その壁の向こうで・・
葵卯一
第1話
つまらない毎日・いつもの日々、当たり前の時間が失われるのはどんな瞬間だ?。
隕石の落下・飛行機の墜落・それともかの国から発生した世界を覆う致死の病か?
実際そんな事象は簡単には起らない、。仮にそうなったとしても、現代人は他人事で済ましてしまうだろう。
身近な人間が事故・病気・事件・老衰で、家族や親戚が一人・また一人と死を迎え、自分が葬儀に出たりするとようやく生を実感し、生きている時間の流れを感じながらも、死を考えだすのだ。
家族が死亡し・墓に入り・念仏を上げる、そんな時間が幾らか過ぎて、ようやく落ち着き始めた頃には感じていた生の実感は薄れ、つまらない毎日をいつの間にか送りはじめ、退屈を感じ始める人が殆どであろう。そう・・・・今これを残している僕を除いては。
少し以前の学生時分、と言っても底辺理系の馬鹿学生だったが。友人同士の賭けで数万の借金を負い、仕方無く労働に従事する事になった。
(今でも思うが、友人相手に何万も取立てるヤツは本当にダチなのか?)疑問だ。
コンビニや交通量の調査など安い、ダルイ仕事はしたく無い。かといって、深夜の荷物整理や清掃なんてシンドイ仕事もしたくない。
だいたい時給に換算しても安過ぎる、理系大学生なら家庭教師などがあるだろうとか思うだろ?無いんだよなぁ。
大体おれの様な偏差値の低い馬鹿大学の学生にそんな募集があると思うか?
教わるヤツだって、もっと偏差値の高い大学生に教わりたいだろ?
「は~~ぁ、ねぇなぁ。大学の掲示板に[楽で時給が良くて短時間]な仕事はなあ~」
オレの魂の呟きは思ったより大きく声に出ていたらしい。離れて立っていた薬学部の・・・確か講師か准教授だったと思う、若い白衣の男と目が合った。
「すいません、失礼します」オレは、なんとも気まずい空気と視線から逃れるように彼に頭を下げ背中を向け、用の無い掲示板から離れて退散・退散、家でバイトでも探すかね。
「そこの・・キミ、仕事を探しているのかい?」
男が害獣駆除薬を研究している准教授である事は後で知った、大学で顔を見られた年上の講師か教授の声に無視して逃げ出せるほど、大学は自由な学舎では無い。
仮に断る前提でも話を聞く姿勢を示さない場合、どんな経緯でかは不明だが単位を落とすハメになる事だって有り得るのが学生って立場だ。
「はぁ・・まぁ」どうせ面倒な力仕事か汚れ仕事だ。やる気無い空気を全面に出して曖昧に答えて置く事にした。
「・・返事に気力も無いね疲れているのかい?キミ。
・・所でだ、確認するけど仕事を探しているんだろ?」
准教授も一応空気は読んで、その上で確認するように言った。
オレが探しているのは[楽で時給が良くて短時間で稼げる仕事]だ、どれかを犠牲にするつもりは今は無い。
「簡単で給料が良ければ・・って感じなんですけど・・」
「・・簡単・・ではあるし、給料も・・一般の時給よりは高いよ?ただ・・・」
准教授の提示した仕事は確かに給料は良い、一回の仕事で数万、それも数時間の作業でだ。たった3回現場働きだけで十万の報酬、しかも取っ払い[手渡し]でだ。
時給にすれば1万程、拘束時間は有るが頼めば現地解散・直帰できる。
但し汚れ仕事だ、当然即決したよ。
その日の夕暮れ、車に乗せられ30分~1時間。庭なのか畑なのか、古い農家はすでに持ち主は死去、跡継ぎは東の都でリーマンをやっているとか。
何年も手付かずになった家屋に蔵は蜘蛛や鼠、イタチや蛇が巣を作る。だから定期的に薬剤を撒き駆除しておく必要があるとか。
更地にして売っ払うと、空き家の処理費用や農家特有の税金やなんやかやで困るからと一応は残してあるとか。
(リーマン辞めてから老後の生活にでも使うのかもな。退職後の自給自足生活とか、優雅なもんだ)老後を考える程度には余裕が有るってのは羨ましい限りだ。
オレら底辺学生の就職はどうなることやら、と。
そんな駆除業者と准教授が繋がっているのは、薬剤の効果を実地で調べるためらしい。運転手のオッチャンは教授が検証用といって持って来る[安い]薬を使う事で薬品代金分の利益が上がり、さらに検証実験費用として大学から僅かながらに金も出る。その上に、
「お客からも正規の仕事としてお金を頂くからなぁ、ほくほくだぜ」と。
まあやる事をやっていれば誰も損しない形なのだから、それは問題無いと思う。
「お前ぇさんはアレだろ?オレらの仕事の後で写真とか撮るんだろ?いい所撮ってくれよ」突然言われても、「いいところって・・」どこだ?
