ☒ 画像68-03.jpg (ちょっと古めのノートパソコン) 


 OSこそ新しいものに(強制的に)変わっているものの、スペックはかなり低いです。まあ、大学のレポートとブログ作成及びネット徘徊専用機ですので、普段は全く困りはしませんが、VR機器に接続するには心許ないどころか、必須のHDMI端子でさえ搭載されていない始末。もしかしたら、という淡い期待はもろくも崩れ去りました。


 という訳で、本日の作業はこれでおしまいです。VR用の高性能PCは、月末のバイト代が入ってから買うことになるので、それまでお預けです。先にPCの算段をしてから買えって? 全くもって、ごもっとも。ごもっともですが、某VR機器みたいに売り切れ続出で入手できなくなったら嫌じゃないですか。エライ人も言っています、欲しいときが買い時と。でも、ネットを見る限り在庫はだぶついているみたい。僕の先見の明のなさって一体 (泣)。


 それじゃ、また明日です。




【VR設定に悪戦苦闘】  8月20日


 昨日届いたVR機器。早く使いたい思いで胸が張り裂けそうな中、ネットを見てPCを検討してみますが、噂通りお高うございますな。やはり20万円は下らないようです。経済的な問題から、このままでは体験するまで2ヶ月以上かかるのでは、と不安になっていたところ、興味深い商品を見つけました。「USB-HDMI変換アダプター」なる商品。


 ☒ 画像69-01.jpg (メーカーサイトの画像転載。まずかったらご連絡ください)


 ノートパソコンのUSB端子に差し込むだけで、必要な信号をHDMI信号に変換してくれるらしい。約6千円程度。これがあれば、僕のノートパソコンにVR機器を“接続”することだけはできるようで、試してみる価値はありそう。もし無理でも(いや、絶対無理だろうけど)、高性能PCと一緒に買う予定のディスプレイに、このノートパソコンの画像を映し出すのに使えそうでお得かも。それが意味のある行為かどうかは置いておこう。


 とはいえ、これだけのために6千円近くを投資すべきなのかどうかを迷いながら、家電量販店に行くと、なかなか商品が見つかりません。店員に聞くとあまり売れない商品らしく、取り扱いをやめたとのこと。残念に思いながらも、6千円を無駄にしなくて良かったと思っていたら、ワゴンセールの商品に見つけてしまいました。何だよ、あるじゃん店員。


 ☒ 画像69-02.jpg (ここのワゴンセールは、よく掘り出し物があるので重宝してます)


 よく見ると、メーカーは聞いたことのない会社。もちろんメイド・イン・アナイーク。値段を見ると破格の980円。迷わず、貯めたポイントでお買い上げ~。ポイントで精算したから無料でしたって、よく通販レビューなんかで書いている人を見るけど、それって無料じゃないよね、と考えながら、わくわく帰宅。

 

 ☒ 画像69-03.jpg (購入した変換アダプター)


 早速開封し、アダプターを介してVR無線ユニットを接続してPCを立ち上げると……。いつも通りの立ち上がり画面に続いて、新しいデバイスのセットアップウィンドウが開きます。


 と言うわけでセットアップを始めますが、流れはめんどくさいので省略します。セットアップの詳しい流れを期待して検索されてきた方、ごめんなさい。よそ様の詳しいページをご参考くださいね。

 そして、セットアップだけはサクサクと進み、VR機器も無事認識されました。やったね!


 ☒ 画像69-04.jpg (VR機器とノートパソコン)


 ここからは、ヘッドセットを被って進めるらしい。ゴムバンドの長さを調節し、おもむろに被ると……。何も見えません。あれー、説明書ではチュートリアルの進行メニューが映っているはずなんですけど……。真夏の真っ昼間なのに、辺りは真っ暗。どこか隙間から光が入ってくるかと思っていたけど、全くの闇。これは素晴らしい。遮光性の高さは没入感に比例するしね。


 しかし、何も見えないままではどうにもこうにも。で、ヘッドセットを脱ぐ。

 ノートパソコンのディスプレイには、エラーメッセージが表示されていました。


 ☒ 画像69-05.jpg (こんなエラーメッセージが。残念)


 どうやら、パソコンのグラフィック能力が足りないということらしい。言われんでも分かっとるわい、と思いながらも、未練がましく再起動して、一連の作業を何回か繰り返す。


 はい、残念でした。980円が無駄になりました。6千円じゃなくって良かったわ、と思いつつ、980円あれば牛丼を二杯食べられた上におつりが来ると考えると……。


 もう寝ます、おやすみなさい。




【アルマジ・ロンリネスは神ゲー】  8月21日


 今日はバイトもなく、夏休み中の学生の身分を、エアコンの効いた部屋の寝床で堪能していると、玄関ベルのチャイムが鳴った。宅配便でした。


 予約していたVR美少女育成ゲーム「アルマジ・ロンリネス」のゲームディスクが届きました。紳士の皆さんはよくご存じですよね。


 ☒ 画像70-01.jpg (「アルマジ・ロンリネス」のパッケージ) 


