第7話 皆が魔法が使える世界の少女はすべからく魔法少女

「質問追加。私の正体がばれたらなんか不味いことってある?」

(無許可魔法行使と誤認される恐れがあるが、それ以外は問題ない)


 魔法少女ものにありがちな、正体ばれたら力を失うとか、そういう系統のペナルティはないようだ。

 それを聞いた私はベッドの上で布団を被ったまま起き上がった。


「リズお姉ちゃん。大切なお話があります」

「うん。聞くよ。大丈夫。私もあなたくらいの頃には目に見えないお友達とかいたから」

「違います、その生暖かい視線やめてください。リズお姉ちゃんは私の供述調書? は読んでるんですよね?」

「そりゃま、それも仕事だからね。自称、異世界で死んで神様に送られてきた火魔法使いの女の子。不思議なことに、陽菜はあの辺りや周辺公共機関のカメラには写ってなかったし、あの場所にどういうルートで現れたのかもまるで分かっていないわ。偽造不可能とされるシルトカードも奇妙な作られ方をしてたわね。けど、だからって、異世界少女を素直に信じるくらいなら、陽菜がどこかの国のスパイだとか言う方がまだ説得力があるわよね。あ、でも、信じないわけじゃないのよ? 色んな可能性を考えるのも私の仕事だから……まあ、本職はまた別にあるんだけどね」


 なるほど。スパイか。

 確かにその方が理解しやすいし、殺傷能力のある魔法を使える頭のおかしい未成年の女の子、なんて訳が分からない相手よりも対処もしやすいだろう。

 でも、その方向性で処理されると投獄か拷問か、いずれにせよ、あまり嬉しい状態にはならなさそうだ。


「あのですね。実は、その神様というのが酷いヤツでして……」


 警察署ではそこまで細かく話さなかったが、私は神様とのやりとりを思い出せる限り話した。


「その、陽菜、ひとつ質問していい? 魔法少女っていう概念がよく分からないんだけど……陽菜は魔法を使える少女だから、元々魔法少女よね。でもそういう意味じゃなさそうだし」


 皆が魔法が使える世界の少女はすべからく魔法少女。言われてみればその通り。

 リズお姉ちゃんの言葉に、私はなるほどと頷いた。

 そして少し考えをまとめてから返事をした。


「ええとですね。私の世界には魔法がなくて、かわりに一時期、物質の特性をとことん突き詰める錬金術っていうのが大流行したんです。で、そこで得られた物体の特性や反応などの知見から、化学や科学というものを発達させて、それを基礎にした文明を築いていました。物理現象をベースにした機械とか作って、それを使って生活してたんです」

「錬金術なら私たちもやってるけど……でも魔法がない世界なら、研究の方向性は違うんでしょうね」

「卑金属から金を作るんだって、当時の貴族から賤民までが金目当てで熱狂しました。そんな中、色々な薬品や合金が、ほとんど総当たりに近い勢いで作られて、研究されたんです。結局、当時の錬金術で金は作れませんでしたけど、そこで得られた知識は万金にも値するものでした……まあ、そんなわけで、私たちは科学を基礎にした物質文明を育て上げて繁栄しました。その過程で、私たちの世界では魔法はありえないもの、と位置づけられ、物語の中でのみ存在する概念となりました。そんな物語の中に、力はないけど愛と勇気と希望に満ちあふれた女の子が、魔法の力を得て、困ってる人を助けたり、悪い奴をやっつける、なんてジャンルが生まれ、そういうのを魔法少女もの、と分類していたんです」


 上手く説明できているだろうか?

