第4話:飛鳥は雪に物申す。え、次回?
4月下旬。
ある日の放課後。
「という訳だから、今度の土曜日開けておいてね!」
「…ごめん、何の話」
唐突に言ってきた飛鳥に対し、ボクはよく分からずに聞き返す。
「だから、今度の土曜日新しくできたショッピングモールに行くから、開けておいてねって話だよ」
「そんな急に言われても。…他の皆も?」
「ううん、私と姫様だけ」
「…その、ボクが言うのもなんだけど、もし周りにバレると大事になりかねないよ?」
「そこは大丈夫! 私にとっておきの秘策があるから!」
「秘策?」
なにやら嫌な予感しかしないのだが。
「ふふん、それは当日までのお楽しみってことで」
「そ、そう。うーん、夕に確認してからになるけど、それでもよければ」
「うん、おっけー。じゃあ決まったら連絡頂戴ね!」
バイバーイ…と手を振ってご機嫌な様子で去っていった。何がそんなに楽しみなのだろうと不思議に思いつつ、ボクも帰ることに。すると後ろから怜奈がやってきた。
「あら姫様、今帰りかしら」
「あ、怜奈。うん、怜奈も?」
「ええ、良かったら途中まで一緒に帰りましょうか」
「うん、いいよ」
そうして二人で話しながら歩いていると、怜奈が先ほどの飛鳥の様子を見たのか、ボクに聞いてきた。
「そういえば先ほど、飛鳥が機嫌良さそうに走って帰っていったけれど、何か知っている?」
「うーん、ボクもよくわからないんだよね。土曜日一緒にショッピングモールへ行こうって誘われた時から機嫌良さそうだったけど」
「……一緒に、ショッピングモールへ?」
「うん、そう言ってた」
「…なるほど、そういうことね」
何か納得した様子の怜奈だが、ボクにはさっぱりわからない。そんなボクの様子を悟ったのか、少し呆れたように、でも仕方ないといった感じで苦笑いした。
「まぁ、姫様はそうでしょうね。あまりそっち方面に鋭い姫様というのも、なにか違う気もするし…」
「え、なんのこと?」
「何でもないわ。それよりも、あれだけ嬉しそうにしていたということは、行くのかしら、土曜日」
「夕の返事待ちだけど、そのつもりだよ」
「そう…」
「…?」
なにかを考えているのか。しばらく待っていると、再度怜奈が聞いてきた。
「ところで、なぜ二人きりなのかは聞いたのかしら」
「ううん、なにも。ただボクと二人きりだと、周囲にバレたとき大変かもって話をしたら、秘策があるから大丈夫って」
「秘策?…なにかしらね」
「さぁ、ボクにもさっぱり」
「いずれにしても、飛鳥がわざわざ二人きりで行こうと誘った理由については、おそらくちゃんと考えた方がいいかもしれないわよ」
「理由…?」
そう言われてもなぁ。思い当たる節がない。新設したばかりみたいだし、なにか記念イベントが行われるとか? ううん、それともボクの知り合いの有名人のサイン会とか。
色々考えていると、怜奈はまたも苦笑いしていた。
「ごめんなさい、まだ少し難しかったかもしれないわね。私も確信があるわけではないのだし。今のは忘れて頂戴」
「…そう? ならまあそうするけど」
なんだか納得いかない感じもするが、怜奈がそう言うなら従っておこう。
「純粋に飛鳥と買い物を楽しんでくるといいわ」
「うん、そうするよ」
「それでは私はこっちだから、失礼するわね」
「うん、また来週ね」
「ええ、さようなら」
怜奈と別れて家に着くと同時に、夕からメールが来た。
『明日は夜に撮影が入ってるから、それまでならいいわよ。ただし、周囲に誤解されないよう十分注意してね。うちは別に恋愛禁止ではないけれど、変なスクープに仕立てようとする変態記者もいるんだから。それと今夜いつものチェックするから、部屋に居なさいよ』
変態記者て。まぁどこから撮ったんだといいたくなるようなスクープ写真とかって稀に見るから、言いたくなる気持ちもわかるけど。そう思いながら『了解』と返信した。
―――と、飛鳥にも連絡しないとね。
携帯を取り出してメールを飛鳥に送る。
『明日、夕方までなら大丈夫になったよ』
『ほんと!? やった!! じゃあ10時に噴水前で集合ね!! 遅れたらだめだよ!!』
『うん、了解だよ。…ところでどうして二人きりなのか聞いてもいい?』
『……えっと、伝えたいことがあるんだけど、それも明日まで秘密。それとも、イヤだった?』
しまった。不安にさせてしまっただろうか。気にはなるけど、これ以上聞くのはやめておこう。どのみち明日には教えてくれるみたいだし。
『嫌じゃないよ。…じゃあそれも明日まで楽しみにしておくね』
『うん! あ、そろそろご飯だから、また明日ね! おやすみ!』
『おやすみ、飛鳥』
飛鳥とのやり取りを終えると、あることに気が付いた。
「そだ、まだ言ってなかった」
そう言って一番奥にある部屋の中へ入る。部屋のさらに奥の方には仏壇があり、そこには35歳前後の男性と女性の写真が置いてあった。
「ただいま、お父さん、お母さん」
手を合わせて挨拶を済ませる。
―――ボクの両親は2年前に亡くなった。交通事故だったと聞いている。その日はちょうどボクの大きなライブイベントがあった日だったのだが……。
くぅぅ~~~。
そこまで思い出そうとしたところでお腹が鳴った。それ以上は思い出すなと言わんばかりに。
「っと、今夜はなににしようかな~」
晩御飯のメニューを考えながら、冷蔵庫を開けると……中身が空っぽだった。
「うそん」
今から買い物いくのもなぁ、と考えたところで夕からのメールを思い出し、ついでに買い物してきてとメールを送った。
『まったくあなたは。チェックするといったそばから…減点ね』
「なんでさ~~~~!?」
ボクの叫び声が部屋中に響き渡った。
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