雪女

第1話

君は雪女を知っているかい？

ふむ、それでは

雪女がどの様に生まれるかは知ってるかな？

知らないだろうね

彼女達はね

元は人間だったんだ

本物の雪女と呼べるのは

最初の一人目だけ だったのさ

その後の雪女は

全て彼女の力を受け継ぎ

その心に振り回された元人間さ

先ずは始まりの雪女の話をしようか

仇花　春乃(あだばな　はるの)

春乃は

その地では 名の通った名家の娘で

いつも笑顔が絶えず

とても聞き分けの良い子だったそうだ

その良さに漬け込んだのだろうね

村の吹雪を止める為の生け贄に選ばれた

娘も村を救う為ならと

泣き叫びたくなる心を押し殺し

生け贄になる事を受け入れた

結論から言うと

始祖の雪女は、

生贄の少女の成れの果てなのさ

春乃が

氷山に生えた

体温で溶けぬ雪の華を、

何とか溶かそうと飲み込んだことにより

生まれた存在だ

で、華なんだけどね？

山の雪を降らせているのは

その華の仕業と言われる程に

神格を持った物だったんだ

雪の華を飲み込んだ

娘の心は、

たちまちの内に凍りいついてしまい

抑えていた 心の闇が漏れ出てしまった

(なぜ私だったの？

なぜお父様もお母様も何も言わなかったの？

なぜ村人は私を生贄に選んだの？

身体の震えが止まらない･･･

なぜこんな目にあってるのだろう･･･寒いよ･･･

村の皆が私を選んだからだ･･･凍える･･･

家族が異を唱えなかったからだ･･･

皮膚が凍りつきヒビ割れ血が流れ凍り付く

寒い･･･痛い･･･憎い･･･

寒い痛い憎い！憎い憎い！)

そして、その日の晩　

･･･地図から村がひとつ消えた

人も 民家も 畑も

何もかもが凍りつき

全てが雪に覆われた

そして娘は

人の世を捨て 人の名前を捨て

自らを雪女と名付け

姿を消した

と言った所で

ここで初代の話は終わりだ

そうは言われても

知らないものは知らないとしか言えない

最後がどうなったかは知っているけどね

聞きたいかい？

あまりとオススメは しないんだけどな〜

まぁ、聞きたいなら

聞かせてあげよう

人に捕らえられ

拷問を受け続け

世界を呪いながら涙を流し

涙の熱で溶けて死んだのさ

そして、

その涙には凄まじい冷気と神気が宿っていた

その涙は

厳重に封印、管理されていたんだが

盗まれてしまってね･･･

ご明察･･･

その涙を飲み干し

雪女となった者が現れ

数々の村を襲い続けた

そして危機を感じた

帝より命を受けた僕ら陰陽師の出番だ

雪女現れ それを退け

雪女に逃げられ

また憎悪を受け継いだ雪女が現れる

それが何代にも渡り

繰り返されてきた

そして次は君の番だ

今度こそ雪女を祓ってくれ

と本来は言わなければ

いけないんだろうけどさ

僕は知ってるんだよ

君の故郷の幼なじみが

(雪女を)受け継いでしまったんだろ？

だから

･･･救ってあげなさい

幼なじみを、

そして始祖の雪女の心も

その継承者達の心も

彼女達はもう十分苦しんだ筈だ

大丈夫さ、君ならできる

いや、君以外には出来ない

歴代の誰よりも優秀で

誰よりも優しく暖かい心を持った

君に、凍てついた彼女達の心を救って欲しい

それでは頼んだよ

八代目 安倍家当主

安倍快晴(あべのかいせい)