 私の知識なんてたかが知れてるけど、これでも最高学府に通っていたんだから、最低限の常識はあるはずで、今必要なのは、その常識を客観的に説明することだ。

 リズお姉ちゃんは、私の話に興味深そうに耳を傾け、時折質問をしていた。


「なるほど……で、その、科学ってのは何が出来るの?」

「色々ですけど……科学発展の流れから説明すると、まず水力や風力かな? 自然の中にある力を利用するんです。水が流れる力で水車を回し、風の力で風車を回して、その力で小麦を粉にしたり、大きな鋸を動かして材木から板を切り出したりが始まりです。この、回転する動きからエネルギーを取り出すというのは、その後もずっと続きます。で、次が蒸気機関。石炭なんかで水を加熱して蒸気にして、蒸気の力で色々な物を動かしたりですね。ほら、水って蒸発すると体積が1700倍くらいになるじゃないですか。その膨張時の力を使ってピストンを動かして、膨張する力を回転する力に変換し、車輪を動かす蒸気機関車とか、蒸気船とかが生まれました。あと工場なんかの動力にも使われました。風車は風が吹かないと使えませんけど、蒸気機関なら好きなときに力を得られますし、得られる力は風車や水車よりもずっと大きな物になるから、蒸気機関は世界を席巻しました。その結果、石炭の煤煙で街は大変なことになったらしいですけどね。で、もう少し後になると石油から精製した燃料ガソリンをつかった内燃機関が生まれました。ええと、ガソリンはとても爆発しやすいので、エンジンの中で小爆発を繰り返させて、それでピストンを動かすんですね。蒸気機関よりも小型かつ高出力なので、私の生まれる少し前までは大抵の自動車はこれで動いてたそうです」

「ガソリンの作り方は分かる?」

「いえ、私の専門は化学系そっち方面じゃなかったので……蒸気機関の理屈くらいなら頑張れば思い出せるでしょうけど。で、内燃機関の後に出てきたのがモーター制御の自動車とかですね。雷ありますよね、あれと同じような力を生み出して、それを使って色々やってました。正直、このあたりになるとよく分かりませんけど、リチウムイオンとか、水素とかマグネシウムとかの電池が主流でしたね」


 このあたりからは少し怪しくなってくる。

 私がきちんと理解しているのは、学校の授業で実験をしたレベルまでだ。

 それ以降は知識としては学んだけど、実践していないので、正直、曖昧だ。


「雷撃の魔法? ……いえ、魔法はないと言ってたわね?」

「銅線を巻いたコイルと永久磁石で、発電機という雷の親戚である電気を生み出す道具を作れるんです。最初の内は水車や蒸気の力でそれを回転させて電気を作ってたそうです。ちなみに最新の原子炉も究極的にはお湯を沸かして発電機を回してますね。あと、回転以外だと、太陽光から電気を生み出したりもしてましたけど、詳細は分かりません。あ、あとレモンと銅の針金、亜鉛の針金でも電気は起こせましたね……うろ覚えですけど」

「……魔法を基礎としない……世界? 随分とお話が大きくなってきたわね……あ、ちなみに、その世界で人類は、高度何メートルまで上昇していたのかしら?」

「はい?」


 どういう意味だろうか、と私が考え込むと、リズお姉ちゃんは苦笑いしながら聞き直した。


「いや飛翔魔法……飛翔機械? そういうものはなかったの? あったとしたら、それらはどのくらいの高さまで上昇できたのかなって」

「ああ、飛行機ですね。ええとジャンボなんかは確か巡航高度が10キロとかだったかな?」

「10キロ……こっちの限界高度よりもかなり高いわね」

「あ、飛ぶ機械の最高高度とかだと、ボイジャーとかになるのかな?」

「ボイジャー?」

「ええ、惑星探査機ボイジャー。太陽系内の探査が終わって、そのまま太陽系外に飛び出して……確か、私の記憶にあるのだと、かなり前に地球からの距離は222億キロを越えてたはず。星の海、宇宙の果てを目指して飛び続けてます。まあ、多分もう自力で加速や減速はできないんでしょうけど」


