イヴたちの人類創世記 ~女同士で子孫繁栄!?~

楠本恵士

さあ、新しい人類の歴史をはじめよう

第1話 ・新生『エデンの楽園』


 夢の中──『彼女』は目を閉じて仰向けになった状態で、自分の唇が柔らかい何かにふさがれている感覚を覚えた。

「んっ………んんっ」

 心地よい夢見の感触、暑くもなく寒くもない外気。

 温かい手が自分の胸に置かれている感じがあった──手の大きさと感触から、胸に置かれているのは男性の手だと気づく。

「んっ……んっ……」

 口の中に吹き込まれてくる熱い息吹。

『彼女』は目を閉じたまま、口の中に侵入してきた舌と自分の舌を無意識に絡める。

(んっ……あたし、キスしている? 誰とキスを? え……キ、キス?)

 次第に頭の中から霧が晴れるように、意識がはっきりしてきた『彼女』がパチッと両目を開ける。

 そこに見知らぬ若い男性の顔があった。

「ふぐッ!? ぅぅ!?」


『彼女』から唇を離した

ギリシャ神話みたいな服装をして、唇を奪って息を吹き込んでいた若い男性が『彼女』に言った。

「おはよう……やっと、目覚めたね」

 ワケがわからないまま若い男の体を『彼女』は突き飛ばす。

「きゃあぁぁ!」


 おびえる『彼女』

「な、なんですか、あなた? えっ!?」

 上体を起こした『彼女』は自分が全裸で、ベットかテーブルのように平らな石台の上に座っているコトに気づいた。

「あたし……裸?」

 周囲を見回す『彼女』──南方の植物が生い茂るジャングルにぽっかりと開いた、空き地みたいな空間。

 鳥の鳴き声が聞こえる。

「ここはどこ、あたしなんで裸?」


 男性を突き飛ばした十七歳から十八歳くらいの『彼女』が、まだ少しボーッとした頭で、周囲をキョロキョロと見ていると。

 南方植物の葉を掻き分けて、タコやイカの頭をした動物たちが次々と現れた。

 触手が生えたタコ頭で、足が六本のタコ足の象〔オクトパス・エレファント〕や。

 イカ頭のサイ〔スクウィッド・ライノ〕

 その他にも巻き貝や二枚貝が、体についている動物もいた。


 タコ頭やイカ頭の草食獣と肉食獣が、仲良く寄り添う暑くもなく寒くもない快適な世界。

 そこは、二枚貝の翼と巻き貝のクチバシを持つ不思議な南国の鳥たちが鳴き、不思議な果実が実る楽園。

 ギリシャ神話風の衣装を身につけた男性が、動物たちに向かって言った。

「みんな、新しい仲間の『人間』が誕生した、仲良くしてくれ……まだ、【弱肉強食期】じゃないから人間を襲って食べちゃダメだぞ」


 裸の『彼女』は、頭を押さえてパニックになる。

「いったい、これ何? なにがどうなっているの? あなた誰?」

「落ち着いて、えーと何から説明したらいいかな……最初に自己紹介かな、ボクは『見習い創造神』いわゆる神さまだね……君がいるココは『エデンの楽園』の一つ……はっきり言うけれど『人類は絶滅しました』……ドーンと地球に小惑星が衝突して、地球は粉々になりました」

「『見習い創造神』? 『エデンの楽園』? 『人類は絶滅』? 地球に小惑星が衝突? ええぇぇぇ!?」


『彼女』の頭の中が、さらにワケがわからなくなって、グルグルと回る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る