 パッケージ裏には“倒産した建材メーカーの倉庫で見つけた不思議なドアを通って、主人公(あなた)は異世界を訪れ、理想の女性たちに出会います。彼女たちとともに体験する様々なイベントをお楽しみください”とあります。つまり、自分好みにデザインした美少女を思いのままに育て上げ、その美少女とVR空間上でいろんなイベントをともに体験したり、イチャイチャすることだけが目的のゲームです!


 VRだけでなく通常の2D画像モードによるプレイも可能で、高性能PCを購入するまでの間、僕のロートルノートパソコンでも遊べるのが味噌。


 ☒ 画像70-02.jpg (ゲームディスクとノートパソコン)


 今回購入したものは、キャラクターデザイン作成と標準育成システム、3本ばかりのイベントシナリオが含まれた、全年齢対象の基本ディスクですが、今後続々と発売される追加育成システムやイベントディスクの大半は、成人指定となるらしいです。僕はお子ちゃまなので、よく意味がわかりませんが……。予約殺到で品切れ中のこのゲーム。やはり僕には先見の明があるようだ。


 理想の美少女との仮想空間での出会いを夢見ながら、高性能PC購入まで2ヶ月近く過ごすのは辛いので、忍耐力のない僕は、通常のPCでも動くというこのゲームを遊ぶため、ノートパソコンに早速インストールします。


 ☒ 画像70-03.jpg (インストール画面)

 

 小一時間かかってインストールが完了しました。何故か2回もインストール中にエラーが出て、再起動を余儀なくされましたが、3回目で無事完了しました。デスクトップのアイコンをクリックすると、ソフトが立ち上がります。非常にきれいなグラフィックですね。タイトル画面のメニューコマンドにある“VRモード”の文字が虚しいですが……。


 ☒ 画像70-04.jpg (タイトル画面。“VRモード”コマンドが哀しい)


 とりあえずお試しで、サクッと“2Dモード”のチュートリアルシナリオをプレイしてみます。なになに? まずキャラクターを作成せよと。まあ、今はお試しなので、既存のプリセットキャラクターを使ってみましょう。どれもアニメ調のかわいい娘ばかりです。おっ、金髪エルフがいますよ! 「アマーニャ」ちゃんですか、早速選んでみましょう。もちろん名前は変更可能ですが、いまはそのままで。声は善通寺ハルカさんですね。マイナーながらも結構好きな声優さんですが、追加予定の大人ディスクでも声をあてるんですよね、いいんでしょうか? ありがとうございます! 必ず買います!!


 ☒ 画像70-05.jpg (アマーニャちゃん。エルフ萌えにはたまりません!)


 ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ファンタジックな世界で出会うアマーニャちゃんの仕草がかわいすぎる。どんどん先に進んでしまいたいところですが、こんなに素晴らしいゲームは、二次元ではなくVRで衝撃的に味わいたいので、早々と終了することにしました。泣く泣くタイトル画面に戻ります。


 タイトル画面では、“VRモード”コマンドが明滅しています。おすすめモードと言いたいのでしょうか。そりゃそうだ。


 選べるもんなら選びたいわ、と思いながら、なんとなくクリックすると……。奇跡が起きました! ノートパソコンのディスプレイ上には、動画サイトなどでよく目にする、VR独特の左右に分割された、歪んだ画像が映っていたのです。VR機器のセットアップが暗礁に乗り上げたまま完了していないにもかかわらず! 


 まさかと思いながらヘッドセットを被ると……。おめでとうございます。初VR体験です。僕の部屋が、倒産したという建材メーカーの事務所の一室になっています。宙にメニューが浮かんでいて、VRグローブをはめた手でタッチすると、メニューコマンドを選択できるようです。


 無線式ヘッドセットやグローブは有線式と違って、接続コードの呪縛に囚われることなく、アパートの六畳間を、そのままVR空間として快適に歩けます。ただ、音声については少し歪んで聞こえることがありましたが、気になるほどではありません。


 いまは、ヘッドセットを外してこの文章を書いているところですが、このあと、あちらの世界へ旅立ってきます。今日はこれまで。ごきげんよう。そして、これからよろしく、新世界の美少女たち。


