第23話:期末試験、みんなで勉強会。今度は参加?

 次の日の放課後、今日はみんなの勉強会に参加する事になっている。


「雪、こっちこっち」


 飛鳥が手招きをしてボクを呼ぶ。そちらに行くとみんなが机を寄せていた。


「あれ、教室でやるんだ。てっきり図書室とか他の場所でやるんだと思ったけど」

「それは考えたんだけど、この人数だと場所広く取っちゃうし、騒がしくすると怒られちゃうしで、結局ここがいいねって話になってね」

「そっか、まあそうだね」


 納得しながらボクも机を寄せて勉強の準備を済ませる。


「それじゃあ雪も来たところで、始めますか」


 駿介の開始宣言により始まった勉強会。みんなは昨日の続きなのかさっそく教え合っている。


 ボクもひとまず一番自信のない英語の勉強をすることにした。


「雪は英語が苦手なの?」


 するとボクの方を見た飛鳥が聞いてきた。


「苦手っていうか、一番自信の無い教科かな」

「そうなんだ。歌詞に結構英語が入ってる曲もあるから、ちょっと意外かも」

「ああいうのって、結構砕いた言い方をするから、教科書みたいな文法に忠実な言い回しはしないよ」

「ああ〜、なるほどねー」


 例えば歌ってる最中に、急にかしこまった言い回しをしたら、うん? 急にどうしたの? ってなっちゃうからね。


「…でも、この教科書に書いてある文章、変なのばっかりだよね」

「そうね。『私はいつだって貴方の事を想っています。例え貴方があの女と結婚していても』とか」

「重いよね…」

「後はこれかな。『貴女幸せなら私も幸せです。何故なら貴女が幸せになる時、私はもうこの世にいないから』」

「いや何があったの!?  っていうかやっぱり重いよ!」

「俺はこれが気になったな。『今年で30歳になりました。みんなが私におめでとうと言ってくれます。けれどここには私一人だけ。誰も私を貰ってはくれません。今年のクリスマスも一人で過ごす。メリークリスマス』」

「違うベクトルで重くなった!?  というかこれ考えた人闇を抱えすぎだよ!」


 教科書の文章に次々と突っ込んでいく飛鳥とボク。あんまり先の方まで読んだこと無かったから、そんな事が書いてあるなんて知らなかった。この教科書大丈夫かな、教育的に。



 そんな話をしながらも、みんな勉強を進める。


「うーん…」

「ん、雪、どこかわからないとこある?」

「んー、ここなんだけど」

「どれどれ…」


 飛鳥がボクの方に近づいて教科書を覗き込む。急に顔が近くなってドキッとする。顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。


(またこれだ。顔が熱い)


 謎の現象にボクは戸惑う。そんなことはつゆ知らず、飛鳥は説明してくれる。


「ここにこの文法を使うんだよって、聞いてる?」

「え、ああうん。聞いてるよ」

「本当に? というか顔赤いけど、大丈夫?」


 そう言って飛鳥は手をボクの額に当てて熱を測る。


 手柔らかい。なんかいい匂いがするし、ていうかさっきより近いし!?


「…〜〜〜〜っ!」

「雪? 大丈夫?」

「…ちょっと飛鳥ちゃん、近すぎじゃないかな?」


 ボクがパンク寸前のところで、みずなが飛鳥にそう言った。すると飛鳥も顔を赤くしながら「ご、ごめん!」と言って離れた。


 …危なかった。これ以上は耐えられなかった。


「…むぅ」

「あら、どうしたのかしら、みずな。膨れているわよ?」

「何でもない。…それより天音さん! 私教えてほしいところがあるんですが!」

「へ、あ、うん。どこかな?」


 ボクはみずなに近寄り教科書を見る。さっき程近づいてはいないけど、少し顔が赤い。けどドキドキはしないのは、どうしてだろうか。


「…むぅ」

「あら、膨れているわよ、飛鳥」

「何でもない。って、さっきからわかってて言ってるでしょ」

「何のことかしらね」

「れ〜な〜?」

「ふふっ、あなたも頑張らないと、あっという間に取られちゃうわよ」

「うぐっ。…わかってるよ」

「何の話?」

「何でもないわ。それより姫様、私にも教えてくれるかしら」

「…怜奈ってわからないとこあるの?」

「私だって人間だもの、わからないことの一つや二つあるわ」

「そ、そっか。えっと、どこかな」


 今度は怜奈に近づく。怜奈からもいい匂いがして顔が赤くなってしまう。


(なんだかボクが変態みたいに思えてきた)


「安心して。それが普通の反応よ」

「うん、だから人の心の中読まないでね」

「「…むぅ」」

「あら、どうしたのかしら二人とも、膨れているわよ」

「「絶対わざとでしょ!!」」


 なんてことがあった勉強会だった。




 勉強会が無事(?) 終わって帰り道。今日はみずなが用事のため校門前で別れたので、今は飛鳥と二人で帰っている。


「今日の勉強会楽しかったね!」

「ん、そうだね。自信なかった箇所もちゃんと出来たし」

「えへへ、雪に教えてもらったとこもバッチリだし! ありがとね、雪」

「……っ!」


 眩しいくらいの笑顔でそう言った飛鳥に、ボクはまたもやドキッとした。


(…飛鳥といる時、こんなことばっかりだ)


 未だにコレが何なのか、わからない。


 ――――


 ただ、ボクの感じてるこれが、そうであるという確証がないのだ。


(今度駿介と美乃梨に聞いてみようかな)


 付き合っている二人なら、コレが、わかるかもしれない。


「…そ、それはそうとさ。雪、この後時間ある?」

「ん、うん。何かあるの?」


 そう聞くと、飛鳥は左右の人差し指をツンツンと合わせながら、ボクの方を見てこう言った。


「その…今から雪の部屋に行ってもいい?」




 どうやら二人に聞く前に、ボクの心臓が危ういらしい。

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