第2話大人のお姉さんが憧れなんですか?3

 朝食が終わってしばらくすると、準備をして木の葉様は出て行かれました。お嬢さまは、部屋には引っ込まずに居間で本を読み始めます。


 そう言うのもリサーチ済みですよ、私は。

 部屋にあまり引きこもらずに居間にいてくれた方が、氷雨さんは目が行き届いていいからと、その様な教育をしているとの事でしたからね。

 そして、お嬢さまもそんなに嫌がってる風でもないとか。


 私はお洗濯を干して、色々下準備する事をしてしまっていると、お嬢さまは宿題の方に取りかかっていました。

 傍に寄って行くと。何、とあからさまに嫌そうなお嬢さま。


「邪魔しないでよ。仕事終わったんなら、アンタもゆっくりしたら?」


「ええそうさせて頂きます。もうしばらくしたら、お昼もお作りしますからね」


 そうしてお嬢さまを眺める事しばし。

 いやーん、キュートすぎですお嬢さま。

 眼鏡をかけて真剣に宿題に取り組む姿は、いつもの愛らしさとは違って凜々しくてギャップ萌えで素敵です。


 しかしそれを崩してみたくて、ちょっと引っ掛けてみたくなりましたので、そうしてみるのです。


「そう言えば、お嬢さまってお姉さんが凄く好きなんですね。お顔を見ていたら、それはもう木の葉様を見ている姿はうっとりしていらして」


「な・・・・・・な、なにを。そんなに私露骨だったの? って言うか、記憶から消しなさい。お姉ちゃんはただ憧れの存在なだけだし」


「いやー、お嬢さまはしっかりしてるけど、実はシスコンなんですねー。姉妹百合なんて最高じゃないですか。眺めてるのもまた悶えそうです。それはそうと、お嬢さまはしっかりした年上のお姉さんがお好みなんですか?」


「ち、違うってば。そんなんじゃない。お姉ちゃんは、別にそんなんじゃ・・・・・・。だって、お姉ちゃんは私だけに優しいんじゃないもの」


 ふーむ。

 本当は子供らしく、お姉さんを独占したいんですね。

 大丈夫です、私がいますよ。


「それなら、私も頼りになる年上のお姉さんですし、慕ってくれても何も問題はないんですよ。ほら、幾らでも好きな物作ってあげますし、勉強も見てあげますよ」


「アンタとお姉ちゃんじゃ、全然違うわよ! お姉ちゃんは優しくて、こっちの嫌な事もしないし、いい匂いするし、体系もスマートだし!」


 ふうむ、なるほど。お嬢さまの中でかなり木の葉様は神格視されているご様子。


「それより、アンタ本当に大丈夫なの。吸血鬼って日光に弱いんでしょ。それに夜行性なんじゃないの?」


 何と私の事を気にして下さるとは。お優しいお嬢さまです。


「私の事気にして頂けるなんて光栄ですよ。でも心配には及びません。この能力も大分使いこなせるようになって、うっかりミスで灰になるなんて事もないですしね。それと私、実は昼間の仕事が出来るように、吸血鬼にあるまじき生活態度ですけど、昼夜逆転してるんですよね。以前は夜間のアルバイトとかこなしてたんですけど」


「ちょっとそれ本当に大丈夫って言うの。昼夜逆転ってかなりストレスになるんじゃ・・・・・・? わかったわよ、私も迷惑かけないように努力するわ」


 ちょっとだけしおらしい感じになってくれるお嬢さま。本来は内気な性格が垣間見られて、何とも眼福です。


「で、どんな風に戦ったりするのに使えるの?」


「は?」


 唐突に変な振り方をなさいますね。


「だから能力があるんなら、敵とかいたりするでしょ。それで能力バトルになってさ。どう言う風にアンタの力は使えるのよ」


「ああ! お嬢さまってバトル漫画とか好きなんですか。可愛いですー。でもがっかりさせるようですけど、日常で幾ら吸血鬼と言えども、バトルに明け暮れるなんて事にはなりませんよ。そんな生活、殺伐としてて嫌ですしね」


「ええー、何だつまんないの」


 露骨に残念そうな顔をされます。うーん、ご期待に添えなくて悪い気もしますが、私はあまり人様と争いたくないのですが。


「あ、能力の応用なら出来ますよ。影を暗くして、暗い所なら姿を隠せます。ほら、こんな感じで」


 そう言って、私は能力を複数のレイヤーを重ねるみたいにして、その場で黒い塊のように姿を見えなくします。

 そうしたら、お嬢さまはかなり食いついて来てくれました。


「何それ、すっごーい! これ、夜ならバトルにも使えるじゃない。後、今思いついたけどさ、夏場に暑さを凌ぐ応急処置に使えるわよ」


 キラキラした目が眩しいです!

 お嬢さまの無邪気さがどこかバトル脳みたいなのも、まだまだ幼い感じがして萌えポイントですし、私にそんな感情を向けてくれるのが、何より嬉しいですよ。


「ふふふ、なら闇夜でお嬢さまをお守りするのは容易ですね。さて、お嬢さま。ええと、そのー」


 少しモジモジしてみせて、期待を込めて眼差しを向ける。


「え、何よ、キモっ。もしかして、血? わかったわよ、吸えばいいでしょ。手早く済ませてよね」


 そう言って腕を差し出して来るので、ここは面白くしてあげようと、シャツを捲ってお腹に手を当ててあげます。そうすると案の定、愉快な反応。


「ひゃっ。ちょっと何捲って触ってんの。お腹とかエッチな場所からは駄目って言ったでしょ。懲りないわね、このエロ女」


「だって目立たない所の方がいいでしょう。それにお腹がエッチな部位って、お嬢さまもエッチなんじゃないですかー?」


 わなわなと震えるお嬢さま。本当にからかってたら楽しいですけど、これ以上はやめて置いた方がいいかもしれません。


「何言ってんの。私別に、エ、エッチな事なんて良く知らないし。お腹もちょっと過剰に反応しちゃっただけだし、ううっ」


「すみません、言い過ぎましたよ。じゃあ、腕の所、目立たずに傷にならないように吸いますからね。終わったら、ご飯作りますから」


 うー、とまだ唸っていますが、私は少し罪悪感を覚ながら、手を取り腕にキスしてから歯を立てて、吸血していきます。


 お嬢さまはやはり官能的な声を子供ながらあげて、それが私の気分を高揚させるのですが、努めて冷静を保ちながら、そんなに多くは吸わないように注意して、極上の食事をさせて頂きます。


 子供の血だからか、お嬢さまのだからか、はたまた生で飲む人間の血がそんな味なのか、とにかく私は美味しいお肉でも食べた時みたいにうっとりしちゃいます。


 事が終わるとお嬢さまは真っ赤な顔で、終わった?と上気したのを隠せずに尋ねて来ます。今すぐベッドに行きたくなってしまいそうですよね。


「はい! お嬢さま最高ですよ。さて、私も人間の食べ物は口に出来るんで、一緒にお昼ご飯食べましょうか。あ、お昼から勉強見てあげましょうか」


「・・・・・・お願い。って言うか、普通に食べられるんなら、今のはおやつ感覚なの?」


 やけに素直な小春お嬢さま。

 そして、しっかり抗議も忘れない姿勢は素晴らしい。

 うん、それと小春って名前は温かくていい名前です。



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