【漫画原作】傲慢な大富豪とエメラルドの瞳の伯爵令嬢 ― A Lady with Emerald Eyes and An Arrogant Billionaire ―

スイートミモザブックス

#01 プロローグ

 ロンドン郊外の広いマナーハウスの庭に、にぎやかな声が響いている。青々とした芝生、周囲の木々の葉も生き生きとしている。イングランド北部は今がいちばん美しい季節だ。

 にぎやかな輪の中心には三人の若い女性がいた。

「ほら、あれがオブライエン伯爵自慢の三姉妹だ。明るいブロンドの娘が一番上のソフィー・オブライエン。ロンドン社交界じゃ評判の美人だ。だが性格がきつくて、なかなか手ごわいという話だ」

 連れにそう声をかけられて、ルパートは若者たちの輪に目を向けた。彼らはおそらく学生か、あるいは大学を卒業したばかりの年齢だろう。男女問わずそんな子供に興味はない。

 しかも、名門貴族であるオブライエン家の正式な晩餐に招待されるのは貴族の子弟ばかりだ。これまで働いたこともなく、世の中がどう動くのかを知りもしない。そのうえ女性とくれば、たいていは高慢で自己中心的か、あるいは従順なお人形かのどちらかだ。

 世の中を知らない若者たちは、まるで飛べるようになったばかりの鳥のように、集まってにぎやかにさえずっている。ルパートはそちらに目を向けたまま、風に乗って聞こえる彼らの無邪気な声を、明るい音楽のように聞いていた。

 いくつか置かれたベンチには女性たちが腰かけ、それを取り囲むように男たちが群がっている。若さゆえの自信にあふれているように見えるが、今日の目的は、彼らのような若者たちと知り合うことではない。

 そう考えて目をそらそうとしたとき、若者たちの集団の真ん中がひときわまぶしく見えて、思わず目が吸い寄せられた。そこに一人の女性がいた。結い上げた金色の髪、少し上を向いた高慢そうな鼻、ベリーのように赤い唇。しかし何より強烈な印象を与えるのは、強い意志を感じさせるエメラルド色の瞳だった。男たちに囲まれているのに、少しの媚も含まれておらず、女性らしい柔らかさを感じさせない。誇りと力強さにあふれたその目に、ルパートは惹きつけられた。紺色のワンピースに白いジャケットというシンプルな服装なのに、彼女一人が光を放っているようにさえ見える。

 彼女が何か言って立ち上がり、ふっと彼のほうに視線を向ける。ほんの一瞬、ルパートの視線が彼女の視線とぶつかった。その瞬間、緑色の炎が心臓に燃え移ったような気がした。

ああ、彼女は僕と同類だ。ルパートは直感した。白く発光しているような美しい女性を見て、どうしても彼女を手に入れようという強い衝動がわきあがってきた。


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