命の時限爆弾
東風和人(こちかずと)
無題
その日、私は目覚めた。
ふいに、外から賑やかな声がする。ちらりと窓の外を見ると、この寒さでも元気な小学生達がわいわいと騒ぎながら集団登校をしていた。その無邪気な雰囲気に、私は視線を落とす。この世の不条理さ、理不尽さに未だ気づかないままの彼らを見ると、心の片隅が痛くなる。
この世には、毎秒どこかで、新しい命が産まれ、そして同様に死んでいく命がある。
『死』というものは、どうしたって抗えない必然性で成り立っていると、私は考えている。
例えば、心臓発作で病院に救急搬送されたとしよう。医師たちの懸命な救命行為により、一命を取り留めたとする。私にはそれは、単にそこに『死の必然性』が無かった。というだけで、『心臓発作を起こしたが死ななかった』という事実にしかとらえられない。言うなればただの結果としての意味である。
そこで反対に、救急搬送されたが、医師たちの懸命な救命行為も空しく、命を落としてしまったとしよう。この場合、私の言う『死の必然性』があったからということになる。
この『死の必然性』は言い換えると『命の時限爆弾』のようなものだと私は思っている。
命を落とした時=時限爆弾が爆発した、ということだ。命を落とさなければ、文字通り、まだ『命の時限』ではなかったというだけだろう。
この『命の時限』は誰にも解らない。
三秒後かもしれないし、八十年後かもしれない。
いや、もしかしたら次の瞬間にも、心臓が動きを止めるかもしれないのだ。
そう頭では理解していても、私の身体は動かない。
恐怖に駆られるも、焦りが身を焦がそうと。
毎日やると決めた筋トレや書くと決めた日記。
毎年初めに決める今年一年の目標。
全て三日坊主だ。
しかし、私には揺るがない信念が一つある。
『死にたくないとは思うけれど、
いつ死んだしても後悔はしない』
その信念に基づき、私は、今日も一日、懸命に命を浪費して生きている。
*
命の時限爆弾 東風和人(こちかずと) @kochi_kazuto
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