第53話 安息

夕食を結構な時間をかけて食べ終えると、我が女主人は僕を寝室へと案内してくれた。「もしおまえさんが妖精たちはもう沢山、というのでなければ、」と彼女は言った。「別の部屋へ連れて行こうと思っていたんだがね。その部屋は森に面していて、そこならおまえは間違いなく妖精族の連中をもっと沢山見ることができるだろうよ。なにせ彼らは時おり窓を通りすぎたり、たまに部屋の中に入って来さえするからね。一年のある時期だと、奇妙な生き物たちが一晩中部屋の中にいたりもする。あたしは慣れちまったから、別に気にならないけど。小さな娘もあたしと同じで気にしないから、いつもそちらで寝ているよ。けれどこっちの部屋は南方の平野側に面していて、妖精たちはこちらには決して姿を見せないのさ、少なくともあたしは一度も見たことはないね」

僕はなんであれ、妖精界の住人たちに関して自分が体験できるであろう体験を逃すのを心残りに思った。しかしあの農夫との交流や、僕自身が行った最近の冒険の影響は大きく、僕はより人間的な領域の中での、平穏な夜を選ぶことにした。また、その部屋の清潔な白いカーテンと白いリネンのシーツは疲れ切った僕にとって非常に誘惑的だった。

朝、夢も見ない深い眠りの後、僕は爽快な気分で目覚めた。窓の外を見ると、太陽は高く昇り、広く起伏のある墾された平野の上で煌めいている。さまざまな庭園野菜が窓の下で育っている。すべては、澄んだ陽光に照らされ燦然と輝いていた! 露の雫がせわしなく光を放ち、近くの牧草地では、牝牛たちが昨日一日中食べていなかったような勢いで、もりもり草を食んでいた。メイドたちは家の内外のあちこちを通り過ぎ、歌いながら仕事していた。僕は妖精界にいるのが信じられなかった。僕は階下へ降りると、一家はすでに朝食の席についていた。しかし僕が彼らの居る部屋に入ろうとすると、あの小さな娘が僕のそばに近寄り、なにか言いたいことがあるという風に、僕の顔を見上げてきた。彼女の方へと身をかがめると、彼女は僕の首に両腕を回し、唇口を耳元に寄せると、囁いたのだ――

「『白い淑女』が一晩中家の周りを飛び回っていたわ」

「扉の後ろでこそこそお喋りしちゃいかん!」と農夫が叱ったので、僕たちは一緒に部屋に入った。「やあ、よく眠れたかな? おばけなど出なかっただろう、なあ?」

「ええ一匹も。ありがとうございます。いつになく良く眠れました」

「そいつは良かったよ。まあこっちに来て朝食を食べなさい」

朝食を摂ると、農夫と息子は外に出て行って、僕は母娘のいる場にひとりで残された。

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