第3章

夏と祭りと花火と願いと?

第25話:期末試験終了、いよいよ夏休み。まず最初にやることは?

 試験勉強は着々と進んでいき、いよいよ試験当日となった。試験に出た問題は、そのほとんどが勉強会でやった部分であったため、割とすんなり解くことが出来た。一教科の試験が終了するたびにみんなで集まっていたが、反応を見る限り好感触のようだった。


 試験も無事終了し、答案結果が返される。ボクはやはり英語が他の教科に比べて点数が低いものの、全教科80点以上を出したため、かなり満足している。


 他のみんなも点数にバラつきはあるが、どれも良い結果だったみたい。怜奈が全教科満点取ったのは驚いたけど。


 結果が発表されてからはあっという間に日が経っていった。その間は特に何事もなく、ついに一学期終業式も終了。その後一度教室に戻り、夏休みに入るにあたっての注意事項等を、西村先生が話している。


「え~、毎年言ってることだけど、事故とか病気には十分注意してください。ほぼ必ずと言っていいほど、誰かがケガをしたなんて報告が上がってくるので」

「大丈夫っすよ先生! 俺ら丈夫なんで!」

「そうそう、生まれてこの方風邪の一つも引いたことないし!」

「それはいわゆる、バカは風邪を引かない、というやつでは」

「んな、なにを~!」

「ハハン、悔しかったら言い返してみな!」

「グフフ…どっちもどっち」

「「なんだと!?」」

「はいはい、そこまでにして! まだ話は終わってないんだから!」


 先生が止めに入る。ボクはこのクラスは最後までこうなんだろうなぁ、なんて思いながら、先生の話を聞いていた。


「え~それから、基本先生は学校にいますから、何かあったら連絡くださいね。まあこれ以上仕事増やされてもいい迷惑ですが」

「教師のセリフとは思えない件について」

「お、今のなんかラノベっぽい」

「つか先生は夏休みとかないんですか?」

「いえ、あるのだけど、まだ先の話なの。はぁ、いいなぁ学生は。長い休み貰えて」

「あはは、なんか今の聞くと、夏休み満喫するのが申し訳なくなる…」

「あ、ごめんなさい。まあとにかく! みんな気を付けて過ごすように! 以上、解散!」


 先生の言葉で、みんなが夏休みの話で盛り上がりながら下校していく。ボクも帰り支度をしていると、みんなが集まってきた。


「雪、一学期お疲れ」

「うん、駿介もね」

「いやぁ、今年はいろんなことがありましたなぁ」

「美乃梨、まだ一年経ったわけじゃないよ」

「ふふっ。けれど、そう言いたくなるくらい、濃い一学期だったわね」

「そだねぇ。ところで、夏休みの予定は以前決めたのでいいんだよね?」

「うん、さっそく明日から行動開始だよ!」

「といっても、雪とみずなは仕事だがな」

「うう~、残念だよ。私も行きたかったなぁ。ね、天音さん?」

「あはは、そうだけど、仕方ないね。明後日からは一緒に遊べるし、明日は我慢だよ」


 しょんぼりするみずなを慰める。よほど夏休みを楽しみにしていたのだろう。ちょっとかわいそうになってきた。


「まあほら、いっても明日は宿題進めるくらいだし。それにみずな、明日の仕事って雪と一緒なんでしょ?」

「あ、うん! そうなの! 雑誌の写真撮影なんだけどね」

「へぇ~、じゃあ一緒の雑誌に載るってこと?」

「うん、今銀の歌姫イチオシのルーキー! っていうテーマで」

「おお~~! なんだか感慨深いなぁ」

「この子うちのなんですよって自慢できるね」

「母か!」

「あはは」


 なんてやり取りをしていると、みずなの携帯から着信音が鳴る。


「あ、忍さんからだ…えっと、天音さん。どうもその撮影、今日にして欲しいって先方から連絡があったみたいでして、どうでしょうか」

「ん、いいよ。忍にもそう言っておいて」

「わかりました」

「あれ、じゃあ明日は?」

「うん、行けることになったね」

「やった! じゃあじゃあ、明日10時にあの噴水前に集合ね!」

「―――。ん、わかったよ」


 急遽明日みんなと過ごせることになり、飛鳥が大喜びする。そんな彼女の顔を見た瞬間、やはりドキッとした。


 以前の立候補宣言以降、やっぱりまともに飛鳥の顔を見れないでいた。というかもはや、声を聴いただけでも動悸が激しくなる。自分でも相当意識していることが容易に分かっていた。


「天音さん、忍さんが学校前に到着したみたいです。一緒に行きましょう。夕さんには伝えてあるそうです。」

「あ、うん。わかった。じゃあみんな、また明日ね」

「また明日!」

「ええ、さよなら」

「仕事頑張れよー」


 ボク達はみんなと別れて忍の車に乗り、撮影場所まで向かった。



 次の日、夏休み初日。


 10時前に噴水前に着くと、既に全員揃っていた。みんな早いなぁ。


「あ! 雪ー! こっちこっちー!」


 飛鳥が手を振って招く。


「おはよう、姫様」

「うん、おはよう。みんな早いね」

「えへへ、楽しみすぎて早く来ちゃって」


 頭を掻きながら美乃梨は言った。


、昨日はありがとうございました。とても楽しかったです!」

「ん、なら良かった。こっちこそありがとう」

「「「「…うん?」」」」


 ボクとみずな以外は知らないことなので、疑問符を浮かべた。


「ね、ねぇみずな? 雪のこと、名前で呼ぶようになったの?」

「あ、うん。昨日のお仕事の時にちょっとね」

「…気になるなぁ」

「気になりますなぁ」


 美乃梨と駿介がニヤニヤしながら、みずなにジリジリと迫る。


「え、えっとー。二人ともちょっと怖いよ?」

「ふっふっふ。逃げられないよ〜」

「さあさあ、洗いざらい吐いちまいな」

「ひぇ〜! た、助けて雪さん!」


 うう〜っと唸る飛鳥、面白そうに眺めているだけの怜奈、吐け吐けと迫る駿介と美乃梨、助けてと悲鳴を上げて逃げ回るみずな。


 今年の夏は、本当に楽しくなりそうだなと、ボクは思うのだった。

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