しっかり駆除された現場写真を撮るって事は、虫とかの死体を撮る事だ。
どんな害虫が、どんな状態で、どんな所で死んでいるか撮影、それがオレの仕事だ。
「まぁ教授様の事だ、しっかり薬が効いてたら大丈夫だろ。それより学生さん、ちゃんとマスクしてくれよ?蛇とか簡単に死ぬ薬だから。
学生さんが倒れられたらオレらもほんとに困るんだ」
渡された黒い防毒マスクは、丸いフィルター付きの物。映画とかで見た事がある禍々しいヤツだ。後渡された物は分厚い3㎜のゴム手袋と、防護服。
科学事故でも想定しているような完全防備品でとにかく重い。
「今の若い学生は知らんかも知れんけどな、白蟻退治とか防虫業者とか。昔はヒ素なんて使ってた頃もあるんだぜ、あんなモン一息すえば5年は寿命が縮まる猛毒だろ。
そのクソ重いヤツだって、学生さんの事を思っての装備だ。発がん生なんとかが有るかも知れんって言ってたからな。慎重に慎重を重ねた安全対策ってヤツだ」
(・・気楽に考えてOKしたけど、高い支払いにはそれなりの理由があるよなぁ
やぱっり、危険手当込みって事だったんだなぁ)
美味い話には裏がある、なんでも焦って食いつくと酷い目に遭うって事だ。
3人が屋敷の見取り図を広げ、一人は照明の設置を始めた。自家発電の振動と音が響き、薄暗くなり始めた屋敷に煌々と照明の光りが広がった。
「鳩とか烏とか後は、イタチとかも夜は巣に戻るからな」
「田原さんはそこを一猛打自陣にするって言ってけどさ、本音はクッソ暑いからだ。この防護服着て1時間もウロウロしてたら重くて本気で死んじまうよ」
マスクをつけた男からくぐもった声で話賭けられる、多分一番若い吉田さんだと思うが見た目だけではもう見分けが付かない状態ですよ。
「ホラ、学生さん。作業開始の写真を撮るから玄関まで行くぞ、そっちの黒板持ってくれ」
田原と思う男の指示で黒板を掴む、〇〇家・〇年〇月・・・薬剤散布作業・・責任者、
そんな事が書かれた黒板だ。
「防護服をきっちり着てから作業を開始するのが作業手順だからな、撮影も作業服を着てする事になってる」でも暑いからな、学生さんは今は着なくていいぞ。としてオレは田原さんの持つ黒板と屋敷が写る姿を撮影した。
「車から出るなよ?マスク以外の防護服は一応着とけ。お前さんの仕事はオレらの後だから車のクーラーにでも当たって服に慣れとればいい」
一番年上の・・西田さん・・か?が強くバンの扉を閉め、扉の隙間にテープを張る。運転手側と後のドアはテープを張ってないから出られる状態、一応は隙間止めをしたと言い訳するための作業なのだろう。
発電機を見る者、実際作業をする者3人が分かれ、重いタンクを背負って歩いて行った。
上から下へ、奥へ奥へ。屋根裏から床下まで、隅々に霧が掛かる。猛毒かも知れない薬物を塗し徐々に窓や扉を閉め切って三人が帰って来た。
大体40分くらいか?その後に屋敷をぐるりと回り、外からも溶剤を吹き掛けて隙間無く霧で包んでいく。
屋敷の外、庭から離れた塀に3人が背保たれしゆっくりと腰を下ろしている。
照明に浮かび上がる屋敷の影は、薬霧で苦しんでいるように風に揺れ。発電機の振動が脈拍ちを早める心音のように響いて聞こえる。