 ☒ 画像70-06.jpg (ヘッドセットとグローブ)




【ユリコちゃん、サイコー!】  8月24日 


 二日間も更新をサボっていました。申し訳ありません。


 あれからずっと「アルマジ・ロンリネス」ばかりしています。二日間ずっとキャラクター作成モードでいろいろ作成してみましたが、ピンとくる娘がなかなか作れません。いい加減もどかしかったので、初回プレイと同様に、メーカーがプリセットしているデザインで遊んでみることにしました。


 当然、前回遊んだエルフのアマーニャちゃんを選ぼうと、リストをスクロール。その時、僕の心を鷲掴みにする女性が一人、リストの一番下に現れたのです。「ユリコ」ちゃんです。あまりアニメアニメしていない彼女に一目惚れ。でも、初回プレイ時にはいなかったよね。いれば絶対選んでたよ。もしかしたら、VRモード専用キャラなのかも。


 そして、迷わずユリコちゃんを選びます。ごめんね、アマーニャちゃん、またいつか……。


 ※何故かユリコちゃんの画像をキャプチャできませんでした。


 キャラクターに関しては、自分で作成している方がほとんどでしょうが、メーカープリセットを使用している方も少なくはないでしょう。でも、プリセットキャラの画像を検索しても、ユリコちゃんの画像が全くヒットしないのですが、皆さんあまりお好みじゃないのかしらん? 僕はダントツだと思うけど。長い黒髪に、憂いを含んだ伏せがちな切れ長の目。美しく白い肌の小さな顔。胸は若干控えめだけど、キャラクター作成モードでいくらでも増量できるしね。と思ったら、何故か彼女だけは追加エディットができない。ちょっと残念だけど、彼女の魅力の前には些細な話です。


 そしてアクセサリーとして、首に長めの荒縄が結われている。こ、これは、きたる大人ディスクでのワンワンお散歩のためのデザインですか? ただの首輪とリードじゃない点がポイント高し! そして肝心の服装は、婦警さんです!! 今風のタイプではなく、昭和の刑事ドラマに出てくるような、ちょっと野暮ったいデザインの制服を身にまとったユリコちゃん。逮捕してください、マジでおねがいします。


 ☒ 画像71-01.jpg (昔の警官の制服。これを見るとユリコちゃんの制服は夏用のようです)


 ただ、不思議なのは、他のキャラクターは姓名とも好きに変更できるのに、彼女は姓が入力できず、名前も“ユリコ”もしくは“ゆりこ”以外は選べなくなっている点。これってゲームデザイナーか誰かの好みでいれられた特別キャラクターってことなんですかね。どちらにせよGJです! でも、名前は変えたかったかな……。


 さて、いよいよご対面です。実際に僕の目の前に、現実に存在するかのように、ユリコちゃんが現れました。思ったよりも小柄です。身長160センチもなさそうで、170センチの僕の顔を優しい表情で見上げてくれます。また時折、はにかんだような表情で、ちらちらと僕を見る潤んだ目に、もうメロメロです。


 自己紹介では『好きな実験はフーコーの振り子です。いつか一緒にしましょうね』だって。不思議ちゃんの一面もあるようです。


 彼女曰く、『2年前からあなたを見ていました。悲しいことに、あなたは私に気付いてくれなかった。でも、やっと私を見てくれたんですね』だと。主人公、どんだけ鈍いんじゃ。

 

 そしていきなり『これからずっと、あなたについていきます』だって! うれしーっ!! でも変だなぁ、恋人同士になるまでは、結構長いシナリオをクリアしないといけないと、事前情報にはあったんだけど。もしかすると、ユリコちゃんシナリオには、これから二人の仲を裂こうとする、波瀾万丈なイベントが待ち受けているんでしょうか? 


 婦警さんの制服がとても似合っていますが、他にも浴衣やワンピースなどがあるので、望むなら言えとのこと。首の荒縄は外せないそうですが、全く問題ありません。


 しかし、すごい人工知能ですね。全く違和感なく会話が成立し、本当に感情を備えたかに見える存在が、目の前にいるなんて。


 でも、アパートの誰もいない一室で、ヘッドセットをつけた男が独り言を呟きながら、怪しげな動きをとっている光景を想像すると、一瞬、自己嫌悪に陥りそうです。絶対他人には見られてはいけない光景ですので、早速、立て付けの悪い木の雨戸を閉めました。


 雨戸を閉めると、部屋の中が暗くなりますが、照明をつけるまでもありません。ディスプレイが放つ光で十分です。だって、ヘッドセットしてさえいれば、現実世界がどうであろうと関係ないのですから。


 あと、少し気になることが。ソフトのバグなんでしょうか、タイトル画面やキャラクター作成モードで、ヒソヒソと小さく声が聞こえるのです。あまりにも小さいので、内容までは聞き取れませんが、なぜか少し悲しげに聞こえます。たぶん、そういうシーンのキャラクターの台詞がランダムに流れているように思うのですが、少し耳障りかな。“2Dモード”の時は聞こえなかったけど、ヘッドセットのヘッドホンだと聞こえるのでしょうか?