 私の言葉を聞き、リズお姉ちゃんは深い溜息を漏らした。


「なるほど。興味深いわ……魔法がない世界。魔法がないから、物理現象で動く機械を用いた文明ね。聞いた範囲では筋は通っているわね。なるほど。それなら確かに実現可能かも」

「何がでしょうか?」

「私の本職を言ってなかったわね。私は大気圏外に出る方法の研究をしているの」

「はあ」

「でもね、高度7キロほどから上には魔素がほとんどないの。だから人類は……魔法を基礎に文明を築いてきた私たちには、それより上に上がる方法がほとんどないの」


 リズお姉ちゃんは、現在行なわれている研究について説明をしてくれた。

 簡単に言えば、魔法で空を飛ぶ機械は存在するが、上昇するほど大気中の魔素濃度が薄くなるため、一定高度から上に上がる方法は見つかっていないとのこと。で、現在は如何に魔素消費を抑えるか、如何に魔素を抱えて飛ぶか、というふたつの方向で研究がされているのだという。

 地球だと、高高度を飛行機で飛ぶための問題は究極的には「空気が薄い」に集約されていたけど、こちらでは「魔素が薄い」というのが問題になるとは、面白いものだと思う。


 そんなことを考えながらも、それから私は宇宙開発について知っていることを、リズお姉ちゃんの興味の赴くままに質問された。


「燃焼の反動で打ち上げるって言うのは面白いわね。その燃焼を制御するために、燃料は固体よりも液体の方が流体として扱えるから制御しやすいというのも理解できるわ。あと、上昇中の慣性力に耐えるためにパイロットが体を鍛えるというのも納得ね。飛翔魔法でも急激な機動をすると術者が意識を失うこともあるわけだし……うん、聞いた範囲では、陽菜の説明に大きな矛盾は見られないわね……ということは、異世界だとかも事実の可能性が高くなってくるのかしら?」

「事実です。あと、魔法少女から脱線しちゃいましたけど、私は神様から魔法少女になる方法を与えられてるんです」

「魔法少女というのは『なる』ものなの? 何か変化するのかしら?」

「まあ、物語にありがちな記号化ですね。衣装が変化して武器が使えるようになるだけですけど……ちょっとやってみますね。あ、スッゴイ光るので、私を直視しないで下さいね」

「光るの? おかしなシステムね、分かったわ。陽菜からしっかり目を逸らしておくわ」


 リズお姉ちゃんが私から目を逸らして壁の方に顔を向けたのを確認し、私はコンパクトを取り出し、蓋を開けた。


「へぇ、道具を使うんだ。後で見せて貰える?」

「分かりましたから、ちゃんと目を逸らしてて下さい。本当に危ないんですから」

「はいはい」


 水晶に触れ。


武装アームド


 と囁くように言葉を発した直後。

 私の体がふわりと浮かび上がり、室内を光が蹂躙した。

 たまたま白い壁の方に顔を向けていた私は、反射した光で視界の中央部分に黒だか紫だかの模様がチカチカして、それはリズお姉ちゃんも同じみたいで、目を押さえていた。


「なるほど……これは直視してなくても目が眩むわね」

「大丈夫ですか?」

「ええ……壁で反射した光だけでこんなに残像が残るんじゃ、直視したら残像どころじゃないわね……で、その姿が魔法少女? 髪の色も、顔の感じも変わってるわ……目の前で変わったのでなければ、陽菜だと分からなかったでしょうね……服装は、黒いわね。あと、なんでそんなにスカート短いの?」


 リズお姉ちゃんは不思議そうな表情で首を傾げる。

 セーラー服が女子の制服なのは日本の話であって、海外や、まして異世界ではそんな記号には意味がない。もしもこっちの海軍でも集音器として水兵服の襟セーラーカラーが使われているなら、水兵さんセーラーの服と思われてる可能性すらある。

