病少女越境
椎見瑞菜
あらすじ
場
現代。冬。北海道の長い冬休みが明けた頃。北海道の架空の離島「風尻島」。外周5キロメートルほどの小さな島で、明治期から戦後すぐくらいまではニシン漁で栄えたが、その後は過疎化が進んでおり現在の島民は二百人ほど。北海道の本島まではフェリーで一時間ほど。島には小中学校しかなく、高校進学には島を出るしかない。
登場人物
須原(すばら)佳奈 15歳 鉄蔵の娘。もうすぐ札幌への進学で風尻島を出る予定。
佐藤 陽 15歳 佳奈の幼なじみ。佳奈と同じくもうすぐ島を出る。
須原 鉄蔵 47歳 かつて島の主産業だった鰊場を経営していた家系の者で島民のまとめ役を担っている。
草野 綾 32歳 アマチュア天文家として星の和名を蒐集しており、その一環として島を訪れた。
須原 由美子 69歳 鉄蔵の母。
ニシン様 ニシン漁の概念の象徴として島に現れる。体の目立つところに『大漁祈願』と書かれた額縁を貼り付けている。
江藤 純 かつて島の駐在さんとして勤め、殉職した幽霊。
あらすじ
風尻島に住む中学生、須原佳奈と佐藤陽が、島の有志で主催する星空観察会の準備をしているところへ、星の和名の蒐集を趣味とする草野綾が訪れる。寂れた離島という環境や封建的な考え方の父鉄蔵や陽からの抑圧、進学のために風尻島を離れることなどに不安を覚えていた佳奈は、星空観察会で鉄蔵を言い負かすほどの知識を備え自由な言動の綾に憧れを抱く。一方で、長い時間を風尻島で過ごし多くの者を見送ってきた祖母由美子やニシン様との会話の中に、自分の欲求が現代的な開放と封建的な固着という単純な対立の中にはないことも感じ取る。翌朝、風尻島を離れる綾の前で、綾を見送りに来た者を相手に、自分の欲求の潔癖さを衝動とした大立ち回りを演じる。
参考文献
北尾浩一 『日本の星名辞典』原書房、二〇一八
内田五郎 『鰊場物語』北海道新聞社、一九七八
小納正次 『焼尻の歴史』一九九四
小納正次 『続 焼尻の歴史』一九九七
沖縄タイムス南部総局 『十五の春 沖縄離島からの高校進学』沖縄タイムス社、二〇一三
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