誰も何も教えてくれない異世界ファンタジー

ヘイ

この世界の王女様は意識高い系の人なのかも知れない

 目を覚ましたら、俺は勇者だった。

 それもラストバトルの最中。

「へ?」

 俺は両手でガッチリと、絶対にこんなの実戦じゃ使わんよな、と言うレベルで宝石が埋め込まれている大剣を握っていた。

 持ち手は金。

 重さはかなりの物だと推測できるが、俺はそれを持っている。

「我が、究極の奥義アルティマ・ミステリアム、『魔王灼熱炎波』をこうも簡単にキャンセルするとは……!」

 なんて?

 ごめんなさい。

 何のことだか分からないんですけど。

「勇者様!」


 うん、誰?


「ルクス・ディエス・デウス神聖王国の王女、アンジェラ・クラリウス・ルクス・ディエスが命じます! 魔王にデウスより与えられしグラディオに宿りし、イグニスを心と共鳴させイグニッション・インパクトを!」


 ……ダメだ、理解できん!

 

 ねえ、どうやんの?

 誰か教えてよ!

「勇者様!」

「勇者!」

「勇者よ」

「ディアス……!」

 ねえ、皆んな祈るようなカットインとか要らんの!

 王女様だか、誰だかの言葉が意識高い系の横文字羅列みたいになって、全く理解できないんですが!

「あの、まだですか……?」

 うっせー!

 こっちだって必死にやってんだよ!

 大体、何で俺が勇者なの? 

 こう言うのって記憶の共有とかあったりするしさ、そもそも何で此処に俺がいるの?

『ワイ、ワイやで。ワイ、イグニスっちゅうもんやけど』

「何だよ!」

『ワイと共鳴するんや!』

 共鳴って何だよ!

 今日初めて聞いたわ!

『ほな、行くで!』

 さん、に、いち。

 ってカウントされても分かんないもんは、わかんねぇんだよ!

「良い加減にしろォ!」

 そう言って力任せに振るった俺の一撃によって魔王は倒れた。

「さ、流石、勇者様!」

 嘘つけ。

 絶対に予想外だっただろ。

「ほほっ、勇者様のおかげですじゃ」

 止めろや。

 目、合わせろや。

「だ、大丈夫だよ、ディアス! そう言う時もあるって!」

 惨めになるだろうが!

「ほら皆さん帰りますよ。王国に戻れば魔王討伐の祝宴フェストが開かれるでしょう! 王も勇者様を祝福してくれますよ!」

「だってさ!」

 うん。

 だからね。

 何のことだかサッパリなんだよ!

 誰か教えて!

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誰も何も教えてくれない異世界ファンタジー ヘイ @Hei767

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