 恐らくは、ただ純粋にファッションとしてどうなのか、というリズお姉ちゃんの視線が私の全身を這い回る。

 いや、リズお姉ちゃんだってそんなファッションセンスはないように見えるんだけどなぁ。さすがに寝る時間までカラフルな白衣は着ていないみたいだけど。


「ちょっと触るわね……ええと? 布地は伸縮性のある素材なのね。触った感じは合成素材? 何か魔法付与エンチャントされてるっぽいけど、中身までは分からないわね……水着じゃないんだから、ここまで体に密着させるのはどうかと思うんだけど。ええと? で、武器も出せるんだっけ?」

「うん」

「出してみて」

「ええと……武器だけ出すのは念じれば良いんだっけ?」


 私の独り言に、忘れかけていた声が反応した。


(そうだ。変身の時と同じキーワードを唱えつつ念じるのだ。コンパクトに触れていなくてもできるぞ)

「あ、リズお姉ちゃん。今のが管理精霊さんです」

「今のって? え、精霊?」


 リズお姉ちゃんは私が何を言っているのか分からないという顔で首を傾げた。

 あ、これってもしかして。


「ちょっとちょっと、管理精霊さんや。もしかしてあなたの声ってばリズお姉ちゃんに聞こえてないの?」

(当然であろう?)

「リズお姉ちゃんに声を届かせるようにはできないの?」

(出来るぞ? 声を届けるように設定変更するか?)

「うん。お願い。あ、リズお姉ちゃん。今から管理精霊さんの声が届くようになるから……ええと、自動車のルーナみたいな感じかな?」

(エリザベスよ。我は世界を創りし究極にして至高なる御方によって生み出された、管理精霊だ。名前はまだない)

「へぇ。このコンパクトの管理……精霊? へぇ……うん……なんかもうお腹いっぱいだけど、精霊って、あなたは、『あの精霊』でいいの?」

(ああ、我以外に精霊はおらぬ。お前の考えているあの精霊は我のことだ)


 はぁ、と大きな溜息をつくと、リズお姉ちゃんは私のベッドに腰を下ろした。


「リズお姉ちゃん?」

「ああ、うん。陽菜が異世界から来たんなら知らなくて当然なんだけどね。この国の宗教では精霊を崇めているのよ。石器時代の人類に魔法と知恵を齎し、今も世界の魔素を管理する存在が精霊。精霊は人間には興味をもっていないとされてるわ。で、精霊は一柱しかおらず、こんなところで陽菜と着せ替えごっこしてるような存在じゃない筈なんだけど」

「つまり、この世界で神様と言ったら、この管理精霊さんのこと? あれ? でも名前がないって」

「そりゃそうよ。唯一にして至高。並ぶ者のない尊い存在である精霊に、精霊以外の呼び名が必要なわけないじゃない」


 ええと? 世界に一つだけだから、その存在の名前が固有名詞に相当するってこと?

 あ、だから神様って言葉にも反応が鈍かったのかな?

 私はそう納得すると、武器を出現させた。

 ちなみに武器だけ出し入れする場合は脱がないからか、派手な光の演出はない。


「リズお姉ちゃん。これが私の武器……私の世界に存在する短機関銃という対人兵器がベースになってるの。小さな金属片を飛ばして、対象を破壊する武器で、たしか、鎧くらいは簡単に撃ち抜けるらしいけど、その金属片……弾丸は私の魔力で創られるんだったかな? で、これがドットサイト、こっちがスコープで、どちらも的を狙うための照準器。これが懐中電灯。で、ここがマガジン、ここに入れた弾丸を火薬の力で弾き飛ばすの」

「ええと? 今更だけど、この変身とか武器を出すのって魔法よね? 警察の魔素変動検出器に引っ掛かったりしないの?」

「なんか、普通の魔法と違って、周囲の魔素を使わないから大丈夫だとか言ってたかな?」

(魔素消費型魔法ではなく、魔法少女は自ら魔素を生み出すのだ。だから、魔素の急激な減少は発生せず、観測されることはない)