ザワザワと風に音を立てる藪の草、今にも何かが這い出てきそうな黒い屋敷と蔵。
疲れ切った3人は仕事に成れているように足を投げ出し、脱力して休んでいる。
オレは空気に包まれた嫌な感じがして、肌に張り付く空気がどうしても拭えない。
男がなにかの用紙にチェックをすませ、5分か10分が過ぎたころ。発電機のスイッチは切られて屋敷の外に出て行った。
それから大体1時間後くらいか、帰ってきた男が防毒マスクを何度か指さし、バンの戸を叩く。
(マスクを着けろって合図だよな・・丁度時間通りか)マスクを着け後頭部のチャックを閉めると男に後頭部を見せる。
男のOK指で作った合図に頷き、外からバンのテープが外された。
うわぁ、
(暑いし息苦しいし重いし最悪だ、これでちゃんと金貰えなかったらマジ最悪)
クソ重いゴム靴をなんとか持ち上げ、ヨロヨロと降車して歩く。
「大丈夫か?」そんな声がマスク越しに聞こえる。
でもおれは頭が少し朦朧としてよく聞こえ無かった。
照明が再開され、オレの背後では懐中電灯の大きなヤツを持ち、額にライトを着けた男が付いて来て屋敷の中まで照らしてくれている。
黒く伸びる自分の影が動き、1歩進む毎に霧の中に影が浮かぶ。動く者のいない屋敷は沈黙を守りギシギシと床だけが音を立てた。
畳みを退けた床の穴・箪笥の後・机の下、色々な場所に小さな虫が転がり、時々ムカデや、脚の多い虫が反り帰って死んでいる。
小さな蜂の巣や落ちた蜘蛛の死体。幾つかの死体写真を撮り、トイレから台所に進む。人が使わなくなった台所は外からの明かりで照らされ、誰かが照明の隣に立っているのが見えた。不意にオレの姿に気が付いた影が手を振る。
オレが頭をペコリと下げると動いていた影が手を下ろす。?
作業に戻る瞬間、床に目を落とした瞬間なにかが動いた気がした。目の端、一瞬の動きで形は解らなかったがナニカが動いた・・のか?わからない、錯覚かも知れない。
駆除と言う名の、死の霧が包む無人の屋敷。生きた生物が走るハズが無い、もう一度床を確認しても、煙る霧の落ちた床には足跡は見えなかった。
オレは気のせいだと思い、別の場所に撮影場所を移した。
「疲っかれた顔してんなぁ大丈夫か?」
吉田さんは煙草を吸いながら開いた窓に息を吐く、車内では4人の男が初心者のオレを気遣ってくれているのか缶コーヒー片手に雑談を始めている。
「あんな重い物着けてよく動けますよね」
総重量でも7キロ、分厚い防護服と息苦しいマスク。汗の籠る服の中では少しぬるめのサウナ状態だ。
それを着たままでタンクと噴霧剤を背負い、1時間中男達は動いていたのだ。
「慣れんよ、慣れ。そりゃ毎日ヤレってなら体もへたれろうよ、でん週2回程度で月・・8回か?明日は特別休日で大体週3休、これで手取りが30と特別手当が毎年二回付く。
1年もすりゃ足腰に血も巡ってくりゃぁな、そうすりゃ楽なもんだ」
足腰に筋肉が付くって事らしい、労働ってのは体を仕事に慣らし適応していくことで楽になるのかもしれない。
「お~オレもそうだったぜ。一現場でフラフラになって、明日には辞めてやるってな」
「それで吉田君は手に持った札とビール片手にパチ行って、次の日には戻ってくるんだよな」 だってこんなわりのいい仕事ねぇですもん、そんな感じで次ぎの現場が見えて来た。
