第5章

秋と学校生活と文化祭とバンドと?

第43話:さあ、ボードゲームを始めよう?

 ―――土曜日。


 午前11時を過ぎたあたりで、全員うちに集まってテーブルを囲う。


 飛鳥は持ってきた荷物の中から、あるものを取り出してテーブルに置く。


「じゃーん! 人生ゲーム~!」

「……って、人生ゲームかい」

「いやいや、これはただの人生ゲームじゃないんだよ。各マスに書いてある内容が結構エグイやつが多くて、更に一番先にゴールした人は、ビリに対してこのカードの中から決められた罰ゲームをやってもらうんだよ」

「なるほど。確かに私たちが知っている物とは違うみたいだね」

「面白そう! 早速始めようよ!」

「オッケー。じゃあ最初の持ち金とみんなの駒を配るね」


 全員が持ち金1万円と駒を持ち、いよいよルーレットを回しゲームを開始する。


「んじゃまずは俺からだな」


 駿介がルーレットを回す。3,4回転程して矢印は3で止まる。


「いち、に、さんっと。何々……『お得マス。更に4マス進み、止まったマスの効果を得る』か。なんだ、初手からめっちゃ優しいじゃん」


 そう言って駿介は駒を進め、4マス目で止まる。


「え~と、『気になるあの人を発見! お近づきの印に持ち金5万円でネックレスを購入。』……って、は? 普通に足りないんだが」

「あ、その場合は借金作ることになるから、今後の収入は借金分差し引いた金額ってことになるからね」

「……初手からめっちゃ厳しいじゃん」

「あ、あはは…」


 まさかの初手で借金という、何とも言い難い結果だ。ボクは苦笑いするしかなかった。


「じゃあ次は私だね」


 美乃梨がルーレットを回す。矢印は4で止まる。


「よんっと。え~、『残念! あなたの前の順番の人が交通事故に遭ってしまった! しかし相手は入院費を払えずあなたにお金を貸して欲しいと頼み、1万支払うことに』って、いきなり持ち金ゼロかぁ」

「……ちょっと待て、これって俺の借金どうなるんだ?」

「え~とね、借りてるわけだから借金は増えて、収入があった場合美乃梨にも返済しなきゃいけないね」

「………俺の人生真っ暗ってか」

「ま、まあまだ始まったばかりだよ。ね、雪さん」

「そうだね。この先収入があるかは分からないけど」

「…これは確かに、序盤からエグイわね」


 まだまだ始まったばかりとはいえ、もうすでに借金を抱え込んでいる駿介を見て、このゲームの恐ろしさを感じ始めた。


「じ、じゃあ次は私だね」


 今度はみずながルーレットを回す。矢印は5で止まる。


「あ、結構進めた。えっと、『当たりマス! 更に9マス進む』」

「お~、みずな凄い進むじゃん」

「やるわね」


 結果的に現状みずなが独走状態となっている。


「では私ね」


 怜奈がルーレットを回す。矢印はみずなと同じ5で止まる。


「あら、同じね」

「いいな~、怜奈もみずなも」

「俺らなんて一気に金が無くなってるのに」

「ま、まだこれからだよ、うん」

「あはは。じゃあ次私ね」


 飛鳥がルーレットを回す。矢印は2で止まった。


「あ~、たったの2か~。えっと、『あなたは病に掛かり病院へ行くことに。だがお金は順番が一番の人が払ってくれるとのこと。一ターン休み』だって」

「このゲーム俺に優しくねぇ」

「…駿介だけ集中砲火を浴びてるね」


 げんなりする駿介。無理もない。


「最後はボクだね」


 ボクもルーレットを回す。矢印は6で止まった。


「お、良い出目……えっと、『あなたはオーディションに合格し、見事声優になる。デビュー作品で快挙を成し遂げた。成功報酬100万円』」

「なんで雪にだけ優しいんだ!」

「いいな~雪。一気にお金持ちだよ」

「さすがね、姫様」

「あはは」


 ボクの持ち金はこれで51万円となった。幸先いい出だしに満足する。


「くっそ~。見てろよ~……」


 再び駿介のターンになり、ルーレットを回す。矢印は4で止まる。


「よんっと。え~…『借金がある場合に限り効果あり。偽の取り立て屋にお金を払い、結果さらに10万円の借金が増えた。一ターン休み』………チクショー!!」

「踏んだり蹴ったりだね」

「……まさか駿介の将来の暗示とか」

「こんな未来は嫌だ!!」


 本当に酷い有り様となっている。この先駿介はどうなるんだろうか。


「次は私だねっと」


 美乃梨がサッとルーレットを回し、矢印は4で止まる。


「え~と…『どうにかお仕事で成果を出す。成功報酬30万円』だって。やったね! 一先ず借金生活は回避出来たよ」

「一応救済措置はあるんだよね、このゲーム」


 全部のマスが駿介みたいになるものでは無いにせよ、マスによっては今後の展開が大きく変わるから、そこがまた面白いと同時に、怖い。


 今度はみずながルーレットを回す。矢印は3で止まる。


「『憧れの声優と夢の共演を果たす! 成功報酬50万円』。やりましたね、雪さん! 共演ですよ!」

「あはは、良かったね」

「くそうっ、なんでこいつらはこんないい思いばっかしてるんだ」

「というより、あなたが不憫すぎるだけではないかしら」


 怜奈の言葉が刺さったのか、項垂れる駿介。


 そんな彼をよそに、怜奈はルーレットを回す。今度は5で止まった。


「あら、結構進むわね……って、これは…恋愛マス?」

「あ、そのマスに止まったら、このカードの中から一枚選んで、自分の交際相手を決めるんだよ」

「…なるほど。このカードの表にある番号はプレイヤーの行動順ということね」

「そそ。じゃあ早速カードを引いて」


 飛鳥がカードの表側を見えない様に持ち、怜奈はそれを見て一枚手に取る。


「……2ね。ということは、美乃梨かしら」

「お、よろしくね、怜奈」

「ええ…………悪いわね福谷君。あなたの彼女、貰っていくわ」

「あんまりだぁぁぁぁーー!!」


 駿介は頭を抱えて叫ぶ。怜奈はからかうのが楽しいのか上機嫌だし。


 ボク達はただただ苦笑いするしかなかった。

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