「魔素を生み出すですって?! ……あ、いえ、何でもないわ。で、陽菜はこれから魔法少女として生きて行く訳?」

「やりたくはないんですけどね。何でもこの世界には私みたいな魔法少女がもうひとりいて、会ったこともないんだけど、私はその魔法少女に狙われてるんだって。だから生きて行くには戦わないといけないらしいの」


 私はコンパクトを開くと、水晶の色の意味と、光点の意味、そして、縮尺について説明をした。

 レーダーは知らないみたいだったけど、検出器のようなものか、と納得するリズお姉ちゃんは、しばらくそれを眺めてから口を開いた。


「距離10キロほどで、方向が分かってて、接近したらこの縮尺も変化するのね?」

「うん。だから、接近されたらすぐに私がターゲットだってバレちゃうと思う」

「明日起きたら、それを見ながら移動して、距離を取りましょう。あ、魔法少女の魔法に飛翔魔法は?」

「少なくとも私は出来ませんけど……いえ、試したわけじゃないけど……できないよね?」

(不可能ではない。空を飛ぶための理論さえ頭の中にあれば飛べる)

「もう。魔法ってもっと便利で適当なんだと思ってたよ」

「……陽菜、もしも私がいない時に距離を詰められたら、ルーナを使って逃げていいからね」


 そしてリズお姉ちゃんの視線がMP7A1に向いた。


「それ、照準器だっけ? 変わった形してるわね。こっちのスコープは理解できるけど、こっちの……ドットサイト? これは意味不明ね。なんでこれで狙いが付けられるの? 覗き込む角度が変わったら見えるものも変わるだけよね?」

「これは、ガラスの板に裏から光を当てて、光がガラスで反射するんだけど、その反射するあたりに弾が飛んでくようになってるの」


 MP7に付いていたドットサイトは、ガラス一枚板が銃の上に置いてあるように見えるタイプだった。

 実際にはガラスの板の後ろ側に発光部分があり、そこからガラスに光を当てて反射させ、その反射した光の位置に弾が命中するようになっている。

 スコープみたいに筒状になったドットサイトもあるけど、このドットサイトは一枚の板が付いているタイプだから、初見だと、これで狙いが付けられるようには見えないよね。

 でも、ガラスと光を放つ部分のふたつのパーツで狙いを付ける構造だと考えると、方法は全く異なるけど拳銃なんかの照星と照門と理屈は同じなんだよね。

 覗く角度によっては、光点が見えなかったりするわけだけど、それに気付いたリズお姉ちゃんは、立ち上がると私の周りを回りながらMP7A1を興味深げに観察する。


「さっき試しに覗いてみたけど、銃を動かさずに覗く角度を変えてもそんなに大きくドットがズレることはなかったよ? 私も元の世界じゃ、おもちゃに触ったことがある程度だし、正確な理屈とかは知らないんだけど」


 マガジンを外して、コッキングレバーを引き、薬莢が飛び出てくる廃莢口エジェクションポートから、薬室チャンバーに弾丸が入っていないことを確認した上で肩紐スリングを外す。そして、銃口を上に向け、人に銃口を向けないこと、引き金に指を掛けないこと、肩紐は首に掛けておくこと、という基本的な注意をして、MP7をリズお姉ちゃんに手渡す。


「弾は入ってないけど、万が一があると怖いから、何かを狙うとき以外は銃口は真上に向けてね?」


 映画とかでは特殊部隊の人は銃口を下に向けるけど、愛美ちゃんは、的を狙うだけならあれを真似したら駄目だと言っていた。

 斜め下に向けるのは、ほんの少し銃口を上げれば正面を狙える姿勢であり、生きるか死ぬかで相手を撃つ必要がある状況なら仕方ないけど、エアガンで動かない的を狙ってるときは、そんな危険な姿勢を取る必要はない。銃を使うハンターは、弾が入ってなくても銃口は空に向けて持ち歩くものだとかなんとか。