二件目の現場を終えて渡された封筒には7万と少し、たった半日で手にしたと思えば破格と言える。
最後に「ちゃんと写真を送っといてくれよ」そう田原さんに言われ「データはもうアドレスに送付しましたので大丈夫です」と返事した。
近くの駅まで送ってもらった後、オレは久し振りに銭湯ってやつに入った。
それだけ身に付いた汗の臭いと、頭の濡れた不快感を直ぐに落としたかったんだ。
シャワーを浴びて汗を流す、体を石鹸で擦り泡立てて流す、それだけで十分綺麗になった気がした。ゆっくりとお湯に入ると全身の疲れが溶けるように力が抜けていく。
(気持ちいい)今はそれだけだった。金は手に入った、借金を返しても数万残る。
後で風呂上がりに居酒屋で一杯飲んで、美味い物を食べてもまだ余るだろう。
汗の流れる顔を洗い、手足を伸ばし風呂の湯気を吸い込む。労働した後の充実感ってのはこういった感じなのだろうか。
(クッソ安い時給の仕事なら絶対こんな感じはしないだろなぁ、やっぱ)
正しい報酬があってこその、労働の充実感だ。毎日安い給料でせこせこ働いて、立派な社会人などと言い放つ馬鹿共には自分が消費されているだけの使い捨て、歯車だって事が解らないんだ。
風呂上がりの湯気の放つ体を拭いて、喉の渇きを林檎水で潤す。久し振りに呑んだが異常に美味い。
田原さんが最後にくれた解熱剤とビタミン剤、「一応なんかあったら」と渡されたヤツだが、取り敢えずのんでおく事にした。
見た事のあるメーカ品の薬を、小パックに分けてくれた物だから死ぬ事は無いだろう。
(あとで熱出すのも嫌だしな)取り敢えずだ。
ランドリーから服を取り出し、使い過ぎないように安居酒屋に足をむけた。
財布の中を再確認!ウムウム、まだ7万はきっちり残っている。呑んで喰って家帰って寝るか!
(金ってのは卑怯だよなぁ、少し使っただけで無くっちまうんだよな)
金を返して少し酒のんで、パチンコ打ったら残りは数千円。入る金が無いから簡単に財布が薄くなる。少しでも貯金すればって考えもあるけど・・一万程度が通帳にあっても直ぐに下ろすだけで意味が無い。
(ああ・・こんな事なら教授の授業くらい聞いておけばよかった)顔は覚えているが、なんの授業を担当しているかすら知らないのだ。
メールアドレスは一応残っているが、用事も無いのに要件を送るのは迷惑だろ?
鬱陶しいと思われてブロックされたらな・・困る。最悪は呼び出されて怒られるかも・・
金が欲しい金が欲しい金が欲しい金が欲しい・・・・
「ああ、キミキミ、こんな時間でこんな何をしているんだい?授業も無いなら友人と楽しく会話する事をお勧めするよ?・・ってキミか。この間は助かったよ、中々良い映像と写真だったよありがとう」
「教授!」さがしていた相手が急に現れ、思わず声が上がってしまった。前に会ったままの白衣と痩せた顔、准教授だ。
「ははは・・教授ってのはいいすぎだよ、教授を目指して無いといえば嘘になるけど・・・・。
その顔じゃ・・・またお金に困っているのかい?確かにお金は重要だからね」
乾いた笑い声と、どこか力の無い話方でオレの顔を見て微笑む。
そうなんだけど・・・こっちから『仕事を下さい』って言うのは言い辛いだろ?