 でもなぜか、ユリコちゃんが登場する画面では、その現象は発生しないので、気にしないことにしました。とはいえ、メーカーさん、修正アップデートをよろしくお願いします。


 それではまた。次の更新も数日後かも。それまでごきげんよう。




【変なことはコメントしないでください!】  8月30日


 なんか、おかしい人が多いですね。先日ユリコちゃんのことを記事にしましたが、それ以降、そんなキャラは存在しないとか、そんなPCスペックで「アルマジ・ロンリネス(VR)」を起動できるわけがないとか、嘘記事やめろとかいうコメントが、結構来ています。僕は別に嘘をついてなんかいません。ただ自分の感想を記事にしているだけ。


 仮に僕ごとき市井の小物がフェイクニュースを流したところで、どうなると言うんです? それもギャルゲーのことなんかで。そんなに食ってかかることでもないでしょ? 


 他にもユリコちゃんの画像をアップしろ、というご意見も多数頂きました。いや、これは僕もやりたいのですが、何故かキャプチャができません。他のキャラならできるのに。メーカー側の対策でしょうか。これでは、また嘘だと言われかねない。いやはや、困ったものです。


 さて、おかしな人達は放っておいて、今日もユリコちゃんについてご報告。


 キャラをユリコちゃんに決めて以来、一週間近く食事もろくにとらないで「アルマジ・ロンリネス」の世界に入り浸っています。もう、他のVRゲームを遊ぶために、高性能PCを買う気が起こりません。今の動作環境で十分「アルマジ・ロンリネス」が動くんですから。

 

 ユリコちゃんと毎日イチャラブです。これで大人用ディスクをインストールした日には、一体どうなることやら。そのことをユリコちゃんを前に考えていると、いたずらっぽい表情で僕を見上げながら『なに変なこと考えているの?』だって。アンタはエスパーか! でも、かわえーのぅ。


 声も最高。控えめで大人しめであるにもかかわらず、凜とした芯のある声。アニメでもギャルゲーでも聞いたことがない声です。声優さんは誰なんでしょうか? 非常に気になって夜も眠れないので、毎晩ユリコちゃんに添い寝してもらっています。


 なぜか彼女のシナリオは、ファンタジーな異世界が舞台ではなく、昭和四、五十年代の東京です。残念ながら、平成生まれの僕にはノスタルジーを感じることはできません。しかし、ゲーム内のマイルームとして使う彼女の部屋は、偶然にも僕のアパートと全く同じ間取りなので、没入感がハンパない! 


 僕の部屋とは違って、風呂もシャワーもないけれど、夕暮れ時の豆腐屋のラッパを聞きながら、裏通りの脇を流れるドブ川の匂いが身体に纏わりつくなかを、浴衣姿のユリコちゃんと手をつなぎながら一緒に銭湯まで歩くのが、今まで経験したことがないくらいに幸せです。


 彼女と手をつないだり、胸に引き寄せて頭を撫でてあげると、彼女の細い指や、さらさらとした髪の感触が心地よい。アパートの、僕以外誰もいない空間のはずなのに、そこに彼女がいるかのごとく、華奢な身体を抱きしめている感覚がする。これが世に言う“クロスモーダル現象”ってヤツなのか? うーん、科学って、人間って凄すぎる! 彼女のうなじから漂う、ほのかな石けんの香りが鼻腔をくすぐると、もうリアルなんていらないと本気で思う。いや、こっちがリアルなんだ。僕はリア充なのだ!

 



【ユリコは実在する!】  9月7日


 ユリコは実在します。誰がなんて言おうと実在します。そして僕を愛してくれています。僕もまた然り。それは何人たりとも否定することはできません。コメント欄には、どうぞ好き勝手にお書きください。僕に嫉妬する人がそれだけ多いのだと思うと、逆に気持ちよくなってきました。


 ところで、このゲームメーカーの技術者って、有能すぎませんか? ウチのユリコに教えてもらわなかったら、彼女の部屋のPCで、WEB検索や文書作成ができるなんて気付かないところですよ。宣伝する気ないのかな? このブログも、そのゲーム内PCで作成してアップしています。ノートパソコンが置いてある昭和時代の部屋の光景が、ちょっと不思議な感じですが、よく考えると僕の部屋も、液晶テレビとエアコン以外は、ほとんど変わりませんね。

  

 押し入れの中にデジカメがあったので(昭和なのに)、ユリコを撮影したデータをキャプチャしたら、やっと成功しました。これで嘘じゃないと判るでしょう? 

 それにしても、ユリコが他のヤツらの前に現れないのって、僕が特別に選ばれたからなんだ。ユリコもそう言っていたから間違いない。


 ☒ 画像73-01.jpg (僕だけ天使ユリコちゃん)


 そして、ユリコの作る料理も絶品だ。この世界の食べ物は、実際に食べられるんだ。これもユリコに教えられて、びっくりだった。味も申し分なく、満腹感も得られる。水も飲めるし喉も渇かない。


 もちろん、実際に飲食しているわけではないことは判っているから、泣く泣く自室に戻ってきて、ビタミン剤と水を摂っているけどね。でも、僕の部屋は彼女の部屋と同じ間取りだから、現実に戻っても喪失感はない。彼女がちょっと買い物に出ているような感覚だ。彼女が生活している気配も感じられるし、部屋中に漂う彼女の心地よい香りも変わりない。


 でも、すごい技術だよなぁ、VR。五感すべてを再現できるなんて。現代テクノロジー万歳!! できることなら栄養剤の点滴だけ打ち続けて、「アルマジ・ロンリネス」の世界からもう出たくない。


 そして、今夜はユリコとレコード鑑賞だ。今までは昭和歌謡なんて興味なかったけど、結構いいもんですね。


 ※本日の予定曲目 (レコードジャケットって初めて見ました。CDやDVDよりも所有感が満たされそうな感じ)


 ☒ 画像4256-01.jpg (もう一度逢いたい)


 ☒ 画像4256-02.jpg (上を向いて歩こう)


 ☒ 画像4256-03.jpg (22才の別れ)


 ☒ 画像4256-04.jpg (学生時代)


 ☒ 画像4256-05.jpg (三百六十五歩のマーチ)


 ☒ 画像4256-06.jpg (中の島ブルース)


 ☒ 画像4540-01.jpg (異邦人)




【皆さん、さようなら】  9月14日


 嫉妬って醜いもんですね。ユリコの画像をアップした途端、気味の悪いものを載せるなと言う、悪意あるコメントが山のように来た。一体あの画像のどこが首吊り死体なんだ! 


 俺のことを悪く言うのは構わないが、ユリコのことを愚弄するのは許せない。彼女は何も悪くないのに、嫉妬に狂うヤツらの生け贄にされるなんて許されることじゃない。彼女はいい娘だから、優しく、俺に気にするなと言ってくれるのが泣けてくる。


 それから、気に入らないことがもう一つ。“クロスモーダル現象“のことを先日記事に書いたが、これについても的外れな指摘が。


 俺はユリコの存在を五感で感じているし、この世界で食事もできる。彼女がすぐ側に立つと、畳が少し沈み込む感覚がするし、優しい体温も感じるのだ。彼女のかわいらしく形の整った小さな爪。唇を交わしたときの、瑞々しく柔らかな感触と切なげな吐息。ああ、すべてが愛おしい。


 俺の部屋の、歩くと必ず荒床が軋む畳を彼女が歩けば、ちゃんとギシギシ音がするし、俺が用を足そうとヘッドセットを外してトイレに向かうと、暗い部屋の隅にちょこんと座って、笑顔で見送ってくれる。


 実際に感じることができているのに、”クロスモーダル現象”では、そこまでのことは感じられないというコメントが多数。そもそも「アルマジ・ロンリネス」に食事シーンなんてないという、関係者を騙る不届き者さえ現れる始末。


 VRグローブには触覚フィードバックの機能がないので、手をつないだ感触を体感できるわけがない、とか、セリフ選択型のシナリオ進行システムなので、そもそもキャラクターと会話なんてできない、という知ったかぶりなコメントには、もう突っ込む気力さえ湧かない。


 くどいようだが、実際に俺は体感している。もう、いちいち説明するのも煩わしい。ユリコもブログはあまり好きじゃないと言うので、本日をもって本ブログの更新を取りやめることにした。本当は閉鎖するつもりだったが、ユリコとの出会いの記録は、公開しておくべきだと判断したまでだ。


 お読み頂いておりました“良識派”の皆さん、今までどうもありがとうございました。 


 これからは愛するユリコと二人、寄り添っていきます。それではすべてのひとにさようなら。

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