 まあ、対魔法少女戦の時は射撃開始までの時間をわずかでも短縮しないとだから、特殊部隊みたいに持って走り回るんだろうけど……まあ、走り回るのも愚策だとも言ってたから、その辺は少し考えないと駄目なのかな。

 こんなことなら的撃ちだけじゃなく、一回くらいはサバイバルゲームに参加しておけばよかったかも。


「上に向けとくのね? ……それにしても結構重いわね。で、こうやって覗くのね? 全体的には警察で使ってる魔力弾をばらまく小銃に似た形ね」


 銃床ストックを肩に当て、覆い被さるように上半身全体で銃を保持したリズお姉ちゃんは楽しげにそう言った。


「まあ、人間が作る以上、持ちやすさ、狙いやすさとかを追求したらそうなるのかも? で、ドットサイトはどう?」

「うん。角度が少し変わった程度ではほとんどズレないわ。なるほど、板に光点があるんじゃなく、後ろから光を当てて反射させてるから、覗く角度が変化したら反射角も変わるのね……こっちのスコープは室内だと近すぎるのかピンボケになるわね……でも面白いわ。それで、このレールの部分に色々と取り付けられる構造になってるのね?」

「オプションが簡単に自由に付けられるんだけど。ここについてないのだと、私はレーザーポインターくらいしか知らないかなあ、それも照準を合わせる道具ね」

「なるほど、よく考えられてるわね。でも、なんで全部ピンクなの?」


 リズお姉ちゃんの質問に私は苦笑するしかなかった。

====

補足?


魔法少女の正体がばれても誰も困る人がいないので、あっさりバラすことに。

というか、この世界に魔法少女の概念はありませんでした。

子供が科学の力で無双する物語が地球にあるように、魔法を使って子供が活躍する物語程度なら、あると思うのですが、ジャンルになるほどの数がないわけですね。


>皆が魔法が使える世界の少女はすべからく魔法少女。

だからいちいち魔法って付ける意味がないのです。


>結局、当時の錬金術で金は作れませんでしたけど

現代では金の同位体なら作れます。ゆっくり熱と放射線を放ちながら元の物質に戻る放射性物質ですけど。


科学の歴史について陽菜が語っているのは陽菜の主観ですし、色々省いたり勘違いしたりしています。

ちなみに、水車やらから回転する道具が世界を回しているのは不思議だなって思います。

最初の道具が回転だったから、それが進化したのか、回転が最適解で、水車の頃に最適解を見付けたのか。太陽系とが銀河系も基本回転してるので、回転っていうのは効率のよい運動なのだろうな、とは思います。


>高度7キロほどから上には魔素がほとんどないの

対策していない人間が生存できる高度は8キロくらいです。なので、死ぬ気で上がり続ければ、そこらが限界というのは調べられるのです。


>高高度を飛行機で飛ぶための問題は究極的には「空気が薄い」

酸素の薄さも問題ですけど、空気そのもののの薄さも問題なのです。

飛行機は空気抵抗を揚力にして飛ぶ機械(厳密にはちょっと違う?)ですから。


>燃料は固体よりも液体の方が流体として扱えるから制御しやすい

固体燃料ロケットもありますが、液体ならバルブを閉じれば燃料が流れなくなり、燃焼を簡単に中断したりできるわけです。

あと、固体燃料は、単に火薬を詰めればそれで完成するわけではなく、作るのにもかなりの蓄積が必要となります。下手すると爆発するので、大きなロケット花火とか作ってはいけません。


>名前はまだない

何となくこのフレーズを使いたかったんです。管理精霊が猫ならマスコットに出来るよねとか思ってませんてば。


>ドットサイト

ガラス一枚乗っけて覗いたって、覗く角度が変わったら見えるものが変わるだけ。なんでこれで照準できるんだろう、という疑問を持っていたのは何を隠そう作者ですw

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