「急になるけど、今日なら前と同じ条件で現場があるよ?」
「そんな簡単に、あの仕事に空きが出るもんですか?結構好条件の仕事なのに」
思わず喰い気味に聞き返してしまったが、貧乏学生は無論親が金持ちでもないかぎり、普通のヤツなら飛びつく報酬だ、(薬の危険はあるが)
そう、ぽっぽと人員の空きが出るハズが無い。
「ははは・・そこはほら、まず条件として口の堅い人間じゃないと困るんだよ。実際キミから他の誰か伝わったって話は聞かないし。そして職人さん達と仲良くしてくれる学生じゃないと困る、聞けば『かなり真面目で話も出来る』って業者の人達は誉めていたよ。
そして最後に科学系の学生で、僕の方でも状況を把握出来る必要がある。熱とか嘔吐で倒れられて一人で入院されても見舞いも出来ないんじゃ困るだろ?」
納得いく答えだろう。実験が外部は勿論の事、失敗していた場合に学校に知られるのも良くない、研究が停止されと困るからだ。働く人間関係だって重要だ、まして新薬の散布でオレが倒れて重症化したら大事になる。ソレを防ぐためにも、労働者の安否は把握出来る方がいいことは解る。
一応は信用されたって事だろう。(と言う事は、今日偶然オレに声を掛けたのでは無く仕事の誘いだったって事か?)可能生は高い。
「今日ですよね、ヨロシクお願いします!」今回は借金返済分は無い。全部手元に残るしそれこそ4万くらい貯金に回せる、余裕が出来るって話だ。
・・・・・・・・
財布に厚みが出来て貯金が10万を超えた頃には、おれは助教授のことを先生と呼んでいた。[白數沢 由一]それが助教授の名前だ。
オレは白數沢先生に呼ばれ、彼のゼミにも顔を出す様になっていた。
「う~~ん、中々難しいね、芳しく無い。原田君が頑張ってくれて助かってはいるんだけど、今一薬の成果がねぇ・・」白數沢先生がオレの撮った写真と薬剤の量、種類を確認して日付・時間・散布してから期間をおいた後の空き家の写真を見比べて腕を組んでいた。
!「そう言えば、原田君には言ったかな?僕の目標、というかこのゼミと研究目標の事」突然そんな事を言われても、
オレは首を横に振って、撮った写真に目を落とす。害虫駆除なら成果は出ているハズだけど違うのか?。
「フム、言って無かったか。この研究の最終目標は[一種類の薬剤であらゆる害虫害獣を駆除し、最低でも一年間効果を持続する薬の研究]なんだよ。そして薬剤の量を徐々に減らし、最終的にはバル〇ンのような形と大きさにする事、キミだって見た事は無いかい?蟻・蜘蛛・ムカデ・ゴキブリ・蚊・蠅・鼠・ダニ・蚤・様々な種類の防虫防獣薬があっても、全てに効果のある薬が無い。当然生物に対して効果がある量も違うだろうけど」
そう言われたら確かに、ドラッグストアの入り口には蚊や蠅・虫殺しのスプレーや薬が並べられ、種類もメーカも多い。
統一されたスプレーが1本で済むなら客は迷わなくていい事になる。
「確かに最初の一回は高いと思うよ。でも一年間、蠅・蚊・ゴキブリ・ダニ・蚤に悩まされ無い生活を送れるなら、安い物じゃないか?でも今のままじゃ駄目なんだ」
オレが写真を撮った空き家では、完全に虫も生物も死滅していると思う。確かに量は多くて業者を雇う金も掛かってはいるが。
「まだまだなんだ、キミだって散布した後の家で動く生物を見たんじゃ無いか?完全に死滅出来ない薬では量も減らす事だって出来ないんだよ」
「じゃあアレは幻覚とかじゃなかったんだ・・」
目の端で微かに見えた気がした動く影、月一回あるか無いかで見える幻覚だと思ってたけど違うのか。
「やっぱりか!だから彼等だけに任せるのは嫌だったんだ。そうだよソレ、キミの見た動く物、それが僕の知りたかった物なんだ!」
ある動物に耐性がある、ある虫には耐性がある。研究はその耐性を超える毒を見つけて加える必要があるが、業者のオッチャン達は仕事を完遂したと報告をするため、耐性動物の報告はしない。ソレを知るためにオレが撮影しているのだと。
「そうか・・今の今まで言って無かったのか・・僕の落ち度だ、でもこれからは報告してくれ。出来ればで良いんだが、薬に耐えた動物や虫の確保もお願いしたい」
・・そりゃ無理だと思う、あの重量の防護服と視界の悪いマスクをして虫取りとか、考えたくも無い。
「耐性動物・虫を捕まえてくれたら私から特別にボーナスを支払うよ。ほ乳類なら鼠でも5万・鳥なら3万、もっと大きい動物なら十万を払おう。運良く捕まえる事が出来たら状態は問わないからね。当然業者の人達にも言っているんだけど、中々解ってくれてい無いようでね、頼むよ」
そう言われて断れるハズが無い。上手くいけばの話でボーナスだ!気合いも入る。
その日からオレの中で、アルバイトの項目に動物の捕獲が付いた。
やったボーナスだ!コレは絶